メルセデス・ベンツのマルチパーパス(多目的)コンパクト「Bクラス」が7年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目へと進化した。少し地味なイメージだった従来のモデルから、スポーティーでスタイリッシュなデザインに変身を遂げた新型Bクラスは、高級トールワゴンとしての存在感を示すことができるのか。試乗して考えた。

  • メルセデス・ベンツの新型「Bクラス」

    メルセデス・ベンツの新型「Bクラス」に試乗。画像はガソリンエンジンを搭載する「B180」のAMGライン装着車だ

若返りに成功した新型「Bクラス」

まず、Bクラスのポジションを確認しておきたい。このクルマは、2018年10月にフルモデルチェンジしたコンパクトハッチバック「Aクラス」とプラットフォームやエンジンなどの基本を共有するコンパクトなトールワゴンだ。

Bクラスのボディサイズは、全長4,419mm、全幅1,796mm、全高1,562mm、ホイールベース2,729mm(※欧州値)。Aクラスとは全長と全幅、ホイールベースが全く同じだが、全高はBクラスの方が122mm高い(※欧州値での比較)。

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    プラットフォームを共有する「Aクラス」よりも全高が122mm高い新型「Bクラス」

スタイルも、Aクラスのイメージを受け継ぐスポーティーなものに進化した。実は、歴代Bクラスの課題の1つが、このスタイルであった。背の高いトールワゴンだということもあり、ちょっとファミリーカー感が強く、野暮ったかったのだ。ところが新型Bクラスは、重心を低く見せるデザインを取り入れただけでなく、先代より全高も低く抑えることで、見事に若返りを果たしている。

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    低重心でスタイリッシュなデザインを手に入れた新型「Bクラス」。見た目が洗練されたことはこのクルマにとって非常に重要なポイントだ

インテリアもAクラスに似ているが、ダッシュボードのデザインはBクラス専用品だ。ただ、ダッシュボード上のレイアウトは基本的に同じで、助手席側のデザインが少し異なる程度となる。全高が高まり、着座位置がやや高くなるので、運転席の視認性はAクラスよりも良好だ。

Aクラスでもゆとりを感じた居住性は、Bクラスでさらに向上している。Aクラスよりも頭上にスペースがあるので、より広々としていて快適だ。もちろん、先代Bクラスよりも、ゆとりは増している。

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    頭上が広々としている新型「Bクラス」の室内

対話型インフォテインメントシステム「MBUX」(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)を標準搭載する点もAクラスと同様。同システムには自然対話式音声認識機能、ステアリングスイッチ、タッチスクリーン、タッチパッドなど多彩な操作方法が備わる。音声操作はエアコンやオーディオ、ナビゲーションなどの快適装備を、特定のコマンドではなく、会話調で操作できる点が大きな特徴といえる。「ハイ! メルセデス」と発話すれば起動するので、完全なハンズフリー操作が可能だ。MBUXは通信機能を備えているので、目的地の気象情報なども教えてくれる。

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    「ハイ! メルセデス」でおなじみの「MBUX」を搭載

ワゴンといえば、気になるのがラゲッジスペースの容量だ。Bクラスは455L~1,540Lを確保しているので、370L~1,210LのAクラスよりも多くの荷物を積み込める。テールゲートは全車で電動式となっている上、フットセンサーが付いているので、ハンズフリーで開けることが可能だ。

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  • メルセデス・ベンツの新型「Bクラス」
  • 新型「Bクラス」の荷室容量は455L~1,540L。フットセンサーが付いているので、車体の下に足を差し込むと電動テールゲートが自動で開く

Bクラスはガソリン車とクリーンディーゼル車からパワートレインを選べる。ガソリン車の「B180」は、1.33Lの4気筒ターボエンジンに7速DCTを組み合わせる。最高出力は136ps/5,500rpm、最大トルクは200Nm/1,460~4,000rpmだ。2019年秋に上陸予定のクリーンディーゼル車「B200d」は、2.0Lの4気筒ターボエンジンに8速DCTの組み合わせとなる。最高出力は150ps/3,400~4,400rpm、最大トルクは320Nm/1,400~3,200rpmを発揮。エンジンとトランスミッションのラインアップはAクラスと同じだ。

キャラに合うのはディーゼル? 「Bクラス」試乗レポート

試乗したのはガソリン車のB180。Aクラスそっくりの見た目だが、運転席に収まってみると少し印象が違った。着座位置が高くなり、ガラスエリアも広がっているので、トールワゴンであることをはっきりと感じたのだ。

メルセデス・ベンツがAクラスから採用を始めた最新のプラットフォームを共有しているので、Bクラスの静粛性は高く、乗り心地もいい。ただ、トールワゴンというキャラクターと多少の重量増もあるためか、Aクラス譲りのガソリン車のパワートレインとは多少、ミスマッチなところもあった。

街中の走行ではあまり気にならないが、排気量が小さいエンジンであるため、加速や登坂時など、エンジン回転数が高めになるシーンもある。その際も、パワー不足とまでは感じなかったが、トランスミッションのノイズや変速タイミングが気になることがあった。若々しく元気いっぱいなAクラスのキャラであれば、この軽快なパワートレインの味付けも許容できるが、ファミリーカー色が強まり、やや落ち着きある走りを見せるBクラスであれば、パワーとトルクでゆとりのあるクリーンディーゼルエンジンを積むB200dの方がベターかもしれない。

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    「Aクラス」よりもファミリーカー色の強い新型「Bクラス」にはディーゼルターボエンジンが合うかもしれない

グレード構成と価格を見ると、「B180」は384万円(消費税8%込)、B200dは422万円(消費税10%込)という設定になっている。B180に先進安全運転支援機能のパッケージ「レーダーセーフティパッケージ」(24万5,000円、消費税8%)とナビ機能「ナビゲーションパッケージ」(18万4,000円、消費税8%)を加えると、400万円越えの426万9,000円となる。なかなかのお値段だが、Aクラスとの価格差を考えると、装備内容が近い「A180スタイル」との差は15万円なので、メルセデス・ベンツとしては、そう高くない価格設定ともいえる。

Bクラスは小回りが利くサイズであるとはいえ、一般的な立体駐車場の高さ制限である1,550mmを超える全高を持つため、日本の都市部では積極的に選びづらい印象だ。日本には、車格は異なるが、コンパクトなトールワゴンとしてトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」がある。これらはセミ・ミニバン化しており、広くはないが6人~7人で乗ることができるなど、小さいながら多目的性が高い。Bクラスにも、そういう小さなトールワゴンが押さえている特徴を求めたくなるが、Bクラスは5人乗りのクルマだ。さらに、後席のスライド機構もない。

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    トールワゴンに高級感を求めるのか、それとも多目的性を重視するのか。何を望むかによって選択は変わってくる

メルセデス・ベンツの高級感と安全性は大きな価値ではあるが、そこを望むなら、ほかのメルセデスの存在がちらつくのも確か。Bクラスを積極的に選びたくなるような特徴が欲しいというのが正直なところだ。「背の高いAクラス」というだけでは、ちょっと弱い。

ただ、小さいクルマのニーズが高まる今、小さな高級車を求める人が増えていくのは間違いない。これまでの地味なイメージを払拭し、最新のインターフェイスとスタイリッシュなスタイルを手にしたことは、Bクラスにとって大きな前進といえる。