――山本さんはこれまで時代劇を大切にされてきて、今回は、時代を扱ったファンタジーであり、また初めての方も多い作品でしたが、やってみていかがでしたか?

山本:もちろん『刀剣乱舞』の存在は知っていました。舞台の世界でも名が轟いているし、すごいことだと思いますよ。鈴木くんも、最初は20歳くらいなのかなと思ったらすごく大人だし、だからこそ、きっちりした姿勢でやっていて、説得力を持って演じられるんだと思います。それに、『刀剣乱舞』という舞台にも、強い世界観があるなと思います。何を言っているのかわかりにくい作品もときにはあるにはあると思うんですけど、『刀剣乱舞』は、ダイレクトにお客さんが求めることを観せていると思うんです。それは演じる皆さんの努力や、作り手の緻密な見せ方があってのことだと思うので、改めて、2.5次元っていうジャンルはすごいなと思っています。

――鈴木さんは、先輩とご一緒して刺激はありましたか?

鈴木:普段は、なかなか先輩方と絡む機会が少ないので、こういう出会いがあることが嬉しいし、この出会いから学ぶことがたくさんありました。2.5次元としてもより発展できるし、僕だけじゃなくて、みんながたくさん勉強できたんじゃないかな。

――なにか直接アドバイスをもらったりは?

山本:そんなに直接はないんだけど、昨日も舞台に行きましたし、その後も連絡をとっています。この間は、僕もやったことのある演出家の舞台に鈴木君が出ていたから、「どう?」なんて連絡したりね。

鈴木:そういうやりとり自体も、本当に初めてのことで。メールでアドバイスも下さいましたし、撮影の後にもまたご飯にも連れてってもらいました。ご本人を前にしてあれだけど、どうやって恩返ししたらいいのかなって(笑)。

山本:それはもう、いろいろ僕を出してもらえれば(笑)。でもこの映画を舞台にしても絶対面白いよね。

鈴木:信長を題材にしたことはあったんですけど、その時とはまた違って面白いかもしれないですね。

山本:俺、そういう企画あったら出るよ! 1幕で2シーン、2幕で3シーンみたいな(笑)

鈴木:各所で締めてくれるんですね(笑)。

山本:最初は後ろ向きで立ってて、セリフをしゃべって振り返って暗転する、というのがまずワンシーン(笑)。でもそういう風に、映画版でも、織田信長というものを大きな存在として描いてくれたのも良かったですね。もちろん、刀剣男士たちが主役なんだけれど、織田信長も核となる人物なので、そこを、ちゃんとどっしりと描いてくれて。それと、脚本を読んで面白かったのは、僕らは史実の側を演じているんだけど、その史実にもウソがないんですよね。実際に、本能寺の変で実は織田信長が生き延びていたという説もあるし、そういうものをうまく利用してる。そこに、刀剣男士たちが関わってきて、違和感なくできていると思いました。面白かったのは、明智光秀がちょっと驚きすぎなシーンかな(笑)。

『刀剣乱舞』は原点を膨らませていく

――鈴木さんも、印象に残ったところは。

鈴木:この映画も、史実をもとにしながら、「もし誰かがこうだったら」という”たられば”で成り立ってて。『刀剣乱舞』の世界観も、もし刀剣が人の姿をして現れたらどうなるのか、というところが原点でもあります。その原点から、膨らませていった世界なので、実写化をするにあたっても、ほかの作品よりもやりやすかったのかもしれない、とも思います。今作でも、うまく史実の軸をぶれないようにして、刀剣男士たちのパラレルワ-ルドとうまくはまった世界観になっているなと思います。この『映画刀剣乱舞』を見たあとにも、各キャラクターについても、また語ることができるのではないかと。

山本:どの刀剣男士をメインにしても物語はできそうだし、無限だよね。

鈴木:それに、その刀剣を所持していた武将もいるので、その武将と刀剣男士との関係性も描けば、本当に無限ですね。

――織田信長と三日月宗近の関係性で描かれたのが『映画刀剣乱舞』ですね。

山本:結局、織田信長は刀剣男士たちに翻弄されてるようでされてなかった、とも言えますね。そして、史実も尊重しつつ、同時に刀剣男士たちの世界も成り立っている。やっぱり、織田信長って実在の人だし、ファンの多い武将でもあるから、カリスマ性を残してほしいじゃないですか。この映画は、織田信長のカリスマ性は一ミリも欠けることがなかった。そこは、鈴木くんが演じた三日月宗近と織田信長との関係性に、いい緊張感があったからこそだと思います。

鈴木:史実だと、刀剣としての三日月宗近の存在は、織田信長もご存じでしょうけど、実際に残っている説などからすると、足利義輝か、豊臣秀吉と関わる物語のほうが創造はしやすいと思います。でも映画版だからこそ、織田信長との関係性も描けるというのは感慨深いところでした。

――今回の映画って、歴史の事実が変えられないからこそ、その間の想像力が作品を面白くしていると実感しました。

山本:それに加えて、画としてもすごく綺麗だし、僕自身も刀剣男士たちを素直に綺麗だなって思いました。それに、ハリウッド映画みたいなところもあって、アクションもあるから、男の子もきっと好きな世界観だろうなと思いますね。

■鈴木拡樹
1985年6月4日生まれ、大阪府出身。2007年、テレビドラマ『風魔の小次郎』で俳優デビューし、2008年、『最遊記歌劇伝 -Go to the West-』で初主演を果たす。以来様々な舞台『弱虫ペダル』(12~)シリーズ、舞台『刀剣乱舞』(16~)シリーズなどで活躍し、「2.5次元」界を牽引。『髑髏城の七人 Season月 下弦の月』(17~18)、『No.9 ー不滅の旋律ー』(18~19)などに出演し、2019年はWOWOWオリジナルドラマ『虫籠の錠前』(3月)舞台『どろろ』(3月)、『最遊記歌劇伝-Darkness-』(6月)上演を控えている。

■山本耕史
1976年10月31日生まれ、東京都出身。0歳のころからモデルとして活動し、1987年に日本初演の『レ・ミゼラブル』で舞台デビュー。以来、様々な舞台、ドラマで活躍し、2005年には『第56回NHK紅白歌合戦』の白組司会に抜擢された。主な出演に、ドラマ『ひとつ屋根の下』(93、97)、大河ドラマ『新選組!』(04)、『パンドラ』シリーズ(08~18)、舞台『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(07~09)、『メンフィス』(15、17)、劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season花(17)など。2019年はドラマ『4K大型時代劇スペシャル 紀州藩主 徳川吉宗』(2月)主演、舞台『愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』(3月)などを控えている。