先日部長から、「この先生の講演料、あごあしまくら付きね」と言われた。えっ、どういうこと? なんで枕付き?
というわけで今回は、「あごあしまくら」という言葉について解説します。
あごあしまくらの意味
あごあしまくらとは、本来は落語などを行う寄席で使用されていた業界用語で、主催者が食事代・交通費・宿泊費を負担することを意味します。
食べる時に顎(あご)で噛み砕くことから「あご=食事代」、移動するときに足(あし)を使うことから「あし=交通費」、寝るときには枕(まくら)を使うことから「まくら=宿泊費」を表しています。
ビジネスシーンのあごあしまくら
ビジネスシーンでは、あごあしまくら付きという使い方をするのが一般的で、「今回の出張はあごあしまくら付きです」と言われたら、「食事代・交通費・宿泊費付きの出張」と解釈するのが正解です。
また、著名人にトークショーへの出演を依頼したり、新商品発表イベントで有名人に広告塔を務めてもらったり、研修会で専門家に講師をお願いするなど、主催者側あるいは依頼者側が支払う出演料や講演料に、食事代・交通費・宿泊費を含める場合に「あごあしまくら付き」と表現します。
ちなみに、「あごあし付き」と言われた場合には、「食事代と交通費付き」という意味になり、基本的に宿泊費は含まれません。
ただし、接待の場など、「あごあし付き」でも宿泊費が含まれていることがあります。ゴルフ接待であれば、さらにプレー代も含まれたりします。
あごあし付きと言われた場合には、誤解のないようきちんと確認した方がよいでしょう。
出演する側からみるあごあしまくら
噺家や芸人、役者、歌手、タレントなど、何かしらの芸を生業としている人たちにとって、あごあしまくら付きはVIP待遇といえるでしょう。
下積み時代や無名の頃は、少ないギャラからあごあしまくら代を捻出し、むしろ出演するほど赤字が増えるということもあるようです。
そんな人たちにとって、あごあしまくらは、自分に対するひとつの評価であり、目指すところでもあるのではないでしょうか。
あごあしまくらの例文
・その金額はあごあしまくら込みですか?
・A氏の出演料は、毎回あごあしまくら付きにしてください。
・バブルの頃はあごあしまくら付きが当たり前だった。
・今回は日帰りできますので、あごあしだけで結構です。
・B氏の来日にあわせて、あごあしまくらの手配をしてください。
バブル崩壊後、どの企業も経費削減を掲げるようになり、「あごあしまくら」という言葉を耳にすることも少なくなってしまいました。
しかし、「あごあしまくら付き」が当然な時代が再びやってくるかもしれません。そんな日が来ることに期待の意味も込めて、しっかりと抑えておきましょう。