9月1日より放送がスタートする「仮面ライダー」シリーズ最新作『仮面ライダーゼロワン』。今作をもって、主演をつとめるスーツアクターが、多くの平成仮面ライダーシリーズに出演した高岩成二から縄田雄哉へバトンタッチすることが11日、発表された。

高岩は平成仮面ライダー全20作品のうち18作で主演を演じ、名実ともに「ミスター平成仮面ライダー」と呼ばれるスーツアクター。高岩から縄田に主演の座が託され、縄田が令和初となる仮面ライダーゼロワンを演じる。

特撮ヒーローを演じるスーツアクターは、激しいバトルシーン、必殺技を放った後のキメポーズなどはもちろん、さまざまなキャラクターを動きだけで表現するなど、高度な演技力が求められる。現場では変身前の俳優たちの演技を見て自らのものにし、変身後の動きに巧みに取り入れるなど、まさに職人芸ともいえる役づくりで特撮シリーズを支えている。

その中で高岩は歴代18作品で主人公の仮面ライダーを担当。毎回変わるライダーの動きの特徴はもちろん、主人公の性格までも細かな動きで表現。ファンから絶大な信頼を得るとともに、仮面ライダーのスーツアクターとして確固たる地位を築き上げてきた。一方の縄田は、これまでドラマや映画、舞台など幅広い分野で活躍。「平成仮面ライダーシリーズ」では、『仮面ライダーエグゼイド』に登場する仮面ライダーゲンムのスーツアクターとして独特のポーズを生み出し人気を獲得。『仮面ライダージオウ』では、仮面ライダーゲイツとして1年間、高岩演じる仮面ライダージオウとともに戦ってきた。今回は、お二人のバトンタッチを記念したインタビューも公開。

高岩成二&縄田雄哉 バトンタッチインタビュー

――高岩さんは、この20年を振り返っての思いはどんなことでしょう。

高岩:僕はずっと「スーパー戦隊シリーズ」のレッドを担当していて、『仮面ライダーアギト』(2001~02年)からライダーに移ったのですが、実はずっとスーパー戦隊をやりたかったんです。だから、仮面ライダーをやる時は、渋々という感じでして(笑)。

縄田:えーっ!? そうだったんですか!

高岩:だから撮影に入った時もテンションが上がらなかったんですが(笑)、ある時、他の仮面ライダー役のスーツアクターと話しているときに突然プチッとスイッチが入って、絶対に『仮面ライダークウガ』(2000~01年/平成仮面ライダー第1作・主演スーツアクターは富永研司)を超えてやろう! 視聴率も上げてやる!と。そこから始まりました。『仮面ライダージオウ』(2018~19年)では20人のライダーがズラリと並ぶんですが、それを現場で見ていると、自分で言うのもなんですが圧巻ですよね。すごいなぁ、よくやってきたなぁ、と言うのが正直な思いです。ライダーを始めたきっかけはアレですけど(笑)。

――縄田さんはいよいよ『仮面ライダーゼロワン』が始まりますね。

縄田:僕は『仮面ライダーエグゼイド』(2016~17年)でゲンムをやらせていただいたのですが、半年間だったんですね。それで1年間やりたいと思っていたら、いきなりゲイツという2号ライダーに。なので、今回、『ゼロワン』主役のオファーを頂いた時は驚きしかなかったですね。これまでドラマや映画などいろいろな現場を経験してきましたが、いつかは主役をやりたいと思っていたので決まった時は単純にうれしかったです。でも、そのあとは不安が襲いかかってきましたね(笑)。今の自分のスキルで大丈夫だろうか、高岩さんの姿を見ていても表現の幅に差があると感じていたので。喜びと不安が入り混じった気持ちになりました。

――高岩さんがこの20年で印象に残っていることは?

高岩:最初のころ、アクションではなくお芝居の部分で監督からのダメ出しが多かったんです。「スーパー戦隊シリーズ」では若干誇張した芝居が表現の一つとしてありまして、それが染みついていたんですね。それを「ちょっとやめていただけませんか」とよく注意されて、どうしようと思っていた時にうちの社長(JAE金田治氏)が監督をやる回があったんです。その時も社長からいろいろ言われて、言い方は悪いですけどカチンときちゃって(笑)。「わかりました! もう動きません!」と思っちゃったんです(笑)。動かないと言っても、ただじーっとしているのではなく、感情を作って誇張せず自分の芝居をやったら「それ!」と言われて。動かない、というのもお芝居だなとそこで理解しましたね。それ以降、自分の感情や思いを先にやろう、そうすれば"マスクの表情"は後からついてくる、と思うようになりました。

縄田:高岩さんのアクションは黄金比だと思っているんです。アクションの斬った軌道とか、抜けた後のたたずまいとか、映像の画角におさまった姿が黄金比と言っていいぐらい見栄えがいいんです。アクションの美しさはもちろんですが、高岩さんの演技からは表情を感じるんです。マスクは能面のように表情がないはずなのに。僕も演じていて動ぎすぎてしまった、という時もありますし、芝居を動きでカバーしようとしてしまう時もある。そういう意味で今のお話を聞いていると、高岩さんはさすがだなと思いますね。

――高岩さんから見た縄田さんは?

高岩:アドバイスするところなどは正直まったくないですね。安心して見ていられる部分が多々あります。これまでスペシャルなどで過去の平成ライダーにお手伝いで後輩に入ってもらった時があるのですが、見ていると「ちょっと違うな」ということもありました。でも、縄田に関してはすごく絵になるんです。アクションも手足が長くてかっこいいですし、『ジオウ』で初めてバディとしてやらせてもらいましたが、やっぱり安定している。ドラマや映画、舞台と経験もあるので、東映の特撮は特殊な部分がありますが、そのあたりを吸収していけば安心して見ていられます。

縄田:いや、今のお話を聞いて、ちょっとニヤッとしちゃいました(笑)。そんな風に思ってくれていたんだと(笑)。

高岩:あまり俺も口に出さないからな(笑)。

――最後にお二人からひと言ずつお願いします。

高岩:自分の中では本当にすっきりしていて、やりきった感が強いですね。本当に20年は長い、イチローは引退するわ、気がつけば自分も50歳という節目ですし(笑)。いろいろな節目が来る中で、ひとつの区切りとして令和ライダーにバトンタッチできるのはすごく嬉しいですね。とはいえ、僕も『ゼロワン』に関わりますので、これまでは僕が支えられてきた恩返しに、今度は僕が支える側で主役を押し上げられれば、と思っています。

縄田:現在公開中の映画のワンシーンで、ジオウが平成ライダーみんなの思いを語る熱いシーンがあるんです。そこを高岩さんがお一人で芝居をされていたのですが、それを見ていた時におそらくその場にいた人全員が感じていたと思うのですが、本当に痺れましたね。すごく感動して、その後の芝居も変わったと思えるほどの影響を受けていたのがわかったんです。僕もそんな高岩さんのように周囲に影響を与えるような芝居を作っていきたいと思っています。

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