時代によって言葉の受け止め方は変わります。文法的には丁寧語になっているのに敬語だと思ってもらえない、中にはそんな言葉もあります。「いってらっしゃい」もそのひとつ。

  • 「いってらっしゃい」は上司に使える敬語?(写真:マイナビニュース)

    「いってらっしゃい」は上司に使える敬語?

今回は、この挨拶と敬語について解説します。

いってらっしゃいを使う場面

いってらっしゃい、は人を見送るときに使う挨拶です。「行って」+「いらっしゃい」という言葉がひとまとまりになっており、「無事に行って、帰ってきて」という意味が込められています。

いってらっしゃいは敬語

実は、いってらっしゃい、はすでに敬語表現になっているのですが(乱暴にいいたい場合は「行って来な!」になります)、子どもの見送りといった日常で使われ過ぎたためか、あらたまった場面では違和感が生じるようになってしまいました。

いってらっしゃいをビジネスで使う

ビジネスシーンで使う場合は、いってらっしゃい、だけでなく、「いってらっしゃいませ」と丁寧さを添えましょう。これなら、客先に向かう先輩に口頭で伝える場合にも、海外出張する上司にメールする場合にも使えます。

さらに丁寧にしたい場合は、「お気をつけていってらっしゃいませ」とするのが良いでしょう。

ただいまをビジネスシーンで使う

一般的に、会社に帰ってきた時には「ただいま」といいます。ただいま、は「ただいま帰りました」や「ただいま戻りました」の略になります。

ビジネスシーンでは、ただいま、と略さずに「ただいま戻りました」などいうと良いでしょう。

帰ってきた人にいう言葉

一般的に帰ってきた人に対しては、「おかえりなさい」といいます。より丁寧な表現だと「おかえりなさいませ」となります。

会社では、おかえりなさい、だけではカジュアルな響きが強いこともあります。「おかえりいなさい、お疲れさまでした」など、いい添えるのが良いでしょう。

そもそもなぜ敬語を使うのか

いってらっしゃい、に限らず挨拶はビジネスマナーの基本だといわれています。なぜ挨拶がそんなに大事なのでしょうか? なぜ私たちは正しい挨拶をしなければ怒られるのでしょうか?

それは、挨拶が最も身近な「儀礼」だからです。どんな儀礼かというと、地位や身分、年齢、身内/他人といったお互いの社会関係を確認するためのものです。

挨拶によって「これまで通り、あなたとはこういう間柄でいましょうね」というメッセージを交わすことで、私たちは人間関係を円滑にしているのです。相手へみだりに近づく意図がないことを示して、衝突を避けているというわけです。

分かりやすい例として、アフリカのマサイ族を挙げましょう。彼らの挨拶は、槍を地面に突き刺すことです。相手に穂先を向けることができないようにすることで、互いに「敵ではない」という関係を確認しているのです。

すると「目上の人にカジュアルな挨拶をする」ことは、何をしていることになるでしょうか。明らかに関係を変えようとしていますよね。

自分を上げるか、あるいは相手を下げるか、どちらにせよ、大げさにいえば宣戦布告です。親しみを込めたつもりで先輩に挨拶をしても、「アンタのことは軽く見てるぜ」「そのうちお前を蹴落としてやる」と受け止められてしまう可能性が高いのです。

喧嘩をふっかけるつもりでないなら、敬語を使いこなしましょう。

【例文】
「ご出張、いってらっしゃいませ」
「雨が近づいているようですので、どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」