米労働省が2019年1月4日に発表した12月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数31.2万人増、(2)失業率3.9%、(3)平均時給27.48ドル(前月比0.4%増、前年比3.2%増)という内容であった。

(1) 12月の米非農業部門雇用者数は前月比31.2万人増となり、2月に次いで2018年で2番目の増加幅を記録。市場予想の18.4万人増を大幅に上回った。また、10月、11月分の上方修正(合計5.8万人)もあって、3カ月平均の増加幅は25.4万人に急拡大しており、こちらは2018年で最大となった。なお2018年通年では、延べ263.8万人の雇用が産み出された事になる。

(2) 12月の米失業率は3.9%となり、ほぼ半世紀ぶり低水準の3.7%を今回も維持すると見込んでいた市場予想に反して0.2ポイント上昇した。もっとも、労働参加率が1年3カ月ぶりに63.1%へ上昇した事が影響したものであり、職探しの再開などで労働市場への復帰者が増えたためと見られる。フルタイムの仕事を望みながらもパート就業している労働者などを含めた「広義の失業率」である不完全雇用率が、前月と同じ7.6%であった点から見ても、失業率が悪化したとの印象は薄い。

(3) 12月の米平均時給は27.48ドルとなり、前月から0.09ドル増加して過去最高を更新。伸び率は、前月比で+0.4%、前年比では+3.2%となり、いずれも市場予想(+0.2%、+3.1%)を上回った。なお、前年比の伸び率は、2009年4月以来の高水準であった。

世界経済の減速懸念が広がり、年末年始にかけて市場が大きく混乱する中とあって注目された米12月雇用統計だったが、その結果は米経済が2018年第4四半期も好調を維持した事を確信させる内容であった。

年末年始の市場混乱とともに広がりつつあった利下げ観測は、さすがに行き過ぎであったと見られ、米金利先物市場が織り込む2019年中の利下げ確率は発表前の50%前後から20%台に急低下した。もっとも、「米雇用統計は経済の『バックミラー』のため、米経済がこの先も堅調に推移するとの保証にはならない」とする慎重な見方も残るようだ。

この日の米国株はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による利上げ休止に含みを持たせる発言もあって大幅に反発したものの、米ドルは伸び悩んだ。米12月雇用統計の好結果だけでは、米中貿易戦争の悪影響などによる先行きへの懸念を完全に打ち消すに事はできなかったようだ。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya