東日本大震災から8年。当時、被災した東北3県(宮城、福島、岩手)では、おびただしい数の仮設住宅が建てられた。地域によって差はあるが復興も進みつつある。そこで、LIXIL(リクシル)と東京2020組織委員会は、役目を終えた(被災者が退所した)仮設住宅に使われていたアルミニウムを再利用して「東京2020 復興モニュメント」を制作しようというプロジェクトを始動。17日に都内で記者発表会が行われた。

  • 仮設住宅のアルミを再利用して「東京2020 復興モニュメント」を制作する

    仮設住宅のアルミを再利用して「東京2020 復興モニュメント」を制作するプロジェクトが発足

人々の想いが詰まったアルミを未来へ

東京2020 復興モニュメントの制作は、東京2020大会のコンセプトである「被災地の復興」を象徴するプロジェクトであり、リクシル、および被災3県、東京2020組織委員会、東京都、東京藝術大学が共に行うもの。

被災地から寄せられた応援メッセージをモニュメントに集約して、東京大会でアスリートが目にできる場所に設置する。そのメッセージによって力を得たアスリートがパフォーマンスを発揮し、被災地に元気を届ける、というのが本プロジェクトの趣旨となる。

制作の過程は次の通り。

・被災3県から、解体された仮設住宅の窓などを回収
・東京藝術大学の学生によるワークショップを被災3県の中高生へ実施
・被災地を支援してくれた世界各国への感謝、およびオリンピック・パラリンピック選手への応援メッセージを制作
・藝大の学生からモニュメントのデザイン案を提出
・被災3県の中高生らによってデザインを決定

登壇した東京2020組織委員会事務総長・武藤敏郎氏は「復興のモニュメントをつくるアイデアについては、これまで様々議論されたが、話がまとまらなかった。リクシルさんが、仮設住宅で使われていたアルミを再利用したらどうかと提言され、そこからプロジェクトが一気に具体化した」と経緯を説明した。

  • 東京2020組織委員会事務総長・武藤敏郎氏(左)と企画財務局長・伊藤学司氏(右)

    東京2020組織委員会事務総長・武藤敏郎氏(左)と企画財務局長・伊藤学司氏(右)

なお、モニュメントは大会後に、応援への感謝としてアスリートたちのサインが施され被災地に寄贈されるという。

  • どんなモニュメントになる? 期待が膨らむ

    どんなモニュメントになる? 期待が膨らむ

  • 東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部の本部長も務める、リクシルの佐竹葉子氏

    東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部の本部長も務める、リクシルの佐竹葉子氏も登壇

特別ゲストに錦織選手とサンドウィッチマン

プロジェクトの概要が説明された後、壇上に特別ゲストとしてプロテニスプレイヤー・錦織圭選手、お笑いコンビ・サンドウィッチマンの伊達みきお氏、富澤たけし氏が招かれてトークセッションがスタート。オリンピックまであと1年と迫ったことについて聞かれると、錦織選手は「まだ準備期間はありますが、ちょっとずつ気持ちが高まってきています」と現在の心境を明かした。

  • ウィンブルドン選手権を終えたばかりで、今は身体を休めている最中だという錦織圭選手

富澤氏は「オリンピック本番に向けて、あまりメダルメダル言うとアスリートにプレッシャーがかかっちゃう。わたしは錦織選手の金メダル1個で十分です」と錦織選手にプレッシャーをかけると、すかさず伊達氏が「たくさん獲れるでしょ、ほかの競技でもね」とソフトなツッコミ。

  • 「さっき楽屋で、錦織選手に好きなお笑いコンビを聞いたら『ナイツです』と目を見て言われました」と明かしたサンドウィッチマンの2人

トークセッションの中では、リクシルの佐竹氏が仮設住宅824戸から約2トンのアルミを回収済みであると報告し、約30戸の住宅から回収した150kgほどのアルミの塊も披露された。

  • 1戸の窓サッシはこの大きさ

  • 約30戸の住宅から窓サッシを回収すると、この大きさ(150kgほど)になる

  • さらに圧縮して分割すると、この大きさに。これを溶かして復興モニュメントを制作する

アルミ2トン分(と書かれたパネル)を手渡された武藤氏は「アルミの再生によって作られるモニュメントは、被災地復興のシンボルになると同時に、リサイクルの象徴にもなる。これは東京2020大会が掲げる『持続可能な開発目標(SDGs)』の貢献にもつながります」と、あらためて本プロジェクトの意義を強調した。

サンドウィッチマンの伊達氏と富澤氏はそれぞれ、「役目を終えた仮設住宅はどうなるんだろうと気になってました。モニュメントにするというのは素晴らしい試みだと思います」「被災地の方にとって仮設住宅は、つらい生活の象徴みたいなところがある。それが形を変えてアスリートと結びつくことで、『応援』や『感謝』といったポジティブな気持ちに変わるのではないか」と同プロジェクトについてコメント。

リクシルの佐竹氏も「被災者の方の生活と共にあったアルミ建材には、たくさんの人々の様々な想いが詰まっていると思います。そのアルミを形にして残し、その想いを未来へとつないでいきます」と語った。

  • 錦織選手からパネルを渡された武藤氏は、アドリブで「ウィンブルドン見てました」と報告。後ろから富澤氏に「余計なこと言わないでください」とつっこまれていた

最後に、錦織選手は「こうした活動によって、また被災地への思いが強くなりました。東京2020大会でも良いメダルを獲れるように頑張ります」、伊達氏は「東北の元気、これまで頑張ってきた証しを、世界中の方に見てもらいたいですね」、富澤氏は「これからも変わらずに、東北と、東北出身のアスリートと、錦織選手を応援していきます」とそれぞれの想いを述べ、イベントを締めくくった。

  • 最後に3人は、復興モニュメントに掲載するメッセージも披露