昨シーズンまでのプレミアリーグから今シーズン、新たに生まれ変わった新生Vリーグ「バレーボール2018-19 V.LEAGUE」。そのDIVISION1の初代女王には、名門・久光製薬スプリングスが輝いた。

昨シーズンからの「V2」を飾ったスプリングスだが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかったという。今回はスプリングスの主力として活躍した岩坂名奈、石井優希、新鍋理沙の3選手に話を伺い、優勝を決めた試合や来年に迫った「東京2020」への想いを語ってもらった。

「スプリングスらしさ」が勝利のカギに

レギュラーラウンドを18勝2敗という驚異の勝率で終え、ファイナル8も全勝で首位通過。そして、4月6日に行われた東レアローズとのファイナル第1戦もストレートで勝利を収めた。無類の強さを誇ったスプリングスがこのまま順調に栄冠を手にするかに見えたが、13日のファイナル第2戦は2-3で苦杯を喫した。

圧倒的優位な立場からの逆王手。窮地に立たされた形のスプリングスだったが、続けて行われたゴールデンセットを25-18で奪い、見事に重圧をはねのけて賜杯を手にした。

スプリングスのキャプテン・岩坂選手は、最終戦を「体力的にも、精神的にも苦しい試合だった」と振り返る。「(対戦相手の)東レさんの勢いはすごかったし、取るべきところで点が取れなかった。『最後の最後までそう簡単にはいかないんだ』という思いがありました。でも、『ここまで来て、ここで負けるわけにはいかない』という思いもあった」と、体力、気力ともに厳しい戦いだったと明かす。

  • 久光製薬スプリングスのキャプテン・岩坂名奈選手

    久光製薬スプリングスのキャプテン・岩坂名奈選手

それは石井選手、新鍋選手も同様に感じていたが、ゴールデンセット前の15分間で気持ちを整え、最後まで気力をつないだ。

「東レさんの勢いは感じていて、勝てて当たり前ではなかったし、内容もあまりよくなかった。でも、最後までいつも通りの久光でいられたことが勝敗を分けたと思う」と石井選手が言えば、「東レのペースで試合が進んでいたし、気持ちも体力もしんどかった。でも、控え室に戻ったときに誰も気持ちを切らせていなくて、ポジティブな気持ちでファイナルセットを迎えられた」(新鍋)。苦しい状況でも、前を向いて自然体でいられたことが勝利のカギになったと語った。

重圧は常にある

新生Vリーグになったとはいえ、今シーズンだけが何か特別だったわけではない。これまで同様、選手たちは相手だけではなく、己の中の大きな重圧とも闘っていた。

昨シーズンのMVPである石井選手は「『今年が特別』という何かはなかったです。優勝していてもしていなくても、シーズンごとに苦しんでいて、結果を残さないといけないプレッシャーと戦っていた。意地ですね」。

  • 久光製薬スプリングスのキャプテン・石井優希選手

    久光製薬スプリングスの石井優希選手

「ファイナル3が決まってからの期間に、気持ちを選手で確認し合って練習に取り組めたのがよかったかな。みんな不安もあったろうし、プレッシャーもあったけど、危機感を持ちながら集中して練習できていましたね」(新鍋)

その気持ちをシーズン中に常に継続し、後半になるにつれボルテージが上がったという。

「レギュラーラウンドから一人ひとりが『勝ちたい』という思いで毎日過ごしていた。(試合に)出ている・出てないに関係なく、自分の役割やすべきことをそれぞれ考えてくれたからこそ(優勝まで)できた。終盤になるほど、ギアが上がって、優勝に近づいていったんだなと終わってみて感じます」(岩坂)