みなさんは「アーリーアダプター」という言葉をご存知でしょうか? 実は、新しいものを広く普及させるにはアーリーアダプターが重要なのだとか。
そこで今回は、アーリーアダプターがどういうものなのか、その意味と役割について解説します。
アーリーアダプター」の意味
アーリーアダプター【early adopters】とは、イノベーター理論における「初期採用層」のことを指す言葉で、新しい商品やサービスを比較的早い段階で取り入れる人々のことをいいます。
イノベーター理論とは
ここで、「イノベーター理論」について触れたいと思います。
イノベーター理論とは、1962年にアメリカの社会学者、エベレット・M・ロジャース教授によって提唱されたイノベーション普及に関する理論です。イノベーションとは、「革新」「新市場の開拓」などを意味します。
イノベーター理論では、新しい商品やサービスが世に出てから広く普及するまでの消費者の購入段階を5つの層に分類しており、アーリーアダプター(初期採用層)は、その第2段階に位置する人々を指す言葉になります。
イノベーター理論における5つの消費層は次のとおりです。
イノベーター(革新者)
革新的で、新しいものを最も早く採用する人。質や利益は二の次で、いち早く新しいものを試そうと飛びつく傾向が強く、いわゆる「マニア」が多い。iPhone発売当初、AppleStoreに並んで購入した人たちが該当する。
アーリーアダプター(初期採用層)
流行に敏感で、自ら情報収集を行った上で判断し、新しいものを取り入れる人。オピニオンリーダーとも呼ばれる。イノベーターとの違いは、質や利益を見極めてから取り入れる点。
アーリーマジョリティ(前期追随層)
比較的慎重派だが、新しいものへの関心は高く平均よりは早く取り入れる人。この層に取り入れられると、サービスが一気に市場に浸透することから、ブリッジピープルとも呼ばれる。
レイトマジョリティ(後期追随層)
慎重派で、周囲の使用状況を見て、一般的に流行してから取り入れる人。フォロワーズとも呼ばれている。
ラガード(遅滞層)
流行に対する関心が薄く最も保守的な人。商品やサービスが一般化して初めて取り入れる、あるいは取り入れないことも。そのため、基本的にマーケティングのターゲットにはならない。
「普及率16%の論理」とアーリーアダプターの役割
前述のとおり、新しい商品やサービスは、5つの段階を経て完全に世に定着します。では、その過程の中でアーリーアダプターはどのような役割を担っているのでしょうか。
5つの消費層がそれぞれ市場を占める割合は、次のとおりです。
・「イノベーター」2.5%
・「アーリーアダプター」13.5%
・「アーリーマジョリティ」34%
・「レイトマジョリティ」34%
・「ラガード」16%
アーリーマジョリティまで来れば普及率はちょうど50%。2人に1人がその商品やサービスを手にしていることになりますが、実は、新しい商品やサービスが広く普及するかどうかの鍵は「アーリーアダプター」が握っているといわれています。
イノベーターとアーリーアダプターから成る16%の初期市場は、「新しさ」を求めて商品やサービスを取り入れますが、残りの84%は、それに「安心」という保証がなければ取り入れようとはしません。その「安心」を与える役割を担っているのが「アーリーアダプター」になるのです。
イノベーターは、新しいものをいち早く取り入れたいだけであって、それを普及させるような行動は起こしません。これに対し、アーリーアダプターは新しいものを取り入れた結果を積極的に発信します。
特に、近年では、SNSなどでスピーディに情報が拡散していきます。
このアーリーアダプターが発信した情報から安全性や利便性を確認し、「買って損はしない」という安心感を得たアーリーマジョリティによって、一気に市場に普及していくのです。
そのため、いかにアーリーアダプターにまで受け入れられることが出来るかが重要と言われています。これが、「普及率16%の理論」です。
ちなみに、これに対して「普及率16%を達成したからといって、必ずしもアーリーマジョリティにまで普及するとは限らない」という考え方、「キャズム理論」というものも存在します。
単に「新しい」だけでは、普及率16%の壁を乗り越えるのは難しい時代です。いかにアーリーアダプターが拡散したくなるような「付加価値」を持たせられるのかが、重要ではないでしょうか。
革新的なアイデアで、普及率100%を達成したいものですね。