少子高齢化が進む中、「高齢者の就業促進」のためにさまざまな制度が検討・導入されています。今回は、2013年に始まった再雇用制度と勤務延長制度の違いについて解説していきます。

  • 再雇用と勤務延長との違いを理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    再雇用と勤務延長との違いを理解していますか?

一般的な継続雇用が「再雇用」

再雇用制度とは「定年退職後に、もういちど雇用契約を結ぶ」制度です。もっとも一般的なものは、正社員を60歳で定年として、その後は65歳まで1年契約の有期雇用を更新していくやり方です。60歳になったらいったん退職の手続きをとって、別の身分で再雇用するのです。

2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法により、事業者はなんらかのかたちで65歳までの雇用を確保することが求められるようになりました。その手段の1つが再雇用制度です。

なお、この改正は、定年の65歳への引上げを義務付けるものではありません。

2017年に厚労省が公表した『高年齢者の雇用状況』によると、再雇用のような「継続雇用制度」を導入した企業は80.3%に上ります。ほとんどの企業が採用している制度だといえます。

再雇用の場合は、正社員時と異なる仕事をすることもあります。ただし、まったく別個の職種にすることは法律上許されていません。

賃金や年収

労働契約法は「有期雇用社員と正社員に不合理な待遇差をつけてはならない」としています。しかし再雇用制度の場合は、仕事の内容が正社員と同じでも、老齢厚生年金が支払われることを考慮して、正社員時の8割程度に年収を設定することは合法とされています。

また、「仕事の内容や責任が大きく変わる場合は、正社員時の3割程度の年収であっても違法とはいえない」という判例があります。いずれにせよ、給与水準が下がることは避けられないでしょう。

再雇用制度を実施する場合は、まず就業規則に記載をして、労働基準監督署に届け出ねばなりません。その後、対象社員に面談・文書などで雇用条件を通知し、再雇用を受ける意思を確認する必要があります。

再雇用の際は、フルタイムの有期雇用社員(嘱託社員)になることが一般的ですが、パートタイムの雇用形態にすることも可能です。

ちなみに、こうした再雇用制度は定年時以外でも、結婚・出産・育児・介護などの事情による退職者や、転職・起業・留学などを経た人材を呼び戻す制度として設ける企業が増えています。

正社員を続ける「勤務延長」

勤務延長制度とは「定年が過ぎても正社員のまま仕事を続けること」で、実質的な定年の延長です。今までの勤務の延長ですから、役職や仕事内容、賃金水準などは大きく変わりません。

高度な専門性や熟練技能が必要な仕事で、後任を得ることが難しい場合を想定して設けられた制度です。再雇用と違って、60歳定年時に退職金は支払われず、勤務延長後の退職時に支払われることとなります。