NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、阿部サダヲ演じる田畑政治が、いよいよ東京オリンピック招致へとラストスパートをかけていく。10月27日に放送される第40回は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という副題どおり、戦後からのオリンピックヒストリーが一気に語られるパワフルな回となりそうだ。
1964年の東京オリンピックの招致活動が大詰めを迎えていた田畑政治(阿部サダヲ)が、東京都庁にNHK解説委員の平沢和重(星野源)を招き、来たるIOC総会での最終スピーチを引き受けてもらえるように頼みこむ。断る平沢に田畑は、これまで自分が経験してきた「オリンピック噺」を語っていく。いよいよ天才・古橋廣之進(北島康介)が登場する回となる。
第40回の放送を前に、主演を務める田畑政治役の阿部サダヲと金栗四三役の中村勘九郎にインタビューし、本作の魅力や第40回の見どころを聞いた。
――残すところ2カ月を切りましたが、あらためて宮藤官九郎さんの脚本の感想から聞かせてください。
阿部:毎回すごい! ものすごく詰まっている脚本です。それなのに、宮藤さんは、書き終わったあと、「まだネタがある。まだ、書き足りない」と言っているんです。すごいですよね。いくらでも入れられるんでしょうね。たぶん1本で2回分くらいの内容が入っています。カットしている分も多いですから。
中村:確かに、あのシーンやったのに! と思うことが多いですね(苦笑)。
阿部:また、最初は笑える作品だと思っていましたが、けっこう泣けるシーンが出てきます。『いだてん』は、スポーツに関する話ですが、宮藤さんってそんなにスポーツを観ている人だと思っていなかったのに、アスリートを応援する気持ちになりました。
僕自身も観ていて泣いちゃう回があり、そこは驚きました。人見絹枝さんの回は特に感動しました。でも、後半がスタートしたのが25回で、その次の回に“人見絹枝物語”が始まったので、「あれ? 僕、主役じゃないんだ!?」という裏切りも感じたりして(苦笑)。
――宮藤さんも学生時代にスポーツなどをされていたのでしょうか。
阿部:学生時代にバスケ部のキャプテンをやっていたみたいです。意外ですよね。レギュラーじゃなかったけど、キャプテンだったみたいです(笑)。
――勘九郎さんはいかがですか?
中村:僕もそうです。宮藤さんの脚本は毎回、面白いし、泣けるシーンや感動するシーンがあります。また、優しいシーンが多いですね。悲劇的なシーンや、感動的なシーンもそうですが、最後にふっとそれを和らげてくれる笑いが来るんです。ずっと泣いていると疲れちゃうなと思っていると、そういうシーンが用意されています。
たとえば、38回で嘉納治五郎先生の追悼会を田畑さんたち4人だけでやった時、田畑さんがすごくかっこいいんですが、最後に野口さん(永山絢斗)が、ふと笑えるひと言をしゃべったりします。そういうふうに、感情をいろんな方向に揺さぶってくれます。演じていても楽しいし、できあがりを観ても、毎回楽しいなと思います。
――『いだてん』に出演してみて、オリンピックというものについて、どんなことを思いましたか?
阿部:田畑さんは、「オリンピックは2週間かけてやる盛大な運動会だ。お祭りだ」と言うんですが、僕もそれでいいなという気がしています。「世界中の人が集まってくる運動会」ってすごくいい言葉だし、楽しくやれればそれでいいなあと。オリンピックの閉会式で、各国の選手がぐちゃぐちゃになって行進したのは、前回の東京オリンピックの時から始まったらしいのですが、いろんな国の選手たちが、和気あいあいとしながら写真などを撮り合っていて、すごくいい光景だなと思いました。それを見て文句を言う人はいないですよね。
――最初はメダル至上主義だった田畑さんも、だんだん変わっていきましたね。
阿部:あれだけ「メダルを獲れ!」と言っていた田畑さんですが、最終的には「予選で落ちる選手たちも、一生の思い出になるような大会にしたい」と言うようになっていく。そこはすばらしいし、成長したなと思ってうれしかったです。
中村:金栗さんは選手の立場なので、田畑さんのセリフじゃないけど、「マラソンで勝ちたい。水泳で勝ちたい。それしかないじゃんね」という感じでしょう。金栗さんにとってはストックホルムを棄権したという苦い思い出や、その後、リベンジしようとしていたベルリンオリンピックがなくなり、アントワープでは19位と、オリンピックでは勝てなかったんです。でも、三島さん(生田斗真)と最初に歩いた光景や、アントワープでは、選手団が増えたりして、僕は演じていてすごく楽しかったです。
――本日放送される第40回の見どころを教えてください。
阿部:台本を読んだ時、この回は、どうやって編集するんだろうなと思いました。台本はすごく面白いけど、ほとんどシチュエーションが変わらないんです。星野源くんが演じている平沢さんは、東京オリンピックが決まる時にスピーチした方ですが、彼を説得するシーンを2日くらいかけて撮っていたので。
おそらく今までの『いだてん』とはまた違う見方ができる回になると思います。僕もいきなり、落語みたいなことをやったりするので。都庁室を舞台に、回想と語りでほぼ終わるんじゃないかなと。戦後から1963年までを1話で語りますが、どういう編集をされているのか、僕もすごく楽しみです。
――北島康介さんも登場されますね。
阿部:北島さん、カエルを食べたりしているんです。
中村:そうそう。あのシーンを見ましたが、本物でしたね。
――カエルは本物なのですか!?
阿部:本物のカエルでした。監督が北島さんに「誰よりも一番食べてください」と言ってましたが、北島さんが「飲みこめねーっ」と言っていました(笑)。
中村:第39回で宮藤さんが戦争を描きました。あの回は内容もすごくて、僕たちは主役ですが、1、2シーンしか出てなかったです。うちの弟(中村七之助)はいっぱい出てますが。そこから続く40回がまたすごいです。今までもすごいエンジンを積んでましたが、40回から47回まで、ニトロのエンジンで、アクセル全開みたいな感じで突っ走ります!
1970年4月23日生まれ、千葉県出身の俳優、歌手。大人計画所属。大人計画の俳優らとバンド「グループ魂」を結成し、ボーカルの「破壊」としても活動。2007年、『舞妓Haaaan!!!』で映画初主演し、第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2010年のNHKドラマ『離婚同居』で連続ドラマ初主演。映画の近作は『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(18)
■中村勘九郎(なかむら・かんくろう)
1981年10月31日生まれ、東京都出身の歌舞伎俳優。屋号は中村屋。歌舞伎名跡「中村勘九郎」の当代。2012、年新橋演舞場『土蜘』僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎の舞台公演以外にも映画、テレビ、現代劇などでも活躍。映画の近作は『銀魂』(17)や『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)
(C)NHK