――柳生隠密・青山凛ノ介という人物を演じるにあたって、犬飼さんが共感できる部分、あるいはできない部分などがあったら教えてください。

生きる時代が違うというのもありますが、性格そのものが僕と凛ノ介では違うと感じました。そもそも僕は役を自分と重ねるタイプではないので、共感ができなくとも演技のやり方には関係がないんです。どんな役柄でも"演じる"という時点で自分とは違うという考え方でやっています。

――時代劇ならではの衣装を身に着けたり、カツラを被ったりという経験は以前にもありましたか?

今回が初めてです。カツラは『ビルド』の劇中で、エボルトに乗っ取られて白髪になったとき以来になりますね(笑)。あのときと今回とではカツラの種類も違いますし、時代劇のカツラと衣装を着けたことは今までにない、まったく新しい体験でした。

――また、現代劇と違って時代劇には独特な所作があると思います。こちらについてはいかがでしたか。

ふとした仕草などに、現代とは違う動きが求められますので、撮影の合間合間に所作指導の先生から教えていただきました。歩き方や、振り向き方、座り方、立ち方、走り方など……。そういった動きのすりあわせには苦労しましたが、その分、本格的な動きになっていると思います。自分のイメージでは、新しいものを作るというよりは、昔ながらの伝統的なものを尊重しながら、作り上げていったという感じです。

――共演者の方たちについてのお話をうかがいたいと思います。本作では『仮面ライダービルド』の武田航平さんや『仮面ライダーエグゼイド』の小野塚勇人さん、町井祥真さん、『仮面ライダー鎧武』の久保田悠来さんと、仮面ライダーシリーズに出演された俳優さんでメインを固められているのですが、撮影がお休みのときなどにみなさんで遊びに行ったりとか、されたのでしょうか。

あいにく、撮休のときには東京に戻って仕事をしていたりするので、この作品ではまる1日休みが取れたことがなく、みんなでどこかに行く機会がまったくなかったんです。ふだんの撮影の合間、昼の休憩時間にみんなで食堂に行くことはありましたが、ガッツリ遊ぶことができなかったのは、ちょっと心残りでしたね。ホテルと撮影所の行き来だけという(笑)。でも、あれだけタイトなスケジュールをこなして、共演のみんなと濃密な時間を過ごすことができたというのは、僕の中で大きな思い出として残っています。

――御前試合の場面では、出場者のみなさんがそれぞれ得意の剣技を駆使して戦うのが大きな見どころになっているかと思います。剣による立ち回りを経験されたご感想を聞かせてください。

たいへんでしたね……。それまで刀なんて握ったことがなかったので、果たして本当に出来るのだろうか?と最初は不安でした。でもやるしかない状況で、時間がない中で、自分なりに最善は尽くすことができたかな、とは思います。

――みなさんがそろって、立ち回りの練習などをされたりしたのでしょうか。

ホン読み(台本の読み合わせ)のあと一度だけ、木刀を持って1~2時間くらいやりましたね。

――凛ノ介に想いを寄せる可憐なヒロイン・八重を演じる優希美青さんの印象はいかがでしたか。

19歳という若さに似合わず、すごくどっしりと構えていらっしゃる女優さんという印象で、だからこそ安心してお芝居をさせていただくことができました。ただ、撮影をこなしていくのが精いっぱいで、合間に2人でお話することがほとんどなかったのが残念なところでしたね。役の上ではお互いの心を通わせている、という関係だったのですが、優希さんのことを深く知る前に撮影が終わってしまったという感じだったんです。

――それでは最後に、犬飼さんから映画『GOZEN -純恋の剣-』の見どころを聞かせてください。

凛ノ介と八重との恋のゆくえという部分も大事なのですが、僕としては武田航平さん演じる寺脇甚八郎との一騎討ちの場面を強調したいですね。

――お2人は『ビルド』でビルドとグリスとして激闘を繰り広げた過去がありますが、生身の状態で戦うのは初めての経験ではないですか。

確かにそうですね。試合が始まるとき、僕は高岩(成二/仮面ライダービルドのスーツアクター)さんをお呼びしたかった! 今回は変身しないから、自分で動いて戦わないといけないのか、なんて思ったら、ここで高岩さんにアクションを交代してもらえたらなあ、なんて考えたりもしました(笑)。

――『ビルド』でもすばらしいチームワークで共に撮影を乗り切った犬飼さんと武田さんですから、試合のシーンではふだんのお2人の関係を意識して、犬飼さんが戦いにくかった……なんてことはなかったでしょうか。

いえぜんぜん。思い切りやってやろうと思っていました(笑)。砂利の上に下駄履きという不慣れな足場で、一歩間違えば怪我をしてしまうような状況ながら、航平さんと2人で懸命に作り上げたシーンなので思い入れが強いですし、ここが映画の中で一番の見どころではないかと思います。僕たちが出演した映画『GOZEN-純恋の剣-』は、舞台『GOZEN-狂乱の剣-』(9月東京・大阪上演)と連動する要素もあり、いろいろな楽しみ方のできる作品になっていますので、ぜひたくさんの方たちに観ていただきたいです。