5月21~22日、NTT東日本の事業を体感できる「NTT東日本 Solution Forum 2019」が都内で開催され、現代の社会課題に対して、NTT東日本が取り組んでいるソリューションの展示やセミナーが行われた。

本稿では、同フォーラムで行われたセミナーの1つ「キャッシュレス時代における電子マネーソリューション」の模様をお伝えしたい。

  • 株式会社エヌ・ティ・ティ・カードソリューション 宇都宮祐子氏

エヌ・ティ・ティ・カードソリューションは、テレホンカードを販売していたテレカを母体とし、ユーカードと合併したことでできた会社だ。もともとはプリペイドカード販売を主軸としていたが、現在は電子マネーの発行・運営・販売が中心となっており、Edyやnanaco、モバイルSuicaなどを取り扱っている。

キャッシュレス市場の規模と伸び

キャッシュレス市場の規模は、実店舗で2008年の0.8兆円から2018年には5.5兆円と約7倍の伸びを見せているという。もともと利用の多かったECサイトでも、2010年の7.8兆円から2017年には16.5兆円と約2倍に増加したそうだ。

実店舗での利用が増えている背景の1つには、支払い手段の多様化がある。1つはクレジットカードやデビットカードに代表される接触型、次にSuicaやnanaco、WAONといった非接触型、そしてPayPay、Origami Pay、LINE Payなどのコード型だ。お店が決済端末を用意しなくても安く導入できるコード型の登場で、これからますますキャッシュレス決済は増えていくものとみられる。

さらにキャッシュレス化を押し上げているのが、PontaやTカードを代表とするポイントサービスだという。こういったポイントサービスがキャッシュレス決済を利用するモチベーションを挙げていると宇都宮氏は述べる。こちらの市場も、2016年には1.7兆円規模となっており、2022年には2.3兆円と約1.3倍の伸びが期待されている。

こういったキャッシュレス決済の金額は2017年で約70兆円、決済全体におけるキャッシュレス比率は約21.3%といわれている。そのうち8割はクレジットカードであり、今後も主軸となるのは間違いない。一方で、「クレジットカードを持っていない人や端末を持っていない店舗にまでキャッシュレス決済を浸透させるには、非接触型やコード型で使われる電子マネーの普及が必要になってくるだろう」とエヌ・ティ・ティ・カードソリューションの宇都宮氏は説明する。

なぜキャッシュレス決済が必要なのか?

では、なぜ政府までもが関わり、キャッシュレスを伸ばそうとしているのか。宇都宮氏は「キャッシュレス化を進めることが、日本の社会課題を解決するから」と述べた。日本の社会課題とは、労働力不足の解決、社会コストの軽減、インバウンドの拡大の3つ。

現金を取り扱うことで発生するレジ業務や銀行への入出金によって人手不足を補い、全国に張り巡らされたATM網の維持費用を抑え、キャッシュレス決済に慣れた海外の観光客を取り込む、これら3つがキャッシュレスが推進される理由だ。

キャッシュレス決済を行っている人の属性は?

「我々がキャッシュレスの提案をすると、よく『いや、高齢者には分かりずらいから』という話をされますが、本当にそうでしょうか?」。宇都宮氏はこのようにセミナー参加者に投げかけ、説明を続ける。

宇都宮氏によると、同社が行ったアンケートにおいて、キャッシュレス決済のここ数年での利用率の伸びは、全世代で大差ないという。また電子マネーの1年間の利用額の推移を見ると、70歳以上の伸びが非常に大きく、2012年には年間8,688円だったところ、2017年には16,079円とほぼ倍増しているそうだ。

「キャッシュレス決済は、現金を数えなくてよい利便性、利用金額に上限設定ができるという安定性によって、高齢者の方でも抵抗感なく使えるようになってきている」と宇都宮氏は語る。またネットショッピングも同様で、全世代の平均以上に利用率が高いという。

使われている電子マネーには、地域によって違いがみられる。地方ではWAONやnanacoのように巨大なモールで使えるものが人気が高く、首都圏ではSuicaやPASMOのような交通系の利用率が高いそうだ。

「あらゆる世代にキャッシュレス決済は普及しているが、だからこそそれぞれの生活圏や利用方法に応じたバリエーションが必要」と宇都宮氏はまとめる。

EJOICAセレクトギフトの利点

このような市場背景の下、エヌ・ティ・ティ・カードソリューションの電子マネー事業は「つなぐを、かたちに」というキャッチフレーズの下、2つのミッションに挑戦しているという。1つ目は電子マネーをギフトとして扱い、効果的なプロモーションやキャンペーンによって広げていくことだ。

その代表的な取り組みとして挙げられたのが「EJOICAセレクトギフト」。その特徴は、複数(2019年5月現在、16種類)の電子マネーをセレクトして組み合わせられることにある。電子メールなどで送ることができるため、郵送料などの社外コストの削減、封入や発送などの社内コストの削減による働き方改革、発送から到着までのリードタイムの削減、住所などの個人情報が不要なことによるセキュリティ改善なども見込めるという。

すでにサンスターやソニーなどの企業で採用事例があり、前者は全12種類から選択するという形で、後者は音楽ギフトに特化するという形で活用されている。また、ポイント交換での採用例も増えているそうだ。ギフトIDオンデマンドサービスを通じてシステム連携し、企業ごとの独自ポイントサービスで得たポイントを、電子マネーと交換する仕組み。様々な電子マネーをワンストップで仕入れることができ、在庫管理が不要という特徴がある。

地域社会でのキャッシュレス推進

2つ目のミッションは、地域社会のキャッシュレス化を促進すること。その導入目的はさまざまだが、大きく分けて、2つの流れがあるそうだ。

1つは、自治体の生産性向上を目指して自治体自らがキャッシュレス化に取り組む流れ。 宇都宮氏は、住民が公共施設を使用する際の料金の支払いをキャッシュレス化し、住民の利便性の向上、自治体窓口の人件費削減と業務効率化を図るという例を挙げた。

もう1つは、地域と連携してキャッシュレスを進め、インバウンド需要の拡大を狙う流れ。地域通貨として電子マネーを発行し、使えるお店を限定して地域専用通貨にすることで、地域創成を行うという。

「これから東京2020大会、大阪万博に向けてキャッシュレス時代が進んで行く中で、こういった電子マネーソリューションが役に立てばと思っています」と宇都宮氏はセミナーの内容をまとめるとともに、「EJOICAセレクトギフト」をアピールした。