アニメーション映画『GODZILLA』シリーズ最終章『GODZILLA 星を喰う者』(監督:静野孔文・瀬下寛之)が、11月9日から全国劇場で公開されている。7日に東京・立川シネマシティにて開催された公開記念イベント『ギドラナイト』では、『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)のフィルム上映と、同作でゴジラ、モスラ、キングギドラの造形を手がけた品田冬樹氏、『GODZILLA 星を喰う者』の瀬下寛之監督、片塰満則造形監督(ポリゴン・ピクチュアズ)によるスペシャルトークショーが行われた。ここでは、トークショー終了後のお三方に改めて『GODZILLA 星を喰う者』の見どころについて、熱く語ってもらった。※この記事の内容は映画のネタバレを含んでいる箇所があります。まだ映画をご覧になっていない方には鑑賞後に読むことをお勧めいたします。

  • 左から品田冬樹氏、瀬下寛之監督、片塰満則造形監督

――品田さんは『星を喰う者』をご覧になったとき『GMK(ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃)』との共通点を感じられたことなんてありましたか?

品田:ギドラがゴジラに"噛みつく"ところ(笑)。今までにキングギドラがゴジラに噛みついた事例は『GMK』しかなかったですからね。『怪獣総進撃』(1968年)ではアンギラスに噛みついていたことがあったけれど。

――今回のギドラはゴジラに噛みついたり、長い首を巻き付けたりするのに適したスタイルをしていましたね。片塰造形監督としては、どのような点に重きを置いて作られたのでしょう?

片塰:これは瀬下監督の作られた設定なんですけれども、実体があるような、ないようなという部分。そこをCGでどのように表現するか、というのは現場でもかなり苦労したところでした。

品田:あの映像表現が絶妙だと思いました。ギドラが果たしてその場にいるのか、いないのか。第三者からはゴジラが幽霊と戦っているように見えるという。

――第二章『GODZILLA 決戦機動増殖都市』でもそうでしたが、いわゆるゴジラと敵怪獣が真っ向からバトルを行う、という演出を意識的に避けているのが、アニゴジの特徴なんですね。怪獣バトルよりも、人間キャラクター同士の重厚なやりとりに重きを置かれている印象です。

品田:実写のイメージが強いゴジラを、アニメのテイストに合わせようとしたときの"答え"の出し方が、あれだったんだなと思いましたね。三本目を見てかなり納得したというか、すごく見応えのある映画として受け入れました。

――アニゴジは前2作とも、大絶賛するファンの方がいる一方で昔ながらの特撮ファンから厳しい意見が出たりしましたけれど、瀬下監督がトークイベントでお話されていたように、厳しい評価を受けてズタズタになった心を品田さんが救ってくれたような感じですね。

品田:『GMK』のときだって、同じようなものだったんですよ。ゴジラ、モスラ、ギドラの設定をかなり大胆に変えたものだから、昔ながらの怪獣ファンからひどくけなされた。

――長年ゴジラファンをやっていて気付いたのですが、ゴジラ映画の新作は公開当時の評価こそ賛否両論なんですけれど、10年くらい経つと評価が上がってきて、20年も経てばノスタルジーも加わってとても愛すべき映画になっていくんじゃないかと思います。

瀬下:わかった! ゴジラ映画はワインと同じなんだ(笑)。月日が経てばどんどん芳醇な味わいに……。勉強になるなあ。

――一方で、アニゴジはこれまでの実写ゴジラ映画やアメリカ版とは違い、アニゴジならではのファン層を獲得しているところもありますね。そんなファンたちにとっては今回の『星を喰う者』は"アニゴジ最終章"として絶対に観ておかないといけない作品になっていると思います。改めて瀬下監督から映画の見どころを一言、お願いします。

瀬下:けっこう心の奥深くに"刺さる"映画になっていますよ。刺さって抜けない、反りのついている針みたいな。

――『GODZILLA 怪獣惑星』『GODZILLA 決戦機動増殖都市』と、人間キャラクター同士の重いドラマが続きましたが、最終章となる本作にもその要素が受け継がれているわけなんですね。

瀬下:今までの2作を受ける形で『GODZILLA 星を喰う者』は"最強に重い"ドラマが繰り広げられます。観終わった直後、2秒くらいは"絶句"する作品になったんじゃないかな、と思います。

品田:開巻早々から、アジテーションに近い"あるキャラクター"の持論が展開されるんですよ。それぞれの登場人物の言葉の重みがすごくて、あれがひとつの中毒性になりますよ。例えるならば、丹波哲郎さんの演説に近い(笑)。

瀬下:今回の作品で一番大きいのは、人類、エクシフ、ビルサルド、フツア4種族の思想信条の"対立"なんです。それが根底にありまして。最後にはメトフィエスがそれこそ朗々と"語る"あたりとか、やっぱり最後はこれかな、と思いながら作っていきました。

品田:"語り"で魅せる『ゴジラ』というのは、ゴジラ映画の新機軸ですよね。まさに『日本沈没』(1973年)や『ノストラダムスの大予言』(1974年)での丹波哲郎リスペクトというか(笑)。

瀬下:1973年の『日本沈没』はとても好きな映画です。日本が沈んでいくスペクタクルもいいのですが、物語の本質は「国土を失った日本人が流浪の民になって、どうなるのか?」という部分を語っているでしょう。たとえ特撮シーンがなくてもドラマとしてしっかり成立できているというところに、非常にシンパシーを感じます。

片塰:先ほど瀬下監督が話されていた"4種族の対立"を明確化する意味もあって、キャラクターデザインにもそれぞれの違いが出るように努めています。瀬下監督、静野(孔文)監督、脚本の虚淵(玄)さんが考えられた、それぞれの民族の"哲学"……どっちが正しいとかではなくて、自分たちなりの正義を信じている者同士がぶつかりあうというのを、デザイン面でもはっきりさせています。

――トークイベントでもお話されていましたが、実写のゴジラシリーズとはまったくかけ離れた世界観で独自の展開を行っているアニゴジでありながら、「エクシフ」のネーミングが『怪獣大戦争』(1965年)の「X星人」からだったり、「ビルサルド」が『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)『メカゴジラの逆襲』(1975年)の「ブラックホール第三惑星人」だったりと、東宝怪獣映画からインスパイアされている部分がたくさん隠されているんですね。こういうところからも、アニゴジ三部作がオリジナルの「ゴジラ」シリーズに敬意を表していることがうかがえます。

瀬下:どんな作品のどんな部分が、アニゴジのどこに"引用"されているかなどは、公開された後の舞台挨拶でネタバレのOKが東宝さんから出た段階で、ぜんぶ明らかにしますよ。今までずっとガマンしていたんです(笑)。『GODZILLA星を喰う者』、ゴジラファンの方、そしていままでゴジラをあまり観ていなかった方もぜひご覧になってください!

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