■憤りから生まれた「actor(s)」

――作詞も初挑戦ですか?

作詞は、以前にもラジオ番組のテーマ曲でやらせていただいたことがありました。そもそもアーティストデビューのお話をいただいた時から、「今回は作詞をがんばりたい」って話していたんです。30歳になったことで、もっと自分の考えを発信したい欲が出てきて。

――それだけ表現したいことが。

今までは、キャラじゃないなって思いがあって、「頑張ってます!」とか、あんまり言えなかったんですよ。でも、それで「寺島惇太は頑張ってないぞ」と思われることもあって……。誤解です(笑)。俺だって本当は真剣だぞっていうのを、どこかで発信したいとは思っていたんです。でも、そういうのをラジオとかで言葉にしたらめっちゃダサいじゃないですか(笑)。

――確かに、受け取り方によってはそれすらネタに思われてしまうかも。

アーティスト活動の中でだったら、そういう気持ちも表現できると思ったんです。ストレートになりすぎず、ニュアンスの中で表現できるだろうし。だから、作詞は今回頑張りたかったポイントですね。

――今回、ご自身で作詞された「actor(s)」は、タイトルの通り役者がテーマ?

そうですね。曲をつくる段階では、失恋ソングになるかなと思っていたんですけど、せっかく自分が作るなら、やっぱり声優のことを歌いたいなと思って、今の形になりました。

――しっとりした曲調とあいまって、傷ついた人を癒すような、希望が垣間見える歌詞ですよね。

この曲は、実は結構「憤り」が込められているんですよ。

――憤り!?

声優って、ひと昔前じゃ考えられなかったくらい活躍の場が広がっているじゃないですか。ライブで歌って踊るのはもちろんだし、食レポや料理番組にも出る機会があって、モデルさんやお笑い芸人さんと同じような仕事をやらせてもらって。今や小中学生の憧れる職業トップテンにも入っているくらい、華やかな仕事に見えていると思うんですよね。

――確かに、華々しい活躍をされている方は多いですね。

でも、華やかだからといって決してみんな順風満帆なわけじゃないんです。みんな努力しているし、多かれ少なかれ辛い経験もしている。なのに、本業から離れた活動だけを目にした人からは、「ちやほやされて天狗になってるぞ」って思われることも多い。特に実力が伴っていない新人のうちに、本業から離れたことをしていると、そういう目で見てくる人もいるんですよ。みんな、自分がまだまだだって自覚しながら色々な仕事をしているのに。そういう状況に、ちょっと「憤り」を感じてつくった曲なんです。

――なるほど。「借り物だって誇れば証なのさ」というフレーズに、特にその思いを感じます。

演じているキャラクターは「借り物」であって、自分のものじゃないですからね。「借り物」だって意識を忘れて、私物化しちゃう役者も良くないけど……。1番の「借り物だった事すら 忘れたのさ」ってフレーズは、そういう人を歌った部分です。でも、逆に「自分の人気はどうせキャラクターの借り物でしかない」って、役者が自分を卑下するのも違うと思うんです。

――確かに、そうですね。

そのキャラクターが輝くのは、演じている声優の力も少なからずあるじゃないですか。声優は、キャラクターや作品の力で押し上げていただいているって意識を忘れちゃいけないけど、自分を誇れなくなってしまうのも良くない。

――委縮してしまうのも、考えものですよね。

例えばライブで、ファンサービスを求められる場面で「僕、役者として半人前なんで……」って何もしないのはダメじゃないですか(笑)。そこで全然知らない誰かに「アイドル気取りで調子に乗ってる」と思われようが、目の前に応援してくれている人がいるなら、やるしかない。悩んでいる新人の声優さんがいたら、もっと自分を誇ってもいいよって伝えたい曲なんです。でも、それをストレートに読み取られ過ぎないように(笑)、意識して作詞しました。

■「RPG」の歌詞は過去の恋愛がベース

――それは寺島さん流の、役者としての「腹のくくり方」と言えるかもしれませんね。「RPG」も作詞家の方と歌詞を共作されています。これはタイトルの通りゲームがモチーフになっていますが。

これは曲をつくる前から、軽い失恋ソングにしようと思っていたんですよ。「actor(s)」が失恋ソングにならなかった分。クリープハイプさんの「お引っ越し」っていう曲が好きで、あんな失恋ソングをつくりたいなって思ったんです。

――軽やかな失恋ソング。

それで、学生時代の失恋を思い出してみました。当時、付き合っていた彼女と二人で進めていたゲームがあったんですけど、やりかけのまま別れちゃって。そのゲームを一人で続けてみたら、めちゃくちゃしんどかったんです(笑)。勝手に進めちゃっていいのかなって。二人用のデータで始めたものだったし……。その時のことを思い出しながらつくりました。

――「actor(s)」、「RPG」共に、パーソナルな部分が見えてくる歌詞になっているんですね。今後のアーティスト活動ですが、引き続き作詞・作曲は続けていきたいですか?

そうですね。アイデアを出しながらの曲づくりがすごく楽しかったので、もっと自分で作曲できるようになりたいです。最近、声優さんで作曲する方も多いじゃないですか。豊永(利行)さんとか、事務所の先輩の山中(真尋)さんとか、そういった方たちに機材の使い方を教わりたいですね。僕、独学だと、とことんサボろうとしちゃうタイプなんです(笑)。高校の時にやっていたギターだって、本当は最初に基本コードをマスターしないといけないのに、簡単なコードで弾ける曲だけでずっとバンドをやっていましたからね。「2年もやってて、なんでこのコードできないの?」って周りにびっくりされました……。

――では、引き続き寺島さんの作曲を楽しみにしていいと!

この6曲の中でやれていない、好きなテイストもあって。アイデアだけはたくさん出てくるので、ぜひまたやりたいです。それから、もちろんライブも! 弾き語りもできるように練習したいですね。昔持っていたギターは捨てちゃったので、まずはギターを買い直すところから始めます(笑)。

●寺島惇太1stミニアルバム『29+1 -MISo-』
発売日:3月27日
初回限定盤(CD+DVD)
価格:2,500円(税抜)
通常盤(CD)
価格:2,000円(税抜)
・CD
1.道標
2.re-Play!
3.幻日メモリー
4.actor(s)
5.RPG
6.Someday
DVD
「道標」ミュージックビデオ
ミュージックビデオ撮影オフショット映像 収録

  • 初回限定盤

  • 通常盤