20年近く、家計のやりくりの取材をさせていただく中で、多くの貯まる人、貯まらない人のお話を聞いてきました。これまでにも、何度もご紹介してきましたが、貯まる人・貯まらない人には、それぞれ特徴があります。やっていること=行動も共通していますが、考え方や発想、マインドも驚くほど似ています。

今回は、貯まらない人の発想を取り上げます。なかなかお金が貯まらない人つまり“貯め下手さん”とお話していると、「えっ?」とその発想に驚くことがしばしば。意表をつくような考え方をするのです。「なるほど。だから貯まらないんだね」という発想なのです。貯まらない人のNGな発想をいくつか紹介していきましょう。

  • 貯まる人・貯まらない人には、それぞれ特徴があります

NG発想(1)クレジットカードの限度額を上げる

貯め下手さんはクレジットカードを利用するのが好きな人が多いものです。そして、ついつい使い過ぎて、利用限度額オーバーということに。限度額を超えるとカードが使えなくなりあす。そのため普通なら、「今月、ちょっと使いすぎかな?」と思ったら、利用可能残額をネットで確認して、使い方をセーブするなどの対処法が考えられます。

ところが、貯め下手さんは違います。利用限度額を上げることを考えるのです。でも、利用限度額を増額するには審査があります。その人の支払能力や信用度合いを審査するのですが、たびたび利用限度額オーバーしていると信用情報がイマイチで増額が難しい。普通なら、これまで何度も限度額オーバーしてきた自分の行ないを反省して、増額できないことに納得するものですが、貯め下手さんはそんなことではあきらめず、クレジットカード会社を変更してしまうことも。クレジットカード会社間では、利用者の信用情報を共有しているので、会社を変えたからといって、そうそう限度額が上がるとは思えないのですが、クレジットカードで公共料金や家賃の引き落としなど特典になることをして、限度額の増額を達成します。

その結果、クレジットカードをさらに利用するということになります。

NG発想(2)残高不足を自動融資で解決する

カードの利用限度額を上げても、給料は急には上がりません。カードの利用が頻繁になれば、支払い額が多くなって、引き落としの際に残高不足ということになります。

こういうときでも、貯め下手さんは、思わぬ手に出ます。銀行の「自動融資」というサービスを利用するのです。

これは、残高不足でクレジットカード払いの口座引き落としができないときに、不足分が銀行から自動的に融資されるというもの。「融資」というと聞こえがいいですが、要するに「借金」です。借金ですから、当然、利子が発生します。それも高金利です。

これでクレジットカードの利用限度額は増額できましたし、口座が残高不足になっても困らない……ですが、これではお金は貯まりません。これだけのことを調べて、手続きする努力を、「クレジットカードを使い過ぎないようにする」ということにまわしたら、貯まるのに……と思うのですが。

NG発想(3)「なんでも100円はお得」だと思っている

100円ショップはとても便利ですが、「なんでも100円」ということが「コスパがいい」ことにはつながりません。

100円でお買い得のものも確かにありますが、500mlのペット飲料は、安いスーパーではそれ以下の値段で売っています。ボールペンやノートなどもディスカウントショップでは100円以下で手に入ることも。

貯め下手さんは100円=安いと思い、「お得」と飛びつく人が多いようです。

NG発想(4)先取り貯金を多めにして、結果赤字になる

貯め下手さんは、「貯めなくちゃ」のスイッチが入ると、一気に加速します。たとえば、突然先取り貯金を始めます。もちろんそれはいいことなのですが、ムリな金額を貯金するので、途中でお金が足りなくなります。

もともとやりくりが苦手なのですから、最初はムリのない金額から先取りすればいいのですが、そこが貯め下手さんのNGなところ。早く貯めるために、突然多めに先取り貯金します。結局、途中で足りなくなり、先取りした貯金を下ろすという、元も子もない結果になってしまうのです。

NG発想(5)「どうすればお金が貯まるの?」と人に聞く

貯め下手さんといえども、なかなか貯まらないからこそ「貯めたい!」という気持ちが強いものです。そのため、人に「どうしたらお金が貯まるの?」と聞きます。「どうしたら」もなにも、貯金すればよく、要はそれが実行できるか否かの問題。実行するのは自分なので、人に聞いても仕方ありません。

また、前述しましたが、貯めようと思い立つと、一刻も早く貯めたくなるのが、貯め下手さんの共通点。今までサボっていた分を取り返したと思うのかもしれません。「コツコツ積立貯金なんかしていられないから、何かいい投資はないか?」……というのも貯め下手さんの発想です。そんなおいしい投資話は、残念ながらありません。

貯め下手さんの頑張り方は少しズレており、「考えることがそこじゃないんだけどな」という発想なのが共通点。でも、ちょっと軌道修正したら、貯まる人になる“伸びしろ”はあります。頑張っているのに、お金が貯まらないという人は、発想をちょっと見直してみてはいかがでしょうか?

村越克子

村越克子

フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。