春は日々の寒暖差や、低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わる気圧変動が大きい季節。なんとなく体の不調を感じている人も少なくないのではないだろうか。そういった不調を感じている人の中で、「春から就職に伴い一人暮らしを始めた」「単身赴任で新居に住むようになった」などのケースが該当するようならば、不調の原因は「家」にあるかもしれない。

今回は美容皮膚科が専門の鈴木稚子医師に、シックハウス症候群の症状や原因、予防法などについてうかがった。

  • シックハウス症候群には様々な症状がある

    シックハウス症候群の原因や症状を知ろう!

シックハウス症候群の症状と原因

シックハウス症候群とは、「Sick House」との言葉にあるように、家に由来するさまざまな健康障害の総称を意味する用語だ。具体的な症状には「目がチカチカする」「鼻水」「喉の乾燥」「吐き気」「頭痛」「湿疹」などがある。

シックハウス症候群の代表的な原因は、建設時に利用される接着剤や塗料などに含まれる有機溶剤、木材をシロアリなどから守る防腐剤、またはそれに類する揮発性有機化合物化学物質から発せられる有害なガスと考えられている。

厚生労働省はシックハウス対策として、複数の特定物質の室内濃度の指針値をまとめており、以下はその一例となる。

■ホルムアルデヒド(合板や接着剤などに使用)
■アセトアルデヒド(接着剤や防腐剤などに使用)
■トルエン(塗料などに使用)
■キシレン(塗料や芳香剤などに使用)

厚生労働省によるとホルムアルデヒドは「ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激」が、アセトアルデヒドは「ラットの経気道暴露における鼻腔嗅覚上皮への影響」が認められているという。

これらの物質の多くは揮発性物質で、気温が高くなるにつれてガスの発散量が増加してくる。また、気温とともに湿度が高くなれば、カビやダニなどが発生しやすくなるが、これらの存在による室内の空気汚染もシックハウス症候群を引き起こす。

すなわち、気温と湿度が高くなる5月~6月頃は、建材などに含まれる「化学物質由来のガス」とカビやダニなどによる「室内空気汚染」の双方のリスクが高まることになる。そのため、新たな住環境に住み始めた人がこの時期に身体の不調を訴えてくるケースも少なくないという。

「シックハウス症候群の症状としては、新築の住居などで起こる、主として住宅の空気質に関する問題が原因として発生する体調不良が多いですね。同じ部屋にいてまったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応してしまう人もいるように、人への影響は個人差が大きいと言われています」

シックハウス症候群の予防策は

このシックハウス症候群の対策として簡単に実践できるものに、窓開けと換気があると鈴木医師は解説する。

現代の住居はアルミサッシ窓によって気密性が高められており、化学物質などが蓄積しやすい環境になっている。日中に仕事で部屋を空けているような家庭ならば、窓やドアは当然閉めっぱなしとなり、室内の化学物質濃度が高まりやすくなる恐れがある。このような室内環境を変えるため、窓を開けて風を通し、部屋の中の空気を入れ替えることが重要だという。

「換気扇を回して汚れた空気を排気し、窓を開けて外の空気と部屋の中の空気を入れ替えましょう。換気は湿気の除去にも有効なので、カビ・ダニ対策にもなります。また、太陽光には乾燥と殺菌の効果がありますので、室内により多くの日光が入るようにするとよいでしょう」

部屋をこまめに掃除することも、予防策として効果的。不衛生な環境はダニが繁殖しやすいため、こまめな掃除をすることでダニによる室内環境汚染の防止が可能となる。残業終わりで疲れ果てて帰宅した後に掃除をするのは大変だろうから、まとまった時間がとりやすい土日に部屋をきれいにするなど、自分に合った方法で掃除をするとよいだろう。

リフォーム時のシックハウス症候群の予防・対策

現在持ち家に住んでいる人は、リフォームをする際にしっかりと化学物質対策をとっておくと、シックハウス症候群に悩まされるリスクを低減させることができる。

「リフォーム時は工場で既に生産された建材などを使い、現場での塗装作業や接着作業を減らしてもらうことも重要となってきます。木材用保存剤や防蟻剤、接着剤、塗料などを使用する場合は、できるだけ安全なものを使用してもらいましょう。リフォームを行った部屋に居住するまで期間をおいて十分な換気と通気を行い、引き渡し時には室内環境の状態についても十分な説明をしてもらうことも大切です」

国土交通省も「シックハウス対策パンフレット」を公開し、ホルムアルデヒド対策などをつぶさに紹介している。直近でリフォームを検討している人は、目を通しておいて損はないだろう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力:鈴木稚子(スズキ・ワカコ)

美容皮膚科。

東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学皮膚科学教室および国立大蔵病院皮膚科臨床研究部を経て、2017年に六本木スキンクリニックを開院。

医学博士。日本皮膚科学会正会員。日本抗加齢医学会。日本赤十字医療センター登録医日本医師会スポーツ認定医。日本温泉気候物理医学会 温泉療法医。 日本旅行医学会認定医。トータルアンチエイジング研究会副会長。日本アンチエイジング外科。美容再生研究会登録医。En女医会所属。

En女医会とは
En女医会は150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。