米労働省が2019年10月4日に発表した9月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数13.6万人増、(2)失業率3.5%、(3)平均時給28.09ドル(前月比±0.0%、前年比2.9%増)という内容であった。

(1) 9月の米非農業部門雇用者数は前月比13.6万人増となり、増加幅は市場予想の14.5万人を下回った。業種別では小売業が8カ月連続で減少(1.1万人減)、貿易摩擦の影響が懸念された製造業は0.2万人減少した。ただ、7月および8月分の雇用者数は合計で4.5万人上方修正された。その結果3カ月平均の増加幅は15.7万人となり、前月の17.1万人からはやや鈍化したが、雇用環境改善の目安とされる15万人は堅持した。

(2) 9月の米失業率は3.5%となり、横ばい(3.7%)を見込んでいた市場予想に反して1969年12月以来の水準に低下した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が63.2%に高止まりする中での失業率の改善となった。また、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた、広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も6.9%へ0.3ポイント低下して2000年12月以来の水準に改善した。

(3) 9月の米平均時給は28.09ドルとなり、前月から0.01ドル=1セント低下。伸び率は前月比±0.0%、前年比+2.9%と、いずれも市場予想(+0.2%、+3.2%)を下回った。前年比の伸び率は14カ月ぶりに3%台を割り込んで鈍化した。

米9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が過去2カ月分の上方修正を加味すると概ね予想通りであった一方、失業率は予想外の改善を見せており、米労働市場が引き続き健全であることが確認できる内容であった。

他方、平均時給の伸びが鈍化したことは、インフレ圧力が依然として弱いことを物語っており、米連邦準備制度理事会(FRB)の「予防的利下げ」を正当化する内容でもあった。このため、4日のNY市場では、米国株は上昇したものの米長期金利(10年債利回り)が小幅に低下しており、ドル/円はほぼ横ばいで取り引きを終えた。

米9月雇用統計は、早期の米景気後退に対する市場の懸念を和らげたと見られるが、「ISMショック」で広がった米景気の先行き不安を払拭するには至らなかったようだ。