映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』は、現在放送中のテレビシリーズ『仮面ライダージオウ』(2018年)と、8月に放送を終了した『仮面ライダービルド』(2017年)の共演劇をメインにしつつ、『仮面ライダークウガ』(2000年)から『仮面ライダーエグゼイド』(2016)までの歴代"平成仮面ライダー"が勢ぞろいして強大な敵に挑むという、まさに"平成最後の仮面ライダー映画"にふさわしいシリーズの集大成的な作品となっている。

武部直美プロデューサー。1967年生まれ。京都府出身。『仮面ライダーアギト』(2001年)よりプロデューサーとして平成仮面ライダーシリーズに参加。『仮面ライダーキバ』(2008年)よりチーフプロデューサーとなり『仮面ライダーオーズ』(2010年)『仮面ライダー鎧武』(2013年)を担当。『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012年)『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015年)など、スーパー戦隊シリーズのプロデュースも手がけている。撮影:大塚素久(SYASYA)

ここでは、プロデューサーを務める武部直美氏にご登場いただき、『仮面ライダージオウ』の企画の成り立ちや、20作記念映画を作るにあたっての心がまえ、そして武部氏をはじめとするスタッフたちによる「平成仮面ライダー」各作品に対する思いを聞いた。

――昨年、配信による『仮面ライダーアマゾンズ(シーズン2)』(2017年)を白倉伸一郎さんと共に手がけられた武部さんですが、日曜朝放送の「平成仮面ライダー」シリーズのプロデューサーを務められるのは2013年の第15作『仮面ライダー鎧武』以来ひさびさとなりますね。2018年に『仮面ライダージオウ』を担当されると決まったのは、いつごろだったのでしょうか。

『仮面ライダービルド』(2017年)が始まったあたりからですね。毎年、新番組の放送開始時期に「次の作品の担当は……」みたいな話が出てくるんです。つぎは20作目なんですよね~みたいな話をしていて、私が「白倉さん久しぶりに(プロデューサーを)やればいいんじゃないですか」と言った記憶もありますけれど……。(白倉に)決まったときは「やっぱりやるんだ」みたいな感じでしたね(笑)。その流れで、私も参加することになりました。

――『仮面ライダーディケイド』(2009年)では、いくつもの「並行世界」をめぐるディケイドが登場しましたけれど、今回のジオウ/常磐ソウゴはかつての平成仮面ライダーが活躍していた"時代"をめぐる物語ですね。「時間」を行き来するスタイルになった、企画の経緯を教えてください。

確か、最初に企画を進めたときは「ロボットに乗って戦う仮面ライダー」という企画だったと思います。ただ仮面ライダーがロボットで戦うというアイデアだけでは、そんなに新しいものにならないんじゃないか、「スーパー戦隊シリーズ」の巨大ロボに似てしまうんじゃないか、となり……。そこで、仮面ライダーの乗るロボットに時間移動をさせて戦い以外でも使用するものとしよう……ということになっていくんですよ。これが『ジオウ』での「タイムマジーン」につながります。時間を移動するということで、歴代平成仮面ライダーのいる時代をめぐるという案が固まっていきました。

――仮面ライダージオウが「時計」をモチーフにしたデザインというのは、時間をめぐる仮面ライダーだからなのでしょうか。

時間を行き来するという設定は、ライダーのデザインが出来上がってからずっと後から決まったものですね。ヒーローキャラクターのデザインは、企画を煮詰めるよりずっと先行していますから。

――ここ数年の平成仮面ライダーはデザイン面で「仮面ライダーっぽくない」という違和感が熱心なファンの間で話題になりつつ、放送されてみると「動いている姿はカッコいい」「やっぱり仮面ライダーだ」という評価に変わることが多い気がします。その点、ジオウの場合は顔に「カメンライダー」と書いていますし、どこからどうみても仮面ライダー以外の何物でもないという「やや強引な説得力」が大きなインパクトを与えていました。あの「顔や武器などに文字を配置する」というアイデアはどこから来ているのでしょうか?

時計って小さいですし、強そうなモチーフじゃないでしょう。ライオンとか戦車とか、強そうなものって他にもっとありますからね。そこで、もっと強いインパクトを与えたいということになり「顔にライダーという文字を入れてしまおう」という案が出たんです。 そしてロボに乗るライダーや、時間移動する……という要素を検討しているうちに「レジェンド(ライダー)から逃げない」作品にしていこうと決まっていきました。そちらのほうがオーディションの案内をする際、事務所のマネージャーさんたちに作品の内容を分かってもらいやすかったんです。「簡単に言うと、『仮面ライダーディケイド』みたいな記念作品です」と(笑)。

――1つのお話の中で、現在と過去の両方で仮面ライダーが戦っていたり、過去で悪と戦っている歴代仮面ライダーの歴史が変わって変身者の記憶がなくなったりと、ストーリーがやや理解しにくい印象がありましたが、作り手の方々の間で混乱などはありませんでしたか。

以前『仮面ライダー電王』(2007年)を作ったときにも、各方面から言われたことなんですよね。『電王』も現在から過去に飛んで「時の改変」を防ぐお話ですから。しかし時間軸の複雑さとか関係なしに、キャラクターそれぞれの動きやアクションを楽しまれたところがありました。今回の『ジオウ』もそういう感じかなと思っています。理屈はちょっと分からないところがあるけれど、面白く観られる、という作品が理想です。ストーリーのつじつま合わせにこだわりすぎると、つまらなくなりますから。

――当初は、第1、2話で『ビルド』編、第3、4話で『エグゼイド』編と、『仮面ライダーディケイド』のようにレジェンド(仮面ライダー)のいる世界(歴史)を1つずつめぐっていく展開かと思っていました。しかし第5、6話では『フォーゼ』キャストと『555』キャストが交差したり、第9、10話では『オーズ』キャストと『エグゼイド』の檀黎斗が絡んだりと、予定調和を廃した変則展開が目立ってきましたね。これはどういった意図で行われたことなのでしょうか。

『ジオウ』では、レジェンドだけに頼らない作品を目指しているんです。もちろん、記念作品なのでレジェンドが出てくるとうれしいですし、目立つんですけれどね。今はレジェンドライダーの力をジオウが受け継いでいく展開ですが、これから先、また新しい流れになっていきます。