オールシーズンタイヤで日本の夏を走る
まずはルートを押さえておくと、往路は国立府中インターチェンジ(IC)から中央自動車道に乗り、八王子ジャンクション(JCT)から圏央道、海老名JCTから東名高速、御殿場JCTから新東名、豊田JCTから伊勢湾岸道、四日市JCTから新名神、神戸JCTから山陽道を経由して岡山に向かう約630キロの行程だった。
8月10日午後、都内を出発。御殿場や新清水(ともに静岡県)、信楽町(滋賀県)~京都間で渋滞が発生していたため、岡山まではトータルで11時間を費やすことになってしまった。従来は長い渋滞が発生していた亀山(三重県)や吹田(大阪府)付近では、新しい路線が完成したため、渋滞が発生していなかったのでありがたかった。ただ、これまでとは違った場所で渋滞が発生していていることも認識した次第だ。
こうした渋滞発生ポイントに差し掛かると、BMWや日産自動車が最新モデルに搭載している「ハンズオフ」(手放し)の自動追従システムについて考えずにはいられなかった。こういった場面では同機能が大いに能力を発揮するはずだ。ドライバーは疲れ知らずで渋滞を抜けることができるだろう。
オールシーズンタイヤについて報告すると、高速走行中のベクターについては、従来のサマータイヤと比べても、乗り心地や直進性については全く変わらないといっていい。S124の速度記号はH規格(210km/h)なので、追越し車線にも躊躇なく侵入していけた。
偶然だが、岡山の実家は全英女子オープンゴルフで優勝を果たした渋野日向子選手の出身地の隣町にある。到着すると、地元はにわかに盛り上がっている真っ只中だった。
彼女が通った小学校(岡山市東区)の前にある駄菓子屋「坪井商店」では、店主の坪井広美おばあちゃん(85)に当時の思い出話を聞くことができた。「あんたで22社目(のマスコミ)じゃ」とのことで、取材に慣れた様子の坪井さんは弁舌も滑らか。楽しい時間を過ごさせていただいた。お土産の駄菓子(「タラタラしてんじゃねーよ」は残念ながら売り切れ)をしこたま買い込み、さらには目についた懐かしいブリキのおもちゃ「ポンポン船」(水とローソクの熱で作動する)まで購入(1,400円也)すると、「大人買いじゃなぁ」と突っ込まれてしまった。
このあたりの道路は道幅が狭い上、両サイドはガードレールのない用水路になっていて、なかなか難易度が高い。ただ、そこは車幅が狭く、かつステアリングの切れる旧車の利点で、お店の前まで簡単に到達することができた。
渋野選手がプロ入り前の練習コースとしていた長船カントリークラブでは、クラブハウスに「渋野日向子プロ 全英女子オープン優勝おめでとうございます」の大きな横断幕が掲げられており、30℃を超える気温にも関わらず、早朝から多くのプレーヤーで賑わっていた。コースの全景とS124の写真を撮影するため、吉井川河川敷にあるコース脇の砂利道をあちこち走ってみたが、深いV字型ブロックパターンを持つベクターが路面をガッチリとつかんでくれるので、安心してベストポイントを見つけることができた。
その後は備前焼の産地である県東部備前市の伊部地区を訪れたり、「カキオコ」(牡蠣がたっぷりと入ったお好み焼き)を食べるために日生町へと向かったりしたが、こうした一般道でも、ベクターの乗り心地には全く問題がなかった。荒れた路面を通過すると「ザーッ」というパターンノイズが侵入してくるが、これも通常のサマータイヤ並みといっていいレベルだ。
8月13日の復路は、往路と全く同じルートを使用した。途上では、深夜の御殿場付近で約30キロの断続渋滞があったものの大きなタイムロスはなく、9時間半で国立市内に到着した。3日間のトータル走行距離は1,494キロで、使用したハイオクガソリンは137.98L。燃費は単純計算で1Lあたり10.83キロという結果になった。
同じクルマで東京~岡山間を往復した過去のデータを見ると、ブリヂストンのプレミアムタイヤ「レグノ」を装着していた2016年夏は1Lあたり11.74キロ(ほぼ高速道路のみを走行)、ミシュランのエコタイヤ「エナジーセーバー」を履いた2017年春は同10.57キロ(今回と同じような動き)と記録してあった。これらの数値と比べても、オールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズ」の燃費性能に遜色はない。
会社の同僚であるカナダからの帰国子女に今回の原稿の話をすると、「日本では夏と冬でタイヤを変えるんですか?」と聞き返されたほど、北米では一般的なオールシーズンタイヤ。日本でも、その認知度は年々アップしてきている。
季節ごとの履き替えや保管場所の心配がないことで、オールシーズンタイヤを選ぶユーザーも増えてきた。現在、国内では、グッドイヤーだけでなく、ミシュランやピレリなどからも同じような性能を持つと思われるオールシーズンタイヤが発売されているので、好きなブランドを選ぶこともできる。
価格は、今回のサイズに限ってみれば1本1万1,000円~1万4,000円前後で手に入れることができる。オールシーズンだからといって、取り立てて高価というわけではない。本格的な雪道やアイスバーンを走ることの少ない西日本のユーザーはもちろん、東日本の太平洋側に住む方であれば、オールシーズンタイヤを選ぶメリットは大きいのではないだろうか。