東京・将棋会館5階の対局室。昨年も同じ部屋で新年のインタビューを行ったが、当時はまだ四段の新鋭棋士であった。あれからわずか1年。目の前にいる藤井聡太七段は、すっかり大人びた雰囲気を宿していた。屈託のない笑顔の中にも、精悍さが見え隠れする。ふと真顔で考えを巡らせている表情に、男らしさを感じる瞬間もあった。わずかに残るにきびだけが、かろうじてまだ16歳なのだと実感させてくれる。藤井七段にとって、2018年という年はどんな1年だったのだろうか。
――高校生活はいかがですか。
一貫校なので、気持ちは中学の頃とあまり変わらないです
――前期の29連勝と朝日杯優勝は本当に素晴らしかったですが、今期もここまで安定して好成績を収めています。
ただ、大きな対局で負けてしまうことが多かったかなという気がするので、そこは自分の中での課題です
――昨年度はあのすさまじい取材攻勢の中で、地に足がついていなかったのではないかと感じていましたが、今期は落ち着いて内容のよい将棋も多いのでは。
そうですね、すべての対局が満足というわけではありませんが、昨年度よりはまあ少しずつですが内容は向上できているのかなとは思っています
――結果も出しています。まず第31期竜王戦ランキング戦では、2年連続の優勝で昇級しました。
前期に続いて決勝トーナメントに進出できたのはとてもうれしかったのですが、ただ去年より上に進めなかったので、来年こそはという思いもあります
――順位戦も快調ですね。この取材の時点で無敗の6連勝。同クラスにいる師匠の杉本昌隆七段も全勝で並んでいるのが目を引きます。師匠からは一緒に昇級したいねと言われているのでは?
いやいやそれは(笑)。まず自分は自分で頑張りたいと思います
――第66期王座戦挑戦者決定トーナメントはベスト4で斎藤慎太郎王座(当時七段)に敗れました。結果的にタイトル獲得をアシストした形になりましたが、斎藤王座誕生を見てどう思われましたか。
斎藤王座には、自分が三段時代によく将棋を教えていただきました。当時からタイトルを取ってもおかしくない実力者だと思っていました。自分も見習って早く活躍できるようになりたいです
――実際に対戦してみて、斎藤王座の将棋についてどういう印象を持ちましたか。
斎藤王座は形勢判断が正確で、それが自分より上回っていたという気がします
――第49期新人王戦では、史上最年少の優勝はみごとでした。
厳しい相手が続いたので、最初から優勝を狙っていたわけではありませんが、これが最後の出場なので、いい形で終わることができてよかったです
――記録面も注目されました。デビューからの通算100局目の勝率が、中原誠十六世名人に並んで歴代1位タイです。
あ、はい(笑)。自分は全然意識していなかったですし、数字のことは局後に聞きました。中原先生の記録に並ぶことができたのは光栄です。ここからまた、中原先生を上回る活躍ができたらと思っています
※この記事は『将棋世界』(2019年2月号)に掲載の『新春スペシャルインタビュー 藤井聡太七段「16歳の進歩」』冒頭部分を抜粋したものです。