女優の二階堂ふみとアイドルグループ・KAT-TUNの亀梨和也がW主演を務めるフジテレビ系ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』(毎週木曜22:00~)。誉田哲也氏の原作小説をもとに、2010年から13年にかけて竹内結子主演でドラマ・映画版と制作された人気シリーズだが、今後はまだ映像化されていない新作エピソードも展開していくため、ここからが本当の意味でまだ誰も見たことがない『ストロベリーナイト・サーガ』になっていく。

企画を担当するのは、フジテレビの渡辺恒也プロデューサー。これまで『医龍3』(10年)、『救命病棟24時(第5期』(13年)、『HERO(第2期)』(14年)といった大ヒット作の続編をプロデュースしたほか、天海祐希主演のミュージカルドラマ『カエルの王女さま』(12年)、北川景子主演のバイオレンスアクション『探偵の探偵』(15年)、芳根京子主演の超ハイテンションコメディー『海月姫』(18年)など、硬軟問わない様々なジャンルの意欲作を手掛けてきた。

そんな渡辺プロデューサーに、テレビドラマの作り手に精通する「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏が、今作にかける思いや今後の展開などを聞いた――。

  • 『ストロベリーナイト・サーガ』主演の二階堂ふみ

    『ストロベリーナイト・サーガ』主演の二階堂ふみ (C)フジテレビ

■姫川班の関係性が想像以上に変わった

――竹内結子さんが主演した前作も記憶に新しいですが、なぜ『ストロベリーナイト』をまた制作することになったのか、その経緯を教えてください。

木曜10時の枠で次何をやろうかなというところから入って、女性が主人公の刑事ものがいいなという思いがあったんです。新旧含めていろいろ原作を読んだり、作品を見たりして考えていたんですけど、前作の『ストロベリーナイト』は映画版(13年公開)の後に原作小説(『姫川玲子シリーズ』)で続きが3巻出ていて、その中で描かれていた姫川と菊田、そして姫川班全体の関係性というのが、これまでとは想像つかない感じで変わってきているんですね。だから、その変化まで含めてもう一度シリーズとして描きたいなと思いました。

それでせっかくやるのであれば、途中からのエピソードでこの姫川と菊田でやりますというのは違うのかなという風に思ったので、2人の出会いの事件「ストロベリーナイト」のエピソードからやろうということになりました。そうするとやっぱり前回シリーズでやったものもあれば、そうじゃないものも入ってくるんですけど、今『姫川玲子シリーズ』の原作の中で一番いいものというか、傑作選みたいなシリーズにしていこうということで、『ストロベリーナイト・サーガ』(サーガ=英雄伝)というタイトルにしました。

――連ドラと映画版以降の原作で描かれた“姫川と菊田の関係性”を、今回の『サーガ』では特に描きたいということでしょうか?

そうですね。映画化された「インビジブルレイン」のその先の原作では、彼女たちのプライベートもそうだし、環境も大きく変わるんですね。だからその辺を描けたらと思いました。前作の映像化では最終回のエピソードだった「ソウルケイジ」が今回2話・3話となっているのは、2人の関係性をエピソードに沿って描いている小説の時系列を持ってきた方がいいと思ったからなんです。全て小説の時系列というわけではないんですけど、原作では長編が4つあってその長編は原作通りの流れにしています。関係性の流れは原作の中でも結構大事にされている部分だったので、そこはなるべく変えずに行こうかなと思いました。

――今作は、“リメイク”ではなく“再ドラマ化”という言い方をしているのが、新鮮だなと思いました。

リメイクって言うと、ドラマを元にしたという意味合いになるような気がして、だからあくまでも、“原作を元に新たにドラマ化する”という意味で、“再ドラマ化”にしました。

――第1話だった「ストロベリーナイト」のエピソードは、前作のドラマ版をかなり踏襲している印象でした。なので、前作と同じエピソードや展開でも、人が変わるとこういう風に見え方が変わるんだという面白さがありました。

原作はすごくしっかり構成が組み込まれていて、どんでん返しまで含めて緻密に作られているものなので、僕らは前のドラマ版から変えずに踏襲して作っていこうというよりは、この原作に対して、今のキャストとスタッフで一番ベストなものを作るとしたらこうなったという感じです。だから、結果比べてみたら同じ部分もあるし、違う部分も出てくるし…ということで作っています。

■僕らがやってベストなものを

――渡辺さんはこれまでも、『医龍』『HERO』『救命病棟24時』など、フジテレビを代表する大ヒット作の続編を担当されていて、“続編請負人”なのかなって思っていたのですが(笑)、そういう理由でこの作品を担当したということもあるんでしょうか?

会社としてはそういう部分もあるのかもしれませんが(笑)。僕自身はこれまで続編を作ってきたからという理由で作品を探していたわけではないです。

――これまで続編を作られてきた経験の中で気を付けていることや信条などはありますか?

今回は『HERO』や『医龍』と違って、同じ世界観や同じキャストではない全く違うものを作っているので、これまで続編を作ってきた経験は当てはまらないんですよね。続編をやるときは、世界観やキャラクターを大事にしながらも、せっかく続編をやるのであれば前作ではできなかったことを時代が変わったからこそできるみたいな要素を盛り込んだり、キャラクターが成長した先にこういうドラマが起きるよ、という作り方をしていました。その中で一番気を付けていたのは、このキャラクターは絶対こういうことやらないとか、前作を見ていたファンに失礼にならないように、嫌われないようにしなきゃというのはありました。

だけど、今回はそれを考えていくと何もできなくなってしまうので、こういうことを言うと怒られますけど(笑)、前のシリーズを見ていた人たちが怒っても仕方がないと思って作っています。ただ、こういう形の『ストロベリーナイト』シリーズがあってもいいなって、どこかで思ってもらいたい。舞台とか、別キャストで上演される同じ作品ってあるじゃないですか。脚本も全く別の方が書いていたりして。それに近いですね。前回見た人がもう一度足を運んで観に来て、「ああ、この作品ってやっぱり面白いな」って思ってもらう、また3カ月間観ることができるんだなって思ってもらうことが、今回やっている意味だと思っています。だから、前の作品を言い訳にして手を抜くことはしないということが今回一番心がけたことですね。それが結果、前の作品と違うと嫌う人がいても、同じ原作で再ドラマ化をすると決めた以上は、僕らがやってベストなものをやろうと思って作っています。

――前作をいい意味で意識しないということなんですね。

「前作はこうしているから、今回はこうしよう」みたいなことは、1つもないですね。

―― 一方で、今回のメインディレクターは前作でも演出を務めていた石川淳一監督(前作のセカンドディレクター)です。前作のノウハウなど生かされている部分もあるのではないでしょうか?

石川監督が前作で関わったエピソードは、今回担当しないことになっています。石川監督も前作を超えなきゃいけないみたいな気負いはあったと思います。ただ、監督が言ってたんですが、あの時関わって作っていたものは、自分たちがベストと思えるものをやったんだから、それを違う形でやって超えましょうってなっても超えられるわけがないと。だから超えるっていうことを目的としてやるのではなくて、今回一番ベストなものをやっていくということですね。

――このシリーズはグロテスクな表現が特徴だと思っています。前作はその表現をアニメーションにしたり加工していましたが、今回は血が噴き出るシーンが直接的で衝撃的でした。

その「ストロベリーナイト」のエピソードの血の描写は、石川監督が一番大事にしたかった部分なんです。犯人が灰色の世界の中で唯一美しいと感じたのが飛び散る血で、その血に生きる実感を得るということから事件が起こるということを大事にしたかった。だから、その血が噴き出すという部分に関しては、犯人が感じた世界をそのままに撮りたいというのがあってあの表現になりました。

描写のグロさで攻めるのはやめましょうって話はしたんですが、「ストロベリーナイト」のエピソードの様に、犯人の境遇だったり、犯罪に向かっていくまでの常人には理解できない経緯とか、キャラクターの表現として攻めた描写は手を抜かずにやっていこうとは思っているので。虐待を扱ったエピソードなども出てくるんですが、現実社会の目を背けてはいけない部分をちゃんと描くことによって、それが犯罪に転がってはいけないよというメッセージが伝わるといいなという風に思って作っています。