2019年9月18日、TOHOシネマズ新宿にてサンライズフェスティバル2019風月「ドリフェス! / ドリフェス!R 応援上映」が開催された。“5次元(=2次元+3次元)アイドル応援プロジェクト”の一環として放映されたTVアニメ『ドリフェス!』シリーズ。この上映会では、アニメ制作陣をゲストに迎えてのトークと、ファンからの投票で選ばれた話数の応援上映が行われた。その模様をお届けする。

  • 「ドリフェス! / ドリフェス!R 応援上映」

アニメに白石稔役として出演したMCの白石稔がゲストを呼び込むと、監督・村野佑太氏、シリーズ構成/脚本・加藤陽一氏、プロデューサー・峯岸功氏の3名が、DearDream&KUROFUNEのぬいぐるみクッション(=ぬい)とともに登場。それぞれぬいを抱いて両腕はいっぱいの状態で、白石が「マイク、持てますか?(笑)」と心配する場面もあり、和やかにスタートした。

応援上映の開催にあたり、ファンから上映してほしい話数の投票を受け付けていた今回。受付初日から担当スタッフの想像を超える投票とコメントが届いたそうで、根強い人気と愛が感じられる。どの話数にも魅力的なエピソードがたっぷり詰まっているため、制作側でもその投票結果はまったく予想できなかったそうだが、スクリーンに結果が表示されると、一同納得の表情を浮かべた。

この上映会のためにアニメと脚本を見直してきたという加藤は、「昨日アニメを見直して、やっぱりこの話数は『いいな』と思っちゃって」と話す。村野は、上映を客観的に見るためにあえてアニメはチェックしなかったそうだが、ここで「たまたま3年前の2016年9月18日がアニメ第1話を納品した日だった」ととっておきのエピソードを披露。アニメ『ドリフェス!』3歳のお誕生日ということで、客席からも「おめでとう!」の声と優しい拍手が贈られた。

1話ずつの振り返りは放映順に行われ、まずは『ドリフェス!』第7話「KUROFUNE襲来!!」から。

第6話までは、――普通の高校生活を送っていたある日、レジェンドアイドル・三神遙人にスカウトされてD-Fourプロダクションのルーキークラスに所属することになった天宮奏。同じくルーキークラスの及川慎、佐々木純哉、片桐いつき、沢村千弦と、仲間のスキャンダルや確執を乗り越えながらレッスンとアイドル活動に励んでいた。トップのCDデビューが確約された事務所イベント「ドリームフェスティバル!」(=ドリフェス!)に出場するためには必ず誰かとユニットを組む必要があるため、奏は社長の提案で慎、純哉とともに「トラフィックシグナル」を結成。その活動が軌道に乗り、ドリフェス!の前哨戦とも言われる「バトルライブ」優勝候補として注目され始める。

という具合に、のちに「DearDream」となる5人を中心に描かれてきた。

第7話はそのタイトル通り、「KUROFUNE」が襲来する話数。それまでライブハウスで歌っていた黒石勇人が、ドリフェス!の存在を知って「デビューすればもっと大きなステージで歌える」と一人で事務所へ乗り込んでくる。しかし、ドリフェス!には単独出場できないため、ソロのミュージシャンではなくアイドルユニットとして活動をするよう諭された勇人は相方を探すことに。顔が綺麗というだけで不良たちに暴行されていた風間圭吾を見かけて助け、「お前、綺麗な顔してんじゃねえか」と一言。

そして一緒に活動しないかと声をかける。過去に子役として活動し、仲の良かった慎とある出来事をきっかけに絶縁状態になっていた圭吾は、事務所がD-Fourプロダクションと聞きくすぶっていたが、勇人の言葉に「お前と一緒にもう一度やってみる」と決意。そうして二人は「KUROFUNE」を結成し、「襲来だ! KUROFUNEに乗りに来い!」(勇人)、「ご機嫌いかがかな? プリンセス」「貴方のためなら即位する」(圭吾)とバトルライブに登場、優勝をかっさらっていくのだ。

そんな第7話について、「それまでと違う色にしようということで作ったんです」と加藤。監督が制作に加わった段階では、すでに第6話までの構成がある程度決まっていたそうで、村野は「(これまでの流れを)一回全部ぶっ壊したかったんですよ(笑)。やりたいことをやりたいなと思ったのが7話です。なので多分、急に「これ『ドリフェス!』か?」っていう流れになったと思うんですけど」と語り出す。

主人公の奏が「すごくふわっとした光をまとっている」のに対し、勇人はその"対の存在"、「ギラッとしていて、強い光で圭吾を救い出すようなキャラクター」にしたかったという。オープニングのカットや音楽室で歌っている勇人が強い光を背負っているのもそのためで、音楽室のシーンについては、撮影監督に「光の中で天使が歌っているみたいにしてください」とオーダーして「天使!?」と大笑いされたそう

加藤からは「(この回は)パワーワードと言われるものが多いですよね。しかも、踊りもインパクトありましたから」と、バトルライブでのライブシーンにも言及。制作中、村野が「流れがつながらないから僕は踊らせたくないです」と話すと峯岸から「じゃあ……立ちっぱはどうですか?」と提案されたそうで、「『とりあえず立たせましょう』っていうところから、巡り巡って『ドリフェス!R』の2話と3話ができました(笑)」(村野)と振り返った。

続いて、投票第1位となった『ドリフェス!』第10話「夢の旅へ 純哉の決意」。

――DearDreamとしての活動をスタートさせた5人。自分たちなりのやり方で全国行脚の締めくくりとなるライブを成功させ、次に目指すはドリフェス!優勝。そんな中で純哉に、世界的エンターテイナー、イーサン・マッカーディがニューヨークで行う1年間のスペシャルレッスンに参加できるという大チャンスが訪れる。憧れている三神遙人も参加した経験があるレッスンで、純哉は「ニューヨークに行く」と宣言。しかし、純哉が渡米すればDearDreamとしてドリフェス!に出場できなくなってしまうため、奏の心は大きく揺らぎ……。 というのが第10話の始まりだ。

まずは、ある日のレッスン帰り、奏と純哉を取り巻く重たい空気に耐えかねた千弦がしりとりをしようとするシーンについて。千弦がいきなり「ニューヨーク!」と口走ってしまい、そこからクッキー(いつき)→イーサン・マッカーディ(純哉)→DearDream(奏)とつながっていくのだが、実はこのしりとり、シナリオの初期段階では……。

いつき「『クリームあんみつ』。『つ』ですよ純哉君」
純哉「『つ』、つかこれなんなの?」
千弦「『の』だよ、かなちゃん!」
慎「そこ続けるのか」
奏「『の』……ノーサンキュー、かな」

という流れになっていたという。しかし、「僕はイーサン・マッカーディ→DearDreamにしたいってずっと言ってたんですけど、加藤さんに『純哉があえてみんなの前でイーサン・マッカーディって言うのはひどくないか』って言われて。それはもっともで、そこに考えがいく加藤さんはすごくお優しいなと思いました。でも、『いや、言わせたらええねん』と思って(笑)」(村野)と、純哉にイーサン・マッカーディと言わせる流れになった。

ちなみに、イーサン・マッカーディというのは「DearDream」でしりとりを成立させるためだけにこの名前になったそうで、「最初はジャスティン・マーティンでした」(加藤)とのこと。

そのしりとりのあと、一人別のルートで帰ろうとした奏を慎が引き止め、公園で「二人が向き合って立ち、目の前の相手を自分だと思って自分へのダメ出しをする」というシーン。演じているキャストも、5人でのレッスンで実際にこのダメ出しを行っていたそうで、それを作品に取り入れてできたシーンだ。加藤は「本人たちから聞いてお話に取り入れようってことになったので、彼らと出会っていなければできなかった話。みんなに出会って変わったのは僕らも一緒です」と、ファンには嬉しいコメント。

峯岸の「10話はシナリオにものすごい時間がかかっていますもんね」という一言から、第10話のシナリオ決定稿は4稿改3、準備稿も含めるとかなりの長考を経て完成したエピソードということで、「それぐらいちゃんとキメなきゃなと思ってたんですよね」(加藤)と、当時の苦労が明かされた。白石も「あのシーンは、演技がどうとかっていうのを全部超えて、一瞬で心が掴まれるような気持ちになりました。1位というのも納得かなと」と、役者目線での感想を話してくれた。