会社勤めの方なら、夏と冬に支給されるボーナスは一大イベントですよね。「今回のボーナスは何に使おうかな」と悩むのも楽しみの一つでしょう。しかし、「支給額に対して手取り額が少なくない? 」と疑問に思ったことはありませんか。

このボーナスの手取り額は、きちんとした根拠に基づいて計算された結果なのですが、あまり詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ボーナスにかかる税金や社会保険料と、手取り額の計算方法についてご紹介しましょう。

  • ボーナス支給額から控除される金額はいくら? 手取り額の計算方法も解説

    ボーナス支給額から控除される金額はいくら?

ボーナスから引かれるものには何がある?

会社からもらうボーナスは、支給額がそのまま手取りになるのではなく、そこから税金や社会保険料が引かれます。このように、ボーナスから税金や社会保険料を引くことを「控除」といいます。ボーナスから控除されるものを、具体的に見ていきましょう。

<ボーナスから控除されるもの>
・健康保険料……賞与×9.90%(東京都の場合)
・厚生年金保険料……賞与×18.30%
(※健康保険料、厚生年金保険料は会社と従業員とで折半します。表示数値の半分がボーナスから引かれます)
・介護保険料……賞与×1.57%(満40歳以上の場合)
・雇用保険料……賞与×0.3%
・所得税……前月の給与、扶養親族の数で計上します。給与から社会保険料を引いた額で計算します。
・住民税……住民税に関しては、ボーナスからは引かれません。

はっきり数字がわかっている税金や社会保険料をざっと計算しただけでも、約15%はボーナスから引かれます。これだけでも、50万円のボーナスだと約75,000円は引かれるわけです。

ボーナスから控除されるものを改めて確認してみると、思ったより大きな金額が引かれていると感じたのではないでしょうか。

ボーナスの手取り額をシミュレーションしてみよう

それでは実際に、ボーナスからどれだけの金額が天引きされるのか、計算式にてシミュレーションしてみましょう。ここでは、国税庁ホームページに掲載されている「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成30年分)」を参考に、下記のモデル例でボーナスの手取り額を計算してみます。

<モデル例:賞与50万円、前月の給与31万円(社会保険料控除後)、40歳男性扶養家族一人の場合>

まず、50万円から社会保険料である健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料が引かれます。

社会保険料(健康、厚生、雇用)の計算方法は、

{11.47%(健康保険+介護)+18.3%(厚生年金)}×1/2(会社と従業員で折半)+0.3%(雇用保険)=15.185%

500,000×15.185%=75,925円(控除される社会保険料)となります。

そして、所得税の税率を計算するには、前月の給料額を確認します。前月の給料が310,000円(社会保険料控除後)だった場合、国税庁ホームページの表を参考にすると、税率は6.126%であるため、

(500,000円-75,925円)×6.126%=25,978円(この金額が所得税額)となります。

つまり、計算式で算出された手取り額は、500,000円-(75,925円+25,978円)=398,097円となります。

50万円のボーナスをもらっても、手取りは40万円を切ってしまうということですね。支給額の5分の1に当たる金額ですから、控除される金額はとても大きいのです。会社からもらっているボーナスにどのような税金や社会保険料がどのくらいかかっているのかを知るためにも、ぜひ一度ご自身のケースを計算してみてください。

社会保険料はなぜボーナスから引かれるの?

実際に計算してみると、「社会保険料が高すぎる」と思った方は、多いのではないでしょうか。実は、このようにボーナスからも社会保険料が天引きされるようになったのは、平成15年に社会保険料が「総報酬制」に改正されてからなのです。

従来の社会保険料は、月々の給与からのみ天引きされていました。企業は給与を支給し、社会保険料(健康・厚生)を納めますが、この社会保険料は従業員と折半しています。給与からのみ社会保険料を支払い、ボーナスからは天引きしないようにすると、従業員の給与の手取り額は減るけれど、ボーナスの手取りは増えます。そして、企業としても社会保険料の金額を抑えることができ、節約が可能となっていたのです。

ボーナス支給額から控除される金額はいくら? 手取り額の計算方法も解説

社会保険料はなぜボーナスから引かれるの?

しかし、これではボーナスを出さない中小企業とボーナスをたくさん出す大企業とでは、納める社会保険料に大きな格差ができます。この不公平を解消するため、ボーナスからも社会保険料を天引きするようになったのです。

従業員にとっても、厚生年金保険料は上がってしまいます。が、その分、老後に受け取る年金支給額も増えますので、支払った分は後々返ってくるということになります。ちなみに、総報酬制の導入によってボーナスからも社会保険料が引けるようになったため、平成15年4月からは厚生年金の保険料率は17.35%から13.58%に引き下げられています。

今回は、ボーナスから引かれる税金や社会保険料について解説しました。どのようなものがボーナスから引かれているのか、また、ボーナスから社会保険料が引かれるようになったいきさつなど、初めて知ったことも多かったのではないでしょうか。

手取り額が少なくなってしまうのは残念に感じますが、ボーナスが支給されることに感謝し、有意義な使い方をしたいものですね。

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。