「安定した職業」として根強い人気の公務員。就活の際、勤め先として検討したことがある人は多いかもしれません。一方で、公務員は「昔ほど安定していない」との声もありますが、福利厚生などにおけるメリットは今でも存在しているようです。また、給与面でも恵まれているイメージがあるのではないでしょうか。そこで今回は、公務員のメリットや給与についてまとめてみました。
公務員のメリットとは?
公務員として働くと、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
■リストラや失業の可能性が低い
「公務員が安定している」と言われる理由の一つは、民間企業と比べてリストラや失業の可能性が低い点にあります。全くないわけではありませんが、犯罪や義務違反、また、著しく勤務成績や態度が悪いなどの理由がない限り、一般的には、リストラの心配をせずに安定して働くことができます。また、民間企業のように、不景気のあおりを受けて会社が倒産するようなこともありません。ただし、北海道夕張市のように、巨額の財政赤字を抱えたことによる人員削減や給与の40%カットといった事例もあり、必ずしもリストラと無縁の職業と言い切ることはできなくなっています。
ちなみに、公務員は離職率が低いのも特徴です。民間企業では、転職をするのが当たり前になりつつあり、民間の会社員から公務員になる人もみられます。しかし、公務員の場合、離職して民間企業へ転職するケースは非常に少ないのです。特に地方公務員では、公務員として働いたキャリアが転職の際にキャリアとして認められづらいという事情もありますが、基本的には公務員は安定して働ける環境にあるため、そもそも離職を前提としていない人が多いからだと考えられます。
■年功序列で給与が上がる
民間企業においては崩れつつある年功序列の給与制度が、公務員では維持されています。年功序列とは、勤める期間が長いほど給与も増加する仕組みです。民間企業のように、個人の成績によって給与が高くなることはありませんが、その代わりに、長く勤めるほど基本給が上がっていく安心感があります。
■安定した給与や退職金の制度
公務員は絶対に安定していると言い切ることはできないものの、それでも、景気や会社の業績、個人の成績が給与に与える影響の大きい民間企業と比べると、公務員は給与が安定していると言えます。リストラの可能性が低く、年功序列で基本給が上がっていく仕組みがあることからも、長く働きやすい職業と考えられます。
また、退職手当制度もしっかりしており、総務省が発表した「平成29年4月1日地方公務員給与実態調査結果」によると、地方公務員の退職金の平均は約2,263万円と、これは民間企業でも大手企業の給付額に当たる水準です。ただし、地方公務員の退職金は年々減少傾向にあります。
■各種休暇の体制が整っている
民間企業では、入社1年目で10日、その後は勤続年数に応じて、最大20日の有休取得が可能という場合が多いのですが、公務員は入社1年目から20日の有休があります。また、産休(産前産後休業)・育休(育児休業)の他にも、最近では民間企業の導入も増えてきている介護休暇、ボランティア休暇などの休暇を取得することができます。
特に、民間企業の育休が原則1年(保育園に入れないなどの事情がある場合は、2歳まで延長可能)であるのに対し、公務員は育休を3年間取得できます。総務省の「平成29年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」によると、地方公務員(女性職員)の育休期間は、6月以下が4.9%、6月超1年以下が29.0%、1年超1年6月以下が22.1%、1年6月超2年以下が15.2%、2年超2年6月以下が9.5%、2年6月超が19.3%となっています。民間企業と比べて育休を長く取得できることで、ゆっくり子育てに専念できるメリットがあります。
その他にも、公務員は「国家公務員法」や「地方公務員法」によって身分が保証され社会的信頼があるため、住宅ローン等のローンが組みやすいといったメリットもあります。
公務員の給与の平均額は?
それでは、公務員の給与の平均額はどのくらいなのでしょうか。総務省が発表している「平成30年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、国家公務員の平均給与月額は、41万7,230円でした。また、内閣官房内閣人事局の資料によれば、同年の国家公務員の夏のボーナス(平成30年6月期の期末・勤勉手当)の平均支給額は約65万2,600円、冬のボーナス(平成30年12月期の期末・勤勉手当)の平均支給額は約71万円となっており、これらを元に計算すると、年収では約637 万円となります。
一方、総務省による「平成30年地方公務員給与実態調査結果等の概要」では、地方公務員の平均給与月額は、37万4,163円です。なお、ボーナス(期末・勤勉手当)は東京都の場合だと、全職種の平均が181万8,400円、一般職員の平均が173万5,300円、一般職員のうち一般行政職の平均が178万3,100円などとなっています。これらのデータを元に計算するとなれば、平均年収は630万円程度になります。
一方で、民間企業の平均年収はどうでしょうか。国税庁の「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」によると、民間企業の平均年収(給与所得者の年間の平均給与)は432万円です。ちなみに、同調査によると男性の平均年収は532万円、女性は287万円、正規雇用では494万円、非正規雇用では175万円という結果になりました。
上記の数字はあくまで平均であり、年齢や職種等を考慮に入れたものではありませんが、それでも公務員の給与は民間企業の平均年収と比較して高くなっていることがわかります。なお、先述の通り、公務員の給与は勤続年数が増すごとに上がっていく仕組みです。初任給こそ高くは設定されていませんが、長く勤めるほど基本給が上がるという見通しが立てられることになります。
公務員の給与はどうやって決まる?
公務員の給与は民間企業の平均収入と比べて高くなっていますが、それでは給与の額はどのように決められているのでしょうか。国家公務員の給与は、人事院が民間企業の従業員の給与水準と見比べ、同程度に設定されています。民間企業の給与を超え過ぎないよう、調整を国会および内閣に勧告するのです。ただし、ここで言う民間企業とは、上場している大企業が基準となっています。その結果、国家公務員の給与は民間企業の平均収入より高いのです。
なお、国家公務員には「俸給」という制度があり、給与は俸給表で定められています。俸給とは、職務の複雑さや困難さ、責任の度合いなど仕事内容に応じた給与のことです。俸給はいわゆる基本給に当たり、このほかに諸手当(扶養手当や住居手当、ボーナスなど)が付きます。
一方、地方公務員の給与は俸給表ではなく、各自治体で定められた「給料表」によって給与が決まります。
公務員の仕事もメリットだけではない
公務員の待遇や福利厚生を見てみると、やはり魅力的な職業だと感じた人は多いのではないでしょうか。ただし、職種や部署によっては激務であり、収入を増やしたくても一部を除き副業が解禁されていないといった側面もあります。結局は、国民や地域住民がより良い生活を送るために働いている充実感が、公務員の最も大きな魅力と言えるかもしれません。