平成仮面ライダーシリーズをふりかえる企画の第18弾は、人間の命を救うため全力を尽くす"ドクター"の仮面ライダーたちが繰り広げる群像劇『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)をとりあげる。

『仮面ライダーエグゼイド』とは、2016(平成28)年10月2日から2017(平成29)年8月27日まで、テレビ朝日系で全45話を放送した連続テレビドラマである。平成仮面ライダーシリーズでは、作品ごとに独自の世界観が作られ、仮面ライダーのキャラクターにもさまざまなモチーフが与えられているが、本作では「ゲーム」が採用された。

「ゲーム」と「医療」という、一見ミスマッチな取り合わせが印象に残る本作の仮面ライダーだが、これには「ひとつしかない人間の命を懸命に守ろうとする"医療"と、コンティニュー(継続)によって何度もライフを回復してプレイすることができる"ゲーム"を対比させることで、"生と死"というテーマに向き合いたい」との、作り手の強い思いが込められている。

仮面ライダーエグゼイドをはじめ、本作に登場する仮面ライダーたちはまず、3頭身でずんぐりむっくりの「レベル1」形態に変身して敵(バグスター)と戦い、第二段階(レベル2)になって初めて、従来の仮面ライダーのようなスマートな体型を得ることができる。劇中に出てくる「ゲーム」のキャラクターを模した本作の仮面ライダーは、これまでに登場した歴代平成仮面ライダーのどれにも似ていないインパクト抜群のスタイルをしており、特に注目を集めたのは、マンガチックに誇張された「眼」の表現であった。

聖都大学附属病院の小児科研修医・宝生永夢(演:飯島寛騎)は、天才ゲーマー「M」というもうひとつの顔を持っていた。人々を"ゲーム病"で苦しめ、やがて消滅に追いやってしまうコンピューターウイルス「バグスター」を倒すため、仮野明日那/ポッピーピポパポ(演:松田るか)の持つ「ゲーマドライバー」と「ライダーガシャット」を手にした永夢は、仮面ライダーエグゼイドに変身してバグスターに挑んだ。バグスターから人々を守る「仮面ライダー」になった永夢は、電脳救命センター「CR」所属のドクターとなり、ゲーム病に感染した人たちを治療するため、オペ(=バグスター撃滅)に全力を尽くすのであった。

本作では、エグゼイドの他にもさまざまな個性を備えた"ドクター"の仮面ライダーが登場する。永夢と同じくCRに属する仮面ライダーで、「俺に切れないものはない」と豪語する若き天才外科医・鏡飛彩(演:瀬戸利樹)は「仮面ライダーブレイブ」、医師免許を剥奪され、今は無免許の闇医者として活動している花家大我(演:松本享恭)は「仮面ライダースナイプ」、バグスターの秘密を探る監察医・九条貴利矢(演:小野塚勇人)は「仮面ライダーレーザー」に変身し、まったく異なる立場からバグスターに戦いを挑んでいる。

エグゼイドは「アクションゲーム」、ブレイブは「ファンタジーRPG」、スナイプは「ガンシューティングゲーム」、レーザーは「バイクレースゲーム」というように、ゲームジャンルによって各仮面ライダーの個性分けをしている点がユニークで、変身の際にはそれぞれのゲームエリアが周囲に展開し、さながらゲームをプレイしているような状態で"命をかけた"戦いが繰り広げられた。

バグスターウイルスは、感染した人間の体内で活性化・増殖し、やがて巨大な怪物に変貌してしまう。仮面ライダーは「レベル1」に変身することによって人間とバグスターを分離し、切り離されたバグスターを「レベル2」になって"切除"する。これが本作における仮面ライダーのオペの手順である。

バグスターに挑む仮面ライダーの前に、エグゼイドに似た姿をした謎の仮面ライダー「仮面ライダーゲンム」が出没する。その正体は、ゲーマドライバーやライダーガシャットを開発したゲーム会社「幻夢コーポレーション」の若きCEO・檀黎斗(演:岩永徹也)だった。当初は、CRやその母体となる衛生省のよき協力者としてクールにふるまっていた黎斗だが、ストーリーの進行と共に、驚くべき実体と"野望"が明らかになっていく。

患者の命を救うために戦う永夢たち仮面ライダーの対極にいる存在が、バグスターのパラド(演:甲斐翔真)である。人間の命を軽視し、エグゼイド=永夢と本気で戦うことにしか興味を持たない彼は、パズルゲームと格闘ゲームの仮面ライダー「仮面ライダーパラドクス」に変身し、エグゼイドの行く手を何度も阻んだ。

立場の異なる複数の仮面ライダーが、バグスターの脅威から人間の命を救うため戦うというストーリーフォーマットの中に、「適合手術なしで永夢が仮面ライダーに変身できる"理由"」「飛彩と大我との過去の確執」、「バグスターと檀黎斗との関係」といったミステリアスな要素が組み込まれ、個性的なキャラクターたちが激しくぶつかりあうことによって、見ごたえのある群像ドラマが展開していった。また、強敵に挑む仮面ライダーたちが新たなガシャットを手に入れることにより、レベルを高めて強化していく過程も丁寧に描かれた。

やがて、檀黎斗が総力を注いで開発した"究極のゲーム"「仮面ライダークロニクル」が完成。天才ゲーマーMをライバル視し、大我のパートナーを自認する女子高生ゲーマー西馬ニコ(演:黒崎レイナ)をはじめ、大勢の人々が「ライドプレーヤー」に変身して、生死をかけたゲームに挑んでいくという最終展開に突入する。バグスター側についたポッピーピポパポは「仮面ライダーポッピー」に変身し、永夢たちの敵として立ちはだかるが、エグゼイドの努力によって見事「ゲームクリア」を果たし、彼女を仲間に戻すことに成功した。

消滅を経て、バグスターとなって復活を果たした檀黎斗が「檀黎斗神」と名乗って永夢たちの仲間となる一方で、彼の父親・檀正宗(演:貴水博之)が「仮面ライダークロノス」に変身し、最大の敵となって立ちはだかった。時間を自在に止める「ポーズ」の能力になすすべもない仮面ライダーたちだったが「ハイパームテキガシャット」を得た永夢が「仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー」への変身を果たし、クロノスに対抗する。

2017年8月27日に放送された最終回(第45話)に先がけて、8月5日には"真の最終回"と銘打った『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』が劇場公開された。この映画はテレビ最終回の"その後"の時間軸で語られる物語で「仮面ライダー風魔/南雲影成(演:堂珍嘉邦)」なる仮面ライダーが登場するほか、究極の"ラスボス"こと「ゲムデウスマキナ」がエグゼイドたちの脅威として現れ、凄絶な戦いを展開している。本作は単体の映画作品として楽しめる内容となっているが、同じ時期に怒涛のクライマックス(第42~45話)を迎えている真っ最中のテレビシリーズとも巧みに連動しており、テレビから映画(トゥルー・エンディング)へと、キャラクターの動きやストーリーが実に小気味よく"つながる"感覚を味わうことができる。

また、映画のエンディング後に付けられた短いシークエンスには、次回作『仮面ライダービルド』(2017年)の「仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム」と「ゴリラモンドフォーム」がテレビに先がけて登場し、永夢から大切な"何か"を奪い取り、去ってしまった。この不可解なビルドの行動は、2017年12月9日公開の映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』にて、明確な理由が語られることになる。

次回は、天才物理学者の桐生戦兎がさまざまな挫折や困難にぶつかりながらも、人々の「愛と平和」を守るため巨大な敵に立ち向かっていく姿を壮烈に描きあげた『仮面ライダービルド』(2017年)の概要をご紹介したい。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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