特撮テレビドラマ『ウルトラマンネクサス』(2004年)の放送開始15周年を記念し、「ウルトラマンネクサス スペシャルナイト 再会-リユニオン-」と題されたスペシャルなトークショーが、7月23日に池袋サンシャインシティで開催中の『ウルトラマンフェスティバル』会場にて行われた。ステージには主人公の孤門一輝を演じる川久保拓司をはじめとする主要キャスト陣が集まり、『ネクサス』を愛する大勢のファンたちを興奮と感動に包んでいた。

※記事には『ウルトラマンネクサス』の展開に触れる箇所があるため、未視聴の方は視聴してから記事をご覧になることを強くおすすめします。

  • 上段よりウルトラマンネクサス(ジュネッス、アンファンス、ジュネッスブルー)、下段左から、中丸シオン、加藤厚成、佐藤康恵、川久保拓司、石橋保、五藤圭子、内山眞人

『ウルトラマンネクサス』とは、2004年10月から2005年6月まで全37話が放送された、円谷プロ製作の特撮テレビドラマである。本作では、ウルトラマンシリーズの新たな試みとして、雑誌グラビア、アトラクションショー、映画、テレビシリーズなど各種メディアにまたがって展開する「ULTRA N PROJECT」という企画が2004年にまず立てられ、最初に「ウルトラマンノア」が児童向け雑誌展開に登場。そして『ウルトラマンネクサス』が10月2日よりテレビ放送され、2か月後に映画『ULTRAMAN』が12月18日より公開された。

宇宙から飛来した邪悪な生命体「ザ・ワン」に対抗する「ウルトラマン・ザ・ネクスト」の激闘を描いた映画『ULTRAMAN』から5年後の世界を舞台にしたテレビシリーズ『ウルトラマンネクサス』では、従来のウルトラマンシリーズに多く見られた「明るさ、楽しさ」よりも「暗さ、重さ」という部分を強調。土曜日の朝7時30分に放送されるテレビ番組としては異例といえる、重苦しいストーリーとショッキングな残酷描写で視聴者を仰天させた。

本作では、ウルトラマンに変身する者はデュナミスト(適能者)と呼ばれ、物語の展開に応じて"受け継がれていく"という設定。凶暴なスペースビーストの襲撃にひるんだ主人公・孤門一輝を助けた青年・姫矢准は、変身アイテム「エボルトラスター」によってウルトラマンネクサス(アンファンス/ジュネッス)へと変身するデュナミストだった。凄絶なる戦いの果て、自身の役目を終えた姫矢からエボルトラスターを受け継いだのは、陽気だがその出生に悲劇的な背景を持つ少年・千樹憐。彼は青いボディを持つウルトラマンネクサス・ジュネッスブルーに変身し、軽快なフットワークでスペースビーストに挑んでいく。変身者が異なることによってウルトラマンの戦いのスタイルも変化するというのが『ネクサス』の大きな特徴であり、魅力となった。

当初は、孤門が公私にわたって精神的ダメージを受け続ける陰惨な展開が目立ち、土曜日の朝(7:30)という時間帯には不似合いなほど"暗く、重々しいムードが毎回続いたことで、"明るく楽しい"ウルトラマン像を求めるファンから大きな反発を受けたこともあった。しかし、連続ドラマとして最終回(第37話)まで通してみれば、過酷な境遇に置かれた孤門が姫矢や憐、そしてナイトレイダー副隊長・西条凪との関わりの中で人間的成長を遂げる過程が克明に描かれていることがはっきりと受け取れる。『ネクサス』初期編の"暗く厳しい"ストーリー展開は、最終回で大いなる感動を得るための周到な伏線だったのだ。

最終回は、スペースビーストに襲われそうになった1人の子どもが、孤門から「あきらめるな!」と声をかけられるカットで物語が締めくくられた。『ネクサス』という作品には、現実世界でどんなに厳しく辛い出来事があっても、決してあきらめたりくじけたりせず、勇気と強さを胸に抱いてほしいという、作り手たちからの熱きメッセージが込められていた。

イベントは、邪悪なダークファウストに対して千樹憐が変身したウルトラマンネクサス・ジュネッスブルーのアクションで幕を開けた。憐を演じる内山眞人が「光は人に受け継がれる希望……俺は戦う! 俺は生きる! 生きてこの光を繋ぐ! ウアアアアアッ!」と劇中の名セリフを発すると、興奮のあまり客席からひときわ大きな歓声が沸き上がった。

続いて始まったトークショーでは、ナイトレイダーの隊員キャストが全員集合した上、前半レギュラーの中丸シオン、後半レギュラーの内山眞人がステージに現れると、客席から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。中には、感激のあまり涙を流すファンの姿もあった。

本作の主人公・孤門一輝隊員を演じる川久保拓司は「ネクサスが15年を迎え、改めて"絆"を感じます。みなさんの最高の笑顔! ありがとうございます」と、集まった多くの『ネクサス』ファンの熱気を全身で受け止め、感謝の気持ちを述べた。ひさびさのナイトレイダー結集については「何よりも、このメンバーで集まれるとは思いませんでした。僕がいちばん嬉しい」と、あふれ出る喜びの感情を抑えきれない様子を見せた。

ナイトレイダーの副隊長で、スペースビーストに激しい憎しみを抱いている西条凪を演じる佐藤康恵は「みなさんの声援がすごくて、裏でドキドキしていました!」と、冷徹な副隊長とはまったくイメージの異なる明るい表情で挨拶。湧き上がる声援を聞いて感激した佐藤は「15年経ってこうしてキャストが再会できたこと、そしてファンのみなさんとも会えたことが最高です!」と、興奮気味にコメントした。

武骨な性格で隊員からの信頼も厚いナイトレイダー隊長・和倉英輔役の石橋保は「みなさまのもとへ帰ってまいりました。まずはこのセリフから……『出動~~~ッ!!』」と、和倉隊長の決めゼリフを披露し、拍手喝采を浴びた。石橋は「この15年間、いろんなところでネクサスのファンです、と言ってくれる方にお会いする。本当にネクサスは根強いファンがいて嬉しい」と、熱心なファンの存在に改めて驚きと喜びを見せた。

常に明るさを忘れない射撃の名手・平木詩織隊員を演じる五藤圭子は「今日はみんなに会えて、とっても嬉しいです!」と、15年歳月を感じさせないアイドル性を発揮し、澄み切った美声で挨拶を行った。

戦闘に加えてアナライズ(分析)も担当する寡黙な石堀光彦隊員を演じる加藤厚成は「緊張で若干足が震えていますが、がんばります」とやや緊張気味なことを明かしながら、ファンの声援に応えていた。

戦場カメラマン・姫矢准(演:桐島優介)に続くデュナミストとなった天衣無縫な少年・千樹憐を演じる内山眞人は「今日はみなさん精一杯楽しんでいきましょう!」と15年前のイメージそのままに、憐らしく陽気なVサインポーズを決めた。会場に集まった500人ものファンを目の前にした内山は「チケット争奪戦で勝ち残ったみなさんは、一夜限りのデュナミストです!」と声をかけ、さらなる声援を浴びて笑顔を見せた。

過酷な環境で厳しい戦いに明け暮れる孤門にとって心の支えとなる恋人・斎田リコを演じる中丸シオンは「どうも、ダークファウストです(笑)」と言いながらまぶしい笑顔で挨拶。中丸は続けて「女性で"黒い"ウルトラマンに変身した人は初めてだと当時言われていて、ほんとうに光栄に思いました。この15年間、ずっといろいろなところから"ネクサス観ていました"というメッセージを、日本だけでなく外国の方からもいただくんです」と、本作に出演したことで大きな反響があったことを明かした。

スクリーンに映った当時のナイトレイダーメンバーの写真を見ながらのトークでは、石橋が「最初の撮影は"ダム"でのロケでした。この写真はスタジオでの初日に撮ったもの」と当時をふりかえると、五藤が「まだ、みんな制服がカタそうだもんね」と、まだ制服を着慣れていない様子を説明した。また、撮影時の思い出としては全員が「暑かった!」と言い、佐藤が「オールレザーの制服が厚くて通気性がなく、着ているときは辛かった。撮影が終わって服を脱いだら、布地の青が移って腕が真っ青に!」と、制服の"色落ち"にも苦労させられたことを打ち明けた。

『ネクサス』のストーリー展開は最初にすべての"謎"が俳優陣に明かされているのではなく「毎回の台本を読むまで先のことがわからない状態だった」と語る川久保の言葉を受けた石橋は「最後のほうの台本を読んで、えっ? えっ? あなたが?」と言いながら加藤のほうを向き、石堀に隠された衝撃の"正体"について驚きがあったことを話した。川久保もまた「最終的に、僕がウルトラマンに変身できるかどうか、すらわかりませんでしたからね」と、先の読めないストーリー展開にハラハラしていたのが視聴者だけではなく、演じる側も同じ気持ちだったと語った。さらに、川久保は当時をふりかえって「あのころはお芝居の経験もまだ多くない中、必死でがんばっていた。孤門と自分がリンクするような心境だった」と、若手時代の自分自身を孤門と重ね合わせながら演技をしていたことを明かした。すると、石橋から「顔がどんどんウルトラマンっぽくなっているよね」と、川久保の顔を見ながらしみじみと語り出し、佐藤が爆笑するという場面が見られた。

劇中では孤門隊員に厳しく接することが多かった西条副隊長だが、ふだんの佐藤は常に明るく、天然キャラだったという。佐藤は「撮影現場ではみんなほんとうに仲がいいんですけれど、西条凪は複雑な立ち位置のキャラクターだったので、あえてみんなと距離を置いていたこともあった。でもみんなと仲良くなりたい! という気持ちがガマンできなくて、一日の撮影が終わるとみんなでポテトチップスを食べていました」と、ハードな設定のキャラクターを演じる際の苦労を打ち明けた。

続いてスクリーンに映し出されたのは、孤門とリコの仲むつまじいツーショット写真。これについて川久保は「この写真を撮ったのがネクサス全体の撮影初日だった」と語り、周囲から「2人に絶妙な距離感があるのはそのせいか」と納得されていた。中丸は「自分にとって初めてのキスシーンがあり、あのときはとても緊張しました」と話しながら、川久保と目を合わせてニコリとほほえんだ。このように、いかにも平和な恋人同士のシーンも『ネクサス』では長く続かず、川久保は「まさかあんなことになっているとは……もう衝撃の連続でしたよ」と、孤門にとって恋人・リコとの安らぎの時間の影に、過酷すぎる"現実"が襲いかかる展開になったことを改めて嘆いていた。

ナイトレイダーは特殊な訓練を受けた隊員たちという設定のため、事前に動きのチェックおよびトレーニングの期間があったという。川久保は「 "走り方"の練習をよくしていました。以前『ウルトラマンダイナ』をやっていた先輩・つるの剛士さんの走り方がきっかけとなって、以後、ウルトラマンのオーディションでのチェックポイントに"走り方"が加わったそうです(笑)」と、興味深い裏話を明かした。五藤は「他のみなさんは背が高くて、足も長くて速く走るんですが、私はコンパスが短くて1人だけ追いつけない」と苦労を語ったほか「みんなで"走る"練習をしましたね。短く走ってピタッと止まったり。そういう動きはうまくできました」と、機敏な動きを見事にこなせたと嬉しそうに語った。石橋は「周囲の様子を見て"止まれ"というハンドサインをよく出しました」と言い、観客のリクエストに応えて右手をピッ!と挙げてみせた。

内山は憐役に決まった経緯を「最初は吉良沢優(演:田中伸彦)役でオーディションを受けて、一度落ちているんです。その後もう一回呼んでいただいて、憐役のオーディションに参加できたんです」と懐かしそうにふりかえった。自身にとって"ヒーロー"になることは念願だったという内山は「嬉しくて浮足立ってしまい、現場では空回りの連続でした。そんな僕を支えてくれたのが川久保くんでした」と、川久保に何かとフォローをしてもらったことへの感謝を述べた。川久保は内山の言葉に対して「僕=孤門が姫矢さんにしてもらったことを憐にしてあげようと思い、ちょっと背伸びして"頼りがいのあるアニキ"を演じてみた」と、後半エピソードで見せる孤門の成長ぶりと同じく、若い内山を支える役割を務めていたと語った。

話題が変わって「この中で誰がデュナミストにふさわしいか?」というお題に。出演者がそれぞれ指差した相手は見事にバラバラとなり、会場からの笑いを誘っていた。川久保は石橋をデュナミストにふさわしいと推挙し、その理由として「第35話で、隊長がTLTの松永管理官(演:堀内正美)に向かって、僕たちナイトレイダー隊員が持っている不満や不安を代弁し、必死にぶつかってくれたシーンがあるんです。あそこがとても印象的で"光"を感じました」と、部下のことを思いやる和倉の静かな"熱さ"に感動したことを打ち明けた。ちなみに石橋は「次にウルトラマンへ変身するのは俺だと思って準備をしていた」と、孤門から光という"絆"を受け継ぐ気まんまんだったことを告白し、それが実現しなかったことを残念がっていた。

ここで、ナイトレイダーの装備である大型砲「ディバイトランチャー」の劇中小道具が用意され、五藤、石橋、川久保、佐藤と、各隊員たちが懐かしそうに手にした……のだが、加藤の手にランチャーが渡った直後、何やら怪しげな光が彼の身を包み、やがて重い砲撃音が鳴り響いた。いつの間にか加藤の姿はなく、そこにはアンノウンハンド=ダークザギが不気味なたたずまいを見せていた。

すると、佐藤(西条副隊長)が絶叫と共にエボルトラスターを抜き、光の中からウルトラマンネクサス(アンファンス)が登場。ダークザキに向かって果敢に立ち向かっていった。

しかし、ダークザギの"闇の力"は強大だ。佐藤(西条)から"絆"を受け継いだ川久保(孤門)は、客席からの「あきらめるな!」という声に応えて「絆……ネクサス!」と叫び、エボルトラスターを抜いた!

孤門はウルトラマンネクサスの究極最終形態「ウルトラマンノア」に変身し、ダーグザギを粉砕。会場に見事"光"を取り戻した。

トーク終了後のフォトセッションでは、ウルトラマンネクサスの3形態=ジュネッス、アンファンス、ジュネッスブルーが奇跡の勢ぞろいを果たし、ファンを歓喜させた。

イベントの最後には、7月30日よりYouTubeウルトラマン公式チャンネルにて『ウルトラマンネクサス』が配信(毎週火曜日/1話ずつ)されるとの発表が行われた。さらには、9月11日から9月30日まで中野ブロードウエイ「墓場の画廊」にて『ウルトラマンネクサス展』が開催されることも明らかとなった。

最後の挨拶で佐藤は「4歳の息子がウルトラマン大好きで、『ネクサス』を観るときのまなざしがすごく真剣なんです。さきほどの変身ポーズは、昨日お風呂に入りながら息子が私に『ママ、こうだよ!』って教えてくれたものでした(笑)。絆こそ光、永遠に続け~と思いながら変身しました。これからもたくさん、たくさん応援してください!」と本日の"変身"についての裏話を明かしつつ、今後もまた『ネクサス』のファンたちと一緒に集う機会が持てることを願っていた。

川久保は「15年前、僕たちは持っているすべてを懸けて『ウルトラマンネクサス』という作品を作りました。その"絆"が光となってみなさんに届いているんだなと、今日のひとりひとりの笑顔を見て確信しました。みなさん、これからも"光"そして"絆"を、大切な人のためにつないでいってください。今日はどうもありがとうございました!」と、『ネクサス』を愛し続けるファンたちとの"絆"に感謝し、熱い大歓声を受けながらイベントを締めくくった。

(C)円谷プロ