東京2020組織委員会はこのほど、東京2020 NIPPONフェスティバル「共生社会の実現に向けて」に関する発表会を開催した。「ONE - Our New Episode -」という同プログラムのタイトルが、クリエイティブディレクターを務める小橋賢児氏より発表された。

東京2020大会に向けて全国で繰り広げられる文化の祭典となる東京2020 NIPPONフェスティバル。同プログラムはその主催4事業のうちのひとつで、あらゆる国の人が集う本大会に先駆け、障害者、LGBT、国籍、あらゆる境界を越えた様々な人と文化が交流する場を目指す。

  • 文化プログラム「ONE - Our New Episode -」が行われる

    文化プログラム「ONE - Our New Episode -」が行われる

「オリンピックにはいろんな価値観があっていい」

冒頭、小橋氏は「共生社会やダイバーシティ & インクルージョンは簡単なことではない。日本の“和”は調和の和だが、同調圧力の中で本来の自分自身のアイデンティティが分からず、他人を認めることが難しい社会になっているように思う」と語った。プログラムについて「多様な人が集うこの機会に、知らなかったことを知るプロセスから自分を知り、個性が混じり合うことで本来の自分、他人を認められる社会のきっかけ作りをしたい」と意気込みを述べた。

プログラムの実施場所や時期は、パラリンピック直前期の2020年8月に渋谷区での実施が想定されている。ダイバーシティを推進し、未来を担う若者や外国人など多様な人々が交差する渋谷区で、新しい世界を目の当たりにできるような文化プログラムを行う予定だ。

  • クリエイティブディレクターを務める小橋賢児氏

    クリエイティブディレクターを務める小橋賢児氏

“ONE”というシンプルなタイトルには、色々な人たちと一緒に作り上げていきたいという思いが込められており、アーティストだけでなく多くの一般の人たちも気軽に参加できる仕組みを進めているという。

そこでコンセプトに掲げたのが“Human Orchestra(ヒューマンオーケストラ)”。一人ひとりの個性を活かしながら、交わることのなかった人々が交わることでひとつのハーモニーを作り、そこから新しい物語を作っていこうという思いをタイトルに込めた。小橋氏は「いろんな個性を持った人が集まり、今までにない新しいハーモニーを奏でるオーケストラを作っていきたい」とアピールした。

即興パフォーマンスも

発表会ではプログラム参画メンバーが紹介され、アーティストメンバーによる即興パフォーマンスが披露される一幕もあった。

  • アーティストメンバーによる即興パフォーマンス

    アーティストメンバーによる即興パフォーマンス

ドラァグクイーンでアーティストのヴィヴィアン佐藤氏は、自身の活動について「建てない建築家とか町おこしとか説明が難しいんですが。東京も地方があっての東京ですから。中央と地方といった区別もなくてもいいと思って、そうした活動をしています」とコメント。

  • ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏

    ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏

また、主催しているヘッドドレスワークショップについて、「毎年ハロウィンで渋谷が大変なことになって、違う自分に変身するみたいなことを楽しんでいますが、着飾るというのはそうじゃないんです。着飾ることは本来の自分を取り戻す行為で、隠されていた自分を見つめ直すようなワークショップをできたらいいなと思ってやっています」と紹介。「オリンピックにはいろんな価値観、人それぞれの金・銀・銅があっていいと思うんですね。例えば敗者の歴史とか、そういった気づきにくい一面を(今回のプログラムで)出していければ」と語った。

  • ヴィヴィアン佐藤氏が制作したヘッドドレスを身に付けた子どもたち

    ヴィヴィアン佐藤氏が制作したヘッドドレスを身に付けた子どもたち

神奈川でプレイベントを開催

プレイベント「ONE - Our New Episode - in KANAGAWA」の開催も発表された。神奈川県国際文化観光局副局長・宮坂久美子氏は3年前、障害者支援施設の津久井やまゆり園で起きた殺傷事件を踏まえ、県として共生社会に向けた様々な取り組みを行ってきた背景を説明。「神奈川県が先陣を切ってプレイベントを実施させていただくことに、大きな責任を感じていると共に大変嬉しく思っています。多くの方々に参加していただけるイベントにし、機運を盛り上げていきたい」と述べた。

  • 神奈川県国際文化観光局副局長の宮坂久美子氏

    神奈川県国際文化観光局副局長の宮坂久美子氏

10月6日に開催されるプレイベントでは、障害のある人たちとの共生を考える楽しい体験型コンテンツを展開する予定だ。