東京2020組織委員会は24日、東京2020大会の選手村に導入するベッドなど寝具一式について発表した。ベッドフレームは耐久性の高い段ボール製で、マットレスはプラスチックにリサイクルできるポリエチレン製、掛け布団には人工羽毛を使用している。関係者は「世界一、環境に優しい寝具を実現した」とアピールした。
史上初めて? 段ボールのベッド
東京・晴海のオリンピック村には、世界各国から来日した選手団約1万8,000人が滞在すると見込まれている。そこで用意されたのはエアウィーヴ製の1万8,000もの寝具(ベッドフレーム、マットレス、掛け布団、ピロ―、その他)。東京2020組織委員会の北島隆氏は「これまで組織委員会では、東京大会を『持続可能な社会の実現に資する大会』にすると宣言してきた。そこで、ベッドの開発に際しても配慮をお願いした」と経緯を明かす。
なお直近の平昌大会(2018年)、リオ大会(2016年)では、木製の一般的な家庭用ベッドが用意されている。選手村のベッドフレームに段ボールが使われることについて「過去の大会をすべて調べたわけではないが、初めてとの認識」(北島氏)とのことだ。
眠りが翌日のパフォーマンスを決める
エアウィーヴの高岡本州氏がベッドの機能性について説明した。ベッドフレームのサイズは幅90×長さ210×高さ40cmで、高身長の選手用に20cmのエクステンションパーツを用意。耐荷重は約200kgとしている。ベッドの下にはスーツケースが2つ入るスペースがもうけられた。
マットレスは肩、腰、脚の三分割構造で、選手の体型に合わせて硬さがカスタマイズできるようになっている。これにより例えば、体型がスマートな陸上選手、腰に重さがある柔道選手、肩幅が広い水泳選手など、それぞれの選手が理想的な寝姿勢を手に入れられる。高岡氏は「身体の沈み込みを調整すると脊髄のラインが真っ直ぐになり、睡眠中に身体に負担をかけません」とアピールした。
掛け布団は消臭加工と優れた吸湿性が特長。人工羽毛を使ったことでアレルギー体質の選手でも使用できるほか、洗濯も可能で、それでいて体温保持性も高いとしている。高岡氏は「最高の寝具環境で選手たちをお迎えできれば」と意気込んだ。
パラリンピアンにもオススメ
記者団からの質問に北島氏、高岡氏が回答した。
東京大会後にリサイクルせず、そのままベッドとして再利用することはあるのか、という問いかけに北島氏は「現時点で明確に決まったことはない。けれど、その可能性も模索している。良い形で再利用できれば」と回答。デザインについては、組織委員会のデザインを統括している部署が決め、色合いなどをエアウィーヴと相談したという。
段ボール製にしたメリットについて、北島氏は「組み立てるタイプで、コンパクトなため搬出・搬入のときにエレベーターに何台も運び込める。また、選手たちが部屋のレイアウトを変更したいときにも動かしやすい。紙製なのでけがもしにくい」と説明した。
体型に沿ったマットレスを使ってもらうため、選手には「過去のデータベースを参照して、どの体型の選手にはどの硬さがマッチするか、提示していきたい」(高岡氏)とのこと。
また、今回のベッドを市販する計画について高岡氏は「五輪のために開発したもので、まったく同じものを市販する考えはありません。でもタイミングをみて、同じコンセプトのものを開発する考えはあります」と回答。今の商品ラインから考えて、20万円前後になるとしている。
オリンピック選手とパラリンピック選手のベッドの違いについては「パラリンピアンは、オリンピアンと筋肉の付き方が違う。このマットレスの特性がさらに活きてきます」(高岡氏)と説明した。