豊島将之棋聖に渡辺明二冠が挑戦する第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局が6月29日、静岡県沼津市「沼津倶楽部」で行われ、渡辺二冠が勝ってシリーズ成績を2勝1敗とし、初の棋聖位獲得まであと1勝としました。

7/9に第4局 豊島棋聖巻き返せるか

2013年度以来の三冠復帰へあと1勝とした渡辺二冠

対局は渡辺二冠の先手で、互いに自分の角のいる側に玉を囲う「矢倉」の戦型へと進み、渡辺二冠が金銀4枚を連結させた昔ながらの矢倉囲いを用いたのに対し、豊島棋聖は駒のバランスを重視し玉を中央に戻す現代調の駒組みを採用しました。渡辺玉の裏口である端から攻めた豊島棋聖でしたが逸機があり、渡辺二冠が反撃を開始します。豊島棋聖の駒への攻めを見せながら自身の銀、角、歩を次々に成り駒にして自玉の上部に強力な厚みを築き、攻め受けともに望みのなくなった豊島棋聖を投了に追い込みました。終局時の残り時間は豊島棋聖9分、渡辺二冠44分(※持ち時間各4時間)。

レベルの高い対局ほど先手が有利と言われるプロ公式戦ですが、今シリーズの第1局、第2局はともに後手番の棋士が制していて、本局が初の先手番勝利となりました。次局の先手は豊島棋聖。自身タイトル初防衛のために絶対に落とせない先手番となります。入念な事前準備を行うことが予想されますが、7月9日の第4局の前にもうひとつの防衛戦、3、4日の両日に行われる第60期王位戦七番勝負第1局が割り込むのが懸念材料となります。

通常ですと王位戦第1局のスケジュールは、2日に現地へ移動して検分や前夜祭をこなし、3、4日に対局、5日に帰郷となります。そして8日には棋聖戦第4局のための移動がありますので、入念な事前準備を実現させるには、自身の体力や時間とも勝負する必要がありそうです。あえて好材料を挙げるなら、王位戦第1局が出身地でもあり、関西圏に近い愛知県で行われること。これを最大限味方にして、防衛に望みをつなげられるでしょうか。

一方の渡辺二冠は、第4局までの間に対局はありません。豊島棋聖が用意した作戦に後手番で対応するべく、万全の準備で臨むことでしょう。

7月9日の第4局は、新潟市「高志の宿 高島屋」で行われます。