――今回は、肥薩おれんじ鉄道を舞台に、運転士役に挑まれたお二人ですが、やってみての感想はいかがでしたか?

有村:私は正直、こういった役のお話をいただけるとは全く思っていなかったので、想像もしていなかった世界でした。男社会のような印象がある中、女性運転士の方も実際にいらっしゃって、飛び込んでいる方は、すごくかっこいいなと思いました。決して、若い世代に馴染みのある職業ではないとは思うんです。でも、晶も含めて、運転士を目指したいと思わせるロマンが、やっぱり鉄道にはあるんだな、と思いました。

國村:僕も、今まで特別鉄道に興味がある方ではなかったんです。だけど今回ベテラン運転士の節夫さんを演じて、「あ、俺もやっぱり男の子やったんや」と自覚しました。鉄道を自分で動かしているという感覚はドキドキして、楽しいもので。……と言っても、もちろん実際には動かしてないんですが(笑)。動かしている様に演技をしているだけでも、操作とかを体験することで「やっぱり、こういうことは好きなんだ」と思いました。

――ちなみに、もしお二人が実際に家族だったら、どういう感じになると思いますか?

有村:ええ、どういう感じでしょう?

國村:それは想像したことがないから、わからないね。

有村:でも私は、夜一緒に、國村さんと晩酌がしたいです。「黒千代香」で飲むのが美味しいとおっしゃっていたので。

國村:その話ばかりしてましたから(笑)。撮影中も、僕は黒千代香のお店に行っていました。成長した娘と晩酌って、父親にとっては一番楽しい時間でしょうね。

――家族といえば、作品で出てくる半成人式(10歳で行う成人式)が結構賛否両論を呼んでいて。その難しさが描かれていたのがすごいなと思いました。

國村:この作品で、初めて存在を知ったんですよ。そういう意味でも、吉田(康弘)監督の脚本は非常に今の時代をちゃんと捉えているんだと思います。しかもそれは東京という大都会の今ではなく、同じ日本の中でも肥薩おれんじ鉄道が走る場所の、今。家族というものを通して、日本の同時代の現実を描き出しているし、観ているお客さんにも、自分のこととして受け止めてもらえるはずだと思いました。

早く子供が欲しくなった

――有村さんは、義理の息子と対峙する場面もあり、母親役に挑戦して、感じたことはありましたか?

有村:私自身、母親という立場になったことがないので、晶と同じように、「母親とは何か」「家族とは何か」ということがわからない。自分自身もそうなので、一緒に寄り沿っていければいいかなって思いながら演じました。駿也がすごく人見知りで、せっかく喋れた、と思っても次の日になるとまたゼロに戻ってたり。でも、1カ月鹿児島にいたので、物語が進むにつれて段々と心を開いていってくれて、その距離感が妙にリアルですごく良かったと思いました。

――すごくリアルだったんですね。子供のかわいさに目覚めた、なんてことは。

有村:面白いですよね。素直で、目の前にあるものを何でも遊び道具に使っちゃったりとか本能的に生きてる感じがうらやましいなとも思うし、かわいいなとも思うし、自分も早く子供が欲しいなと思いました。

國村:そうか、それは女性ならでは、やなあ。

――最後にぜひ、この作品を気になっている方に対してメッセージをいただけると嬉しいです。

國村:『かぞくいろ』という映画は、とってもストレートに、ホントに不器用な3人が一生懸命<家族>というものを作り直すお話です。ぜひ、親子で夫婦でご一緒に映画館へいらしてください。

有村:本当に、大きな波があるわけでもない日常を描いていて。だけどピントを合わせた時に、ものすごく繊細で複雑な心情がある作品なんだと思います。観てくださった方に優しく寄り添えるような作品になっていると思うので、ぜひ映画館で観て、家族のあり方などについて考えていただけると嬉しいです。

國村:やっぱり、まず映画館ですよ。これはやっぱり、肥薩おれんじ鉄道からの車窓の景色や、遠くをコトコト走っている電車であるとか、大画面で観ていただかないとこの作品本来の面白さ楽しみが伝わらないと思います。ぜひ、映画館へ。

■有村架純
1993年生まれ、兵庫県出身。2010年女優デビュー。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)で人気を博し、『映画 ビリギャル』(15)で第39回日本アカデミー賞優秀主演女優賞および新人俳優賞を受賞。また、同作と『ストロボ・エッジ』(15)で第58回ブルーリボン賞を受賞。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)では主演を務め、第67、68回NHK紅白歌合戦の紅組司会者に起用され話題をさらう。主な映画出演作は、『思い出のマーニー』(14・声の出演)、『アイアムアヒーロー』(16)、『何者』(16)、『3月のライオン 前編/後編』(17)、『ナラタージュ』(17)、『関ヶ原』(17)など。最新作は『コーヒーが冷めないうちに』(18)、『フォルトゥナの瞳』(19)。

■國村隼
1955年生まれ、大阪府出身。97年に『萌の朱雀』(河瀬直美監督)で映画初主演。以降、国内外の数多くの作品で活躍。クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビルvol.1』(03)、ジョン・ウー監督『マンハント』(18)など海外の作品にも出演、ナ・ホンジン監督『哭声 / コクソン』(17)で第37回青龍映画賞の男優助演賞と人気スタ-賞の2冠を獲得、外国人俳優初の受賞となり注目を集めた。主な映画出演作に、『アウトレイジ』(10)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『あさひるばん』(13)、『渇き。』(14)、『天空の蜂』(15)、『シン・ゴジラ』(16)、『海賊とよばれた男』(16)、『忍びの国』(17)、『パンク侍、斬られて候』(18)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18)など多数。’19年は『アルキメデスの大戦』などが公開予定。