今回のテーマは、乃木坂46の曲のタイトルにもなった「インフルエンサー」です。どういう意味か何となくは知っているけど……、という人も多いのではないでしょうか。「インフルエンサー」がどういう意味なのか、ビジネスシーンではどのように使われているのか、さっそく見ていきましょう。

  • インフルエンサーの意味を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    インフルエンサーの使い方を理解していますか?

インフルエンサーの意味

インフルエンサーとは、「影響」「影響力」「感化」といった意味を持つ英語【influence】と、その動作を行っている人を指す接尾辞【-er】から成るカタカナ用語です。世の中に何らかの強い影響を与える人のことを指す言葉で、近年では、特に、人々の購買行動に対して大きな影響を与える人物を指すことが多くなりました。

インフルエンサーの誕生

1990年代後半、一般家庭にパソコンが普及し始めると、2000年頃にはインターネットの利用者が急増。これに伴い、人々は、あらゆる情報をインターネットから入手するようになりました。

その後、自分の考えや生活などを記した日記のようなものをWeb上に公開する「ブログ」が登場すると、芸能人やスポーツ選手といった有名人を中心に多くの人がブログを開設。有名人が、自らが愛用するモノをブログに書き込むと、そのファン(フォロワー)が同じモノを購入・利用するという現象が起こりました。「インフルエンサー」という言葉が使われ始めたのは、この頃です。

さらに、スマホが広く普及すると、TwitterやLINE、Instagram、YouTubeといった「SNS」などが流行し、誰もが時間や場所を選ぶことなく情報を発信・入手することが可能な時代に突入。

これにより、近年、若者を中心にテレビ離れ・雑誌離れが加速し、消費者がモノに興味を持つきっかけは、企業が一方的に発信するテレビCMやチラシといった広告媒体から、自らの意志で選択・閲覧することのできるインターネットへと一気に移行し、特に、SNS上で飛び交う情報は、今や「口コミ」として人々の購買行動に大きな影響を与えています。

インフルエンサーの定義

近年、多くの人が、ネット上で自らの日常やお気に入りのモノを世界中の人々に日々発信していますが、その中でも、多くのファン(フォロワー)を抱え、一度に大勢の人々に情報を発信できるような人物だけが「インフルエンサー」に該当します。元から有名人である人もいれば、特定の知識に長けた人、オシャレ好きな女子や主婦など、一般人からインフルエンサーになるケースも珍しくありません。

インフルエンサーの呼び名は利用するSNSごとに異なり、ブログの場合は「ブロガー」、Instagramなら「インスタグラマー」、YouTubeの場合には「ユーチューバー」と呼ばれます。

また、フォロワー数はインフルエンサーに比べて少ないものの、ある特定の分野において強い拡散能力を持つ人物のことを、「マイクロインフルエンサー」あるいは「ナノインフルエンサー」と呼びます。

あくまでも参考ですが、インフルエンサーのフォロワー数が「10万人以上」だとすると、マイクロインフルエンサーは「1万人以上」、ナノインフルエンサーは「1,000人以上」といったイメージです。ちなみに、日本で最も有名なインフルエンサーであるタレントの渡辺直美さんは、実に900万人ものフォロワーを抱えています。

多くのフォロワーを抱える彼らが、ネット上で「この商品のここが凄い!」「私はこれを愛用しています」などとつぶやけば、たちまちその情報は世界中に拡散され、数日で品切れ! という事態も。インフルエンサーの言動には、それほどの影響力と宣伝効果が伴うものなのです。

インフルエンサー・マーケティングとは

インフルエンサーが発信する膨大な情報量と拡散力。今や、多くの企業がその宣伝効果に着目し、マーケティング戦略に取り入れています。具体的には、インフルエンサーに自社製品を提供し、その感想や使用シーンなどをSNS等にアップするなどして商品をPRしてもらう手法で、それを「インフルエンサー・マーケティング」と呼びます。

インフルエンサー・マーケティングが注目されるようになった背景の一つに、アメリカのジャーナリスト、マルコム・グラッドウェル氏が2000年に発表した著書『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』(SBクリエイティブ)がベストセラーになったことが挙げられます。

この中で氏は、爆発的な流行を「伝染病」と同じと捉え、いかにして口コミによる感染が拡大していくのか、それには「少数者の法則」(病原菌を運ぶ人)、「粘りの要素」(病原菌そのもの)、「背景の力」(病原菌が作用する環境)という3つの要素が必要だとしています。この「少数者の法則」(病原菌を運ぶ人)に該当するのが、インフルエンサーなのです。

宣伝効果を出すためには、病原菌を運んでくれるインフルエンサーの選考が重要なポイントになります。フォロワーは、自分と趣味嗜好が一致するようなインフルエンサーをフォローし、そんなインフルエンサーの愛用品や勧めるモノに共感する傾向があるため、商品のターゲット層にマッチするインフルエンサーを選ぶことが非常に重要です。

例えば、焦げないフライパンや一眼レフカメラを、女子高生のフォロワーが多いインフルエンサーに勧めても効果は期待できませんね。フライパンならば、主婦層に人気のママタレや料理ブロガー、一眼レフカメラならば、写真家や写真好きな有名人、鉄道好き芸能人も良いのではないでしょうか。

また、短い言葉でも伝わる内容であれば、拡散速度が圧倒的に速いTwitterを、動画でPRした方が効果的な商品であればYouTubeを、写真で伝えたいのであればInstagramを利用するなど、それぞれの特色にあったSNSを選択すると良いでしょう。

インフルエンサー・マーケティングのメリット

インフルエンサー・マーケティングのメリットとしては、「好意的に受け入れられやすい」「ターゲットを絞ることができる」「対費用効果が高い」点などがあげられます。

当然のことながら、フォロワーは、フォローしている相手を好意的に見ており、その人が紹介するモノに対しても、初めから好意的に受け入れる用意があります。また、商品のPRに適した属性である人物や、特定の分野で影響力を持つ人物を選択することでターゲットを絞ることもでき、広範囲に無駄な広告を出す必要もありません。

さらに、高額な費用を投入しなければならないテレビCMなどに比べて、時間も費用も抑えることができるのも、企業にとっては大きな魅力といえるでしょう。

インフルエンサー・マーケティングのデメリット

インフルエンサー・マーケティングのメリットとして、「好意的に受け入れやすい」点があるとお話ししましたが、ルールや正しい手法を守らなければ一転、消費者からの信頼を失ってしまいます。

例えば、企業側が同じ商品のPRを複数のインフルエンサーに依頼したり、特定のインフルエンサーばかり起用したりすると、消費者は「やらせか?」という疑念を抱いてしまいます。

また、インフルエンサーは、報酬をもらった上でPRするのであれば、きちんと契約を結び、そのことを明記しなければなりません。しかしながら、そのことを隠してPRするケースが一部で横行しています。これを、「ステマ(ステルスマーケティング)問題」と呼びます。

消費者は、あくまでも自分たちと対等な消費者目線のコメントを求めており、その情報が信頼できるものかどうかの判断に報酬の有無が大きく影響するのです。ステマは完全に消費者を騙す行為であり、結果、商品や企業のみならず、インフルエンサーに対するイメージダウンと信頼低下は避けられないでしょう。インフルエンサーのSNSには批判的なコメントが殺到し、いわゆる「炎上」状態に陥ることも。

インフルエンサー・マーケティングは、報酬によって宣伝を強要する(される)ものではなく、あくまでも「商品を紹介するかどうかはインフルエンサーに一任されなければならない」という点に注意しましょう。