――弓削さんがふたたび吾郎を演じるにあたって、どのような部分に注意されましたか?

昔の吾郎の芝居に、あえて寄せようとしないことですね。最初に吾郎を演じたときの気持ちを思い出して、声が小さいことであるとか、周りに対する態度とか、自然に同じ取り組みをしていけばいいかなと思ったんです。なにしろ17年も経っていますから、見た目には昔のような若さがありません。いまの自分が演じることによって、自然と年齢を経た吾郎に見えたらいいのかなと考えました。でも、心は齢を取っているわけではないですからね。昔の気の荒い性格が、年齢と共に丸くなってきているとか、そういう変化はあるかもしれないけれど、基本的な考え方などは昔のままで行こうと。

――仮面ライダー王蛇に変身する凶悪犯・浅倉威(演:萩野崇)と行動を共にすることの多い今回の弓削さんですが、萩野さんとひさびさに共演された印象はいかがですか。

ハギさん(萩野のニックネーム)はもともとプライベートでもお世話になっていて、みんなの中ではいちばん連絡を取り合っている人なんです。芝居もだんぜん、やりやすかったですね(笑)。王蛇のアクションをされている岡元次郎さんにも、当時からとてもお世話になっていましたから、撮影が始まって間もないころ、僕とハギさんと次郎さんの3人でご飯を食べに行ったんです。久しぶりにワイワイやりながら、こんどの撮影ではこういう風な芝居をしていこうとか、熱く話し合いました。役者として経験を重ねていくうちに、どんどんこういう話し合いの機会がなくなっていくところ、久しぶりにいい時間を過ごさせてもらったなと感じました。ハギさんや次郎さんと、僕とのそういった関係性が、映像の中に表れていたらいいですね。

――今回の吾郎は、以前の吾郎とは少し違和感のある行動を取っている、とうかがいました。北岡のことを憎み、執拗に攻撃していた憎い敵である浅倉に対する吾郎の態度も、昔とは違っているとか……。そんな中で、弓削さんが"当時の吾郎"らしさを感じるようなシーンがあったら教えてください。

吾郎が浅倉にある「料理」を提供するんですけれど、それは『龍騎』のテレビシリーズで吾郎と真司の2人に深く関わりのあるメニューなんです。台本には「豪勢な料理」としか書いていませんでしたが、実際にあの料理が出てきてうれしかったですよ。今回の監督をされている柴崎(貴行※柴崎監督の崎は立つ崎が正式表記)さんは当時セカンド助監督で、現場を駆けまわっていた方。同じく当時助監督だった鈴村(展弘)監督と共に『龍騎』への愛情がとても強い人ですから、ところどころに柴崎さんにしか撮ることのできない"画"がありました。

――今回のスピンオフドラマの中で、特にお気に入りのセリフ、シーンを教えてください。

浅倉が吾郎に向かって、北岡先生のことについて語った"あるセリフ"がもっとも印象に残っています。これぞ、まさに浅倉という人間を体現するようなセリフなので、ぜひ作品をご覧になって確かめてほしいです。また、今回は吾郎がこれまで一度も出したことのない"大きな声"を出すシーンがあります。今までずっと小さな声でしか話していなかったので、どこかで声を荒げる演技を意図的に入れたいと思っていたのですが、作品中でもっとも吾郎の感情が爆発する場面でそれを入れてみることにしました。

――北岡弁護士の秘書業務のほか、食事を作るなど身の周りの世話をしたり、ボディーガードのような働きをしたり、まさに北岡のため身を投げうって尽くしていた由良吾郎という人物の魅力を、弓削さんご自身はどのように考えていますか?

吾郎に限らず「仮面ライダー」シリーズは、役を演じる俳優を見ながら脚本を書き進めていくスタイルなんですね。吾郎のキャラクターも、初期の段階から演じていくうちに、どんどん膨れあがっていった感じです。とにかく吾郎は北岡先生のために尽くして尽くして、忠誠心がもう"愛"にまで高まっていくような……。そんな風に芝居で盛り上がっていった部分を、脚本でも汲んでくださって、北岡先生と吾郎の関係性がだんだんと出来上がっていったんです。先生以外の人間はすべて敵だと思って身構えていた吾郎ですが、彼にも人間らしいあたたかい気持ちがあり、真司とは友情めいたものを感じている、という描写も作られましたね。いま思い返しても、吾郎はとてもいいキャラクターだと思います。

――改めて、今回のスピンオフドラマにおける吾郎の見どころを教えてください。

北岡先生がいないという状況の中で描かれる吾郎の寂しさや、いないからこそよけいに北岡先生への思いが強くなっている、という部分ですね。先生と吾郎は一緒でなければ……というファンの方たちの声が聞こえてきそうですが、今回は吾郎の"喪失感"を描くことによって、北岡先生の存在が浮かび上がってきたらいいなと考えています。今回、17年ぶりに吾郎を演じましたが、「仮面ライダー」の現場には特有の"緊張感"がありますから、何年もブランクが開いていても自然と昔の役柄に戻ることができます。おそらく、キャストのみんながそのように感じているんじゃないでしょうか。

ビデオパス+東映特撮ファンクラブ共同企画プレミアムドラマ『仮面ライダージオウ スピンオフ RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』は、第1話が3月31日0時から、第2話は4月7日0時、第3話は4月14日0時から、ビデオパスにて独占配信される。

(C)2019「RIDER TIME龍騎」製作委員会
(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映