鷲尾:大人になって改めて思うのは、自分にとってのヒーローは「父親」だなということです。あまりしゃべらない寡黙な親父だったんですけれど、最近になって甥や姪と遊んでいる姿を観ると、以前の人見知りっぽい部分がなくなって、フランクな態度を取るようになっている。ああ、齢を取ってからも人間は変わるものなんだなあって、そのとき感じたんです。黙っていても、僕に向けた背中から何かを語ってくれる、そんな親父のような人間に僕もなることができたらな、と思います。

伊阪:ヒーローはいつまでも同じじゃなくて、常に変化していくものなんじゃないかって思いますよ。最初から完璧なヒーローなんていなくて、ヒーローでも成長していく。それを追いかけることによって、自分もまた成長する……なんてことを考えたりしますね。

鷲尾:僕もいつかは、寡黙な父親になれるかなあ?

伊阪:今は寡黙じゃないもんね(笑)。

鷲尾:そう。ずっとしゃべっている(笑)。しゃべっていないときはゲームしてたりね。最近はゲームしている間もしゃべっていたりするからなあ。

――お2人の演じられる月光仮面、新月仮面というキャラクターにご自身が共感できる、と思われるところなんてありますか。

伊阪:自分なりの正義感が強い、ってところが新月仮面に共通しているかもしれません。「軍人」という役柄で、日本を守ることを第一に考えていたりするので、そういう人物が貫こうとする"正義"ってどういうものか……と。僕もガンコな性格だと思うので、新月仮面はとても演じやすいキャラクターになるはずです。

鷲尾:自分自身、あまり前へ前へと出ていきたいタイプじゃないんです。自分が出るよりは、誰かのサポートを務めるほうが向いていると感じています。そういった意味では、正体を隠して正義の行いをする"縁の下の力持ち"的な存在として、月光仮面に素直な憧れを抱いていますね。

――大正時代という設定について、何か意識されたことはありますか。

鷲尾:自分にとって大正時代とはとても華やかなイメージを抱いています。しかし、華やかさの裏にはドロドロとした闇があったのかもしれないですし、それだからこそ悪に立ち向かう月光仮面という"光"のヒーローが存在する必然性があるのだと思いました。

伊阪:大正という時代を僕らが実際に体験していないからこそ、憧れをもって大正時代の人間を演じられたらいいなと思います。

鷲尾:僕の祖母が今98歳だから、大正生まれなんです。祖母が若き日を過ごしていた時代として、大正を身近に感じておきたいですね。

――演出を務められる樋口夢祈さんと、お2人とのコンビネーションはいかがですか?

鷲尾:今回の新宿村LIVEという劇場は、お客さんとステージとの距離がけっこう近いところなんです。役者の熱量が客席へダイレクトに伝わるような場所での"見せ方"がとても上手だと思っていますし、純粋にお芝居が好き、芝居バカという人。演出家の熱量を役者がちゃんと受け取って、何倍にもかけ算していくことができたらいいですね。

伊阪:樋口さんは"漢気"があるというか、自分が辛いときだってそれを見せずに「みんな俺についてこい」なんて、いつもカブいてくれますから、彼の懐へ飛び込んでいこう、と素直に思えるんです。

――それでは最後に、『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』にかけるお2人の意気込みを聞かせてください。

鷲尾:ふだん僕たちの芝居を観に来てくださる女性ファンの方たちに「月光仮面っていうのは、こんなにステキなヒーローなんだ」と思っていただきたいですし、逆に月光仮面のファンで、僕たちのことをまったく知らない方に「こんどの月光仮面の舞台、よかったよ」と言っていただきたいです!

伊阪:日本を代表するヒーローというビッグなタイトルですから、演じるほうとしては気を抜くことができません。全力で頑張ります。さっき鷲尾くんも言っていましたが、特撮ヒーローが好きで、舞台を観るのは初めて、みたいな方にこそ観てほしいと思っているんです。目の前で"ヒーロー"の生きる姿を演じている僕たちを観たお客さんが、「舞台」そのものに興味を持ってもらえたら……。ジャンルを越えて興味をつなぐ"架け橋"のようなことが僕たちにできたら幸せですね。

鷲尾:全26公演の中には、親子連れで芝居を鑑賞していただける「応援上演会日」もあります(公式サイト参照)。僕たちも、ちゃんと子どもたちに認めてもらえるヒーローになれるよう、頑張りたいと思います! どうぞよろしくお願いします!

GEKIIKE本公演第10回として「新宿村LIVE」で上演される『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』は2019年7月26日より8月12日まで全26回のロングラン公演が行われる。詳細はGEKIIKE公式サイト、または『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』公式WEBサイトを参照していただきたい。

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