NHKが初めて完全オリジナルのゾンビドラマに挑んだ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(総合・毎週土曜23:30~23:59 )が、3月9日放送の第8話で最終回を迎える。

大量のゾンビから逃れた平成元年生まれの同級生・みずほ(石橋菜津美)、柚木(土村芳)、美佐江(瀧内公美)の3人は、柚木と美佐江がゾンビに噛まれながらもシェアハウスに避難。以前とは少し違う日常の中で、互いに言いたい放題、思い思いに語り始める。

『ゾンみつ』で自由奔放なスナック店員・柚木を演じる土村。以前の取材では「楽しい試練として受け止めています」と意欲を燃やしていたが、最終回を前に何を思うのか。撮影秘話を探った。

  • 土村芳

    女優の土村芳 撮影:宮田浩史

――番組公式サイトの掲示板では、視聴者の声がたくさん書き込まれています。ハッピーエンドを望む声もありましたが、どのような最終回になるのか気になります!

本当に最後の最後まで分かりません……こんなに予想できないドラマも面白いと思います(笑)。

――7話の終盤ではゾンビに噛まれてしまいましたね……。

そうですね。徐々にゾンビになっていって……。最終回では、みずほ(石橋菜津美)、美佐江(瀧内公美)との最後の会話が描かれます。第1話と同じような場面……でも、以前とは状況が大きく変わっています。

――そして、柚木が核心をつく発言にはハッとさせられます(笑)。

6話で、誰かがゾンビになるよう勧めるシーンがありました(笑)。台本の時点では、少しコメディ要素の強いシーンを想像していたんです。でも、実際に撮影を進めていって、神田くん(渡辺大知)や小池先輩(大東駿介)との別れのシーンを撮り終えると、みずほと美佐江は言葉が出なくなって。それほど2人との別れが大きかったんですよね。なので、その時の気持ちを踏まえて、みんなで相談しながらセリフを変えたりして、あのシーンが完成しました。私は撮影中、カットがかかる度に外に逃げていました(笑)。

  • 土村芳

    『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』最終回より (C)NHK

――なぜですか?

さすがの柚木でも、あの空気には飲まれそうになるので。そこまで空気が読めない子でもないんです(笑)。ただ、その空気に飲まれすぎてしまうと、あのセリフは言えなくなってしまう。そうならないように、ちょっとだけ距離を置いたんです。2人の持っている引力はすごいので。それから柚木は、正ちゃん(山口祥行)とも別れてしまって……。

――『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』の9話でも父親との別れがありました。別れを惜しむ姿も対照的でした。

確かにそうですね(笑)。本当だったら夢ちゃん(根本真陽)の方が泣きたいはずなのに……柚木の方が子どもで。でも、正ちゃんのように「愛してる!」なんて言われること、そんなにないですよね? 恋人に対して、あれだけストレートに気持ちを伝えられるのはすごくステキなことだと感じました。

  • 石橋菜津美

――同感です! 『3年A組』と『ゾンみつ』では、「死」を目前にした人間の変化が描かれています。両作品を通して、土村さんご自身が見つめ直したことはありますか?

こういうドラマの中ではタイムリミットだったり、極限の環境によって登場人物が変化していきますが、私個人としてはこれまでの道徳観が揺らぐ瞬間でもあったというか。『3年A組』で柊一颯(菅田将暉)が企んだことは犯罪ではあるんですが、伝えられるメッセージに心が動かされる自分がいて。何が正しいのかすごく考えさせられますし、一颯の「グッ、クルッ、パッ」からも「自分が答えを出すまでの過程」がすごく大切なことなんだと感じます。

『ゾンみつ』からも、「人生一度きり」というのをすごく感じます。こうしてお芝居をやらせていただいていますが、日常で感じる不安や悩みは「好きでやっている仕事だからこそ生まれたもの」。そう考えると、自分が成長する上では必要な過程でもある。そうやって、1つ1つ答えを出していって、いろいろな作品と出会えたらいいなと思います。

  • 渡辺大知、土村芳、石橋菜津美、瀧内公美、大東駿介

    左から渡辺大知、土村芳、石橋菜津美、瀧内公美、大東駿介(2019年1月の試写会より)

■プロフィール
土村芳(つちむら・かほ)
1990年12月11日生まれ。岩手県出身。子ども劇団に所属後、高校在学時に新体操でインタ ーハイに出場。京都造形芸術大学の映画学科俳優コースに進学し、数々の舞台作品や自主 制作映画に出演した。2013年3月に大学を卒業後、ヒラタオフィスに所属。これまで、 『カミハテ商店』(12)、『弥勒』(13)、『劇場霊』(15)、『何者』(16)、『去年の冬、きみと別れ』(18)などの映画、『コウ ノドリ』(TBS系・15/17年)、『べっぴんさん』(NHK・16~17年)、『恋がヘタでも生きて ます』(日本テレビ系・17年)、『GO! GO! フィルムタウン』(NHK・17年)、『女子的生 活』(NHK・18年)などのドラマに出演。『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)が2019年3月9日、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)が2019年3月10日に最終回を迎える。出演映画『空母いぶき』が5月24日に公開予定。