昨年12月3日、「ネット流行語大賞 2018」が発表された。2018年にインターネット上で流行した言葉を投票によって決定するという同企画において、栄えあるグランプリに輝いたのは「VTuber」だという。
「VTuber」という言葉自体は聞いたことがあるものの、あまり流行っている実感がない、詳しいことはわからないと感じている人も多いのではないだろうか。しかし、そんな人でも知っているであろう有名企業がVTuberを活用するという事例も登場してきているのだ。
本稿では、それらの事例を紹介するとともに、企業側の狙いや今後の展望についてなどを掘り下げていく。
「VTuber」とは?
「YouTuber」という言葉は、今やすっかり市民権を得たと言っても過言ではないだろう。そんな中現れた「VTuber」は、その派生語のようなもの。「Virtual(バーチャル)YouTuber」の略語であり、2Dまたは3Dのバーチャルモデルを用いて動画を制作・投稿する配信者の総称である。
そのモデルは実在する人物ではなく、クリエイターや企業が作り上げたキャラクター。YouTubeはもちろん、ニコニコ動画やSNS上でさまざまな動画コンテンツを配信している。最近では、VTuberの事務所も続々と設立されており、その活動範囲は広がる一方だ。
VTuber・月ノ美兎が洗濯機になった!?
企業がVTuberを活用する動きが加速しているのは先に述べた通り。活用の仕方は多種多様で、既存の人気VTuberとのコラボレーションというケースもあれば、企業オリジナルのVTuberが登場するというパターンも。
今回は、人気VTuber「月ノ美兎(つきのみと)」とタイアップを行った花王にフォーカス。担当者にそのコラボレーションの経緯を伺った。
月ノ美兎は、「にじさんじプロジェクト」に所属する人気VTuber。バーチャル世界の女子高生であり、学級委員を務める真面目さと多方面のカルチャーに精通するマニアックなトークで多くの視聴者に支持されている。
そんな月ノ美兎と花王が、2018年8月に「月ノ美兎のバーチャル“生”お洗濯大作戦」なるコラボイベントを開催した。同イベントでは、なんと月ノ美兎が洗濯機になってしまったというのだ。その名も「MOE-T WASHER MK-1(モエティーウォッシャーマークワン)」。
洗濯機になった月ノ美兎が、花王の製品・ワイドハイターEXパワーを使い参加者のTシャツを洗うという斬新すぎる企画には、想定以上の反響があったそう。
花王にVTuberとのコラボ企画を立ち上げた理由を伺うと「普段マス広告のCMに接触しないような、ネットリテラシーの高い方にもワイドハイターに興味を持ってもらいたい。そして施策自体を話題化させたいから」との回答が。
月ノ美兎はデビュー当初、洗濯機の上にノートパソコンを置きながら配信していたというエピソードがあり、それが起用のきっかけになったという背景も知ることができた。
イベント後、SNS上では「謎企画(面白い)」、「狂ってる」、「ワイドハイターどうした?」などの反応が寄せられ、この取り組みは狙い通りかなりの注目を集めたようだ。
担当者は「『ワイドハイター』という名前がTwitterのトレンドランキングに登場するなど、これまでにはない形でブランド名を話題化することに成功しました」と、コラボを振り返る。
また、実際の導入に際しては「存在は知っていましたが、そこまでVTuberについて詳しくはなかったので、過去の放送を視聴し、一から勉強しました。VTuberとメーカーのコラボは前例が少なかったので、実現に向けては全てが手探りでした」と苦労を語った。
前代未聞のコラボレーションが見事にファン層の拡大につながった今回の事例。VTuberという存在は、今やマーケティングなどにおいても非常に大きな影響力を持っていることがわかっていただけたことと思う。次回の【中編】では、企業オリジナルのVTuberの事例も紹介していく。