久光製薬は11月28日、都内のコンファレンススクエア エムプラスにて「アレルギー性鼻炎と薬物療法 ―増える選択肢―」と題したセミナーを開催した。セミナーでは、日本医科大学耳鼻咽喉科教室の後藤穰(みのる)准教授がアレルギー性鼻炎の最新治療法などについて講演を行った。

  • 日本医科大学耳鼻咽喉科教室の後藤穰准教授

新しい治療法の舌下免疫療法とは

アレルギー性疾患は、今や「国民病」とも言われるほど患者数か増えている。一口にアレルギー性疾患と言っても、ぜんそくやアレルギー性鼻炎、花粉症、じんましんなどがあり、その内容は多岐にわたる。近年は、特に小学生くらいの世代で食物アレルギーとアレルギー性鼻炎が増加しているという。

アレルギー性鼻炎は1型アレルギーの典型的な疾患で、原因の95%以上がはっきりしている。アレルギーを引き起こす花粉やほこりを吸い込まなければ症状が出にくくなるが、これを「治療」と呼ぶわけにもいかない。そのため、セルフケアとして自宅や家庭で努力してもらえるよう、医師が指導する形になるとのこと。

このようなアレルギー症状を抑える治療法として期待されているのが免疫療法だ。アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」や、治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」があるが、特に後者は自宅で「セルフ治療」ができることもあり、近年は注目を集めている。

舌下免疫療法は治療薬を舌の下に置き、薬ごとに定められた時間を保持した後に薬を飲み込むという手法だ。毎日治療を行うことでアレルギー症状を治したり、長期にわたり症状を抑えたりする効果が期待できる。

アレルギー性鼻炎の発症メカニズム

そもそもアレルギー性鼻炎は、マスト細胞というIgE抗体が細胞に結合することでアレルギー症状を起こす原因となるヒスタミンが放出される。そのヒスタミンを薬物で抑える治療が、鼻炎では昔から行われている。免疫療法は、ヒスタミンが出る前の段階、アレルギー反応の最初の段階での効果を見込む治療法だ。ヒスタミンが出てしまうと、免疫療法は効果がない。できるだけ抗原抗体反応による細胞の発生化を抑えるという狙いがあるとのこと。

日本では2014年以降、スギ花粉およびダニに対する舌下免疫療法用の治療薬が取り扱われるようになった。舌下免疫療法は自宅で行えるメリットがある反面、患者自身が毎日、「治療」をせねばならない。すなわち、患者には根気強さが求められるというわけだ。