あいの風とやま鉄道は6日、観光列車「一万三千尺物語」の出発式を実施した。同列車は土日祝日を中心に、富山駅発着の1日2本を運行。1号(富山湾鮨コース)は富山~泊間を往復し、2号(懐石料理コース)は富山駅から高岡駅・黒部駅で折り返すルートとなる。

  • あいの風とやま鉄道の観光列車「一万三千尺物語」がデビュー(写真:マイナビニュース)

    あいの風とやま鉄道の観光列車「一万三千尺物語」がデビュー

観光列車「一万三千尺物語」は413系を改造し、標高3,000m級の山々が連なる立山連峰、深さ約1,000mに至る富山湾を有する「富山の四季と高低差」を味わえるダイニング列車に。「一万三千尺」というネーミングは、立山連峰と富山湾の高低差約4,000mを尺で表現するとともに、日本アルプスを歌った「アルプス一万尺」ともかけているという。

外観は立山連峰の美しい稜線と富山湾を車体全体で表現し、朝日によってオレンジ色に色づく様子をイメージしたデザインを採用。3両編成の1・3号車を客室車両、2号車を厨房車両として改造し、国鉄時代から活躍してきた413系の歴史的情緒と、富山独特の自然的風雅を調和させた内装デザインとしている。

天井やテーブルなどに富山県産「ひみ里山杉」を使用し、木と調和した落ち着いた空間とする一方、富山湾を意識した青をアクセントに取り入れた。客室車両の1・3号車では、山側に立山連峰を一望できる大型窓を設置。厨房車両の2号車では、地酒などのドリンク提供やお土産販売に対応したカウンターを設け、快適な列車の旅をサポートする。

出発式は今年3月に高架化された富山駅の3番線ホームで実施。あいの風とやま鉄道代表取締役社長、日吉敏幸氏らの挨拶に続き、出席者と乗客代表によるテープカットが行われた。富山市で開催中の全日本チンドンコンクールから「チンドン まいどはや」が出発式に参加し、チンドン演奏を行いながらホームを練り歩く場面も。出発合図は富山駅長とあいの風とやま鉄道ファンクラブの会員代表2名により行われ、11時0分に発車した。

  • 出発式ではテープカットに続いてチンドン演奏が行われ、各車両の前を練り歩いた

  • 富山駅長とファンクラブ会員代表による出発合図で発車。高岡駅へ運行される2号(懐石料理コース)の車内で万葉集のPRも予定されている

「一万三千尺物語」の車内では料理・ドリンクの提供に加え、観光ガイドによる沿線の案内も行われる。日吉社長によれば、高岡駅へ運行される2号(懐石料理コース)の車内において、高岡市が万葉集の代表的歌人である大伴家持のゆかりの地であることにちなみ、万葉歌の朗唱などのPRも行う予定だという。万葉集は新元号「令和」の出典元となったことでも注目を集めており、「新元号にも触れつつ、越中万葉を紹介することで高岡方面の盛り上がりを支援できるのではないか」と日吉社長は話す。

現時点の乗車率や予約状況に関する説明もあり、運行初日の4月6日は1・2号ともに乗車率8割程度、翌7日は7割強とされ、両日とも利用者の約8割が県外からだという。「4~6月の予約状況はいまのところ約50%。4月からインターネット予約が始まり、連休(ゴールデンウィーク)もあるので乗車率は伸びると期待しています。この3カ月間の予約状況を見ても、県外のお客様が約75%となっています」と日吉社長。「我々としては、採算が取れる水準を65%以上と考えており、めざせ7割といったところで進めたい」「いずれにしても、県内外の多くの皆さんにご利用いただけますと幸いです」とコメントした。

観光列車「一万三千尺物語」は土日祝日を中心に、ゴールデンウィーク期間は5月1日を除き運行予定。お盆期間の8月14・15日も運行日に加えられ、年末年始や冬期間(1月下旬から2月上旬まで)を除く年間125日程度の運行を予定しているとのこと。料金は1・2号ともに通常プランが1人1万2,800円、お土産付プランが1人1万4,800円(両プランとも大人・こども同額)。インターネットまたは電話にて予約を受け付けている。

1号(富山湾鮨コース)は富山駅を11時0分に発車した後、新潟県境近くの泊駅を11時51分着・12時6分発で折り返し、富山駅に13時7分に到着。車内では握りたての富山湾鮨などを提供する。2号(懐石料理コース)は富山駅を15時28分に発車した後、高岡駅15時48分着・16時4分発、黒部駅17時7分着・17時22分発で折り返し、富山駅に17時54分に到着。富山湾の新鮮な魚介、美しい水と肥沃な大地によって育まれた野菜・山菜、地元産の米を取り入れた和風懐石料理を車内で提供する。

  • 413系を改造した観光列車「一万三千尺物語」の外観

  • 高架化された富山駅の在来線ホーム。あいの風とやま鉄道をはじめ、JR高山本線の列車も発着する