TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』などで知られる脚本家・野木亜紀子がNHKに初めて書き下ろしたドラマ『フェイクニュース』(総合 27日21:00~21:49)。大手新聞社からネットメディアに出向した東雲樹(北川景子)が、インスタント食品への青虫混入事件に端を発するフェイクニュース騒動に立ち向かう姿を描く。

20日に前編が放送されると、TwitterなどのSNSでも、ネットメディアの人間、一般視聴者問わず「他人事とは思えない」「リアルすぎる」と多くの感想であふれた。実際に、記者役の北川、矢本悠馬、新井浩文だけでなく、SNSに青虫混入の投稿をした謎の男役の光石研、それを軽い気持ちで拡散する大学生役の金子大地、さらには県知事選に立候補する元官僚役の杉本哲太など、様々なキャラクターが登場し、誰もがドキッとしてしまうような展開のまま、大きな広がりを見せた物語は、後編を迎えようとしている。

今回は、同局の北野拓プロデューサーにインタビュー。もともとドキュメンタリーを手がけていたという点が共通する、北野プロデューサーと脚本家・野木亜紀子が、どのように同作を作り上げていったのか、話を聞いた。

  • 北野拓プロデューサー

    北野拓プロデューサー

2作目のテレビドラマ

――北野さんは、テレビドラマを手掛けるのはこれが2本目(プロデュース作としては1本目)ということですが、それまではどんなことをされていたのでしょうか。

記者採用でNHKに入って、最初は沖縄放送局で警察担当の記者をしていました。沖縄なので記者として基地問題や沖縄戦などを取材させて頂きました。その後に宮崎放送局にいき、そこでは記者からディレクターになって、ドキュメンタリーを中心に、情報バラエティやスポーツ中継など、なんでもやりました。木皿泉さんの脚本で、温水洋一さん、白石加代子さん、ケーシー高峰さんに出演して頂いた『呼吸する家』というFMシアターのラジオドラマを作ったりもしていたんです。

――木皿さんが脚本のラジオドラマを手掛けるということは、やっぱりドラマを作ることに興味があったということなんでしょうか。

もともと就職活動のときは、民放の就職試験はドラマ志望で受けていたりして、学生時代は報道もドラマ作りもどっちもやりたいと思っていたんです。

――NHKの地方局というのは、どんなところでしたか?

地方局の方が企画が通りやすいということはあったかもしれないですね。自分で企画を立てることが歓迎されるので。宮崎放送局にいたときに、BSプレミアムで放送した『宮崎のふたり』という地域発ドラマも作ったんですが、そのときの脚本は安達奈緒子さんでした。木皿さんも安達さんも、企画をちゃんと説明したら、地方局とか枠が小さいとか、そういうことは関係なく引き受けてくださるし、地方局はそもそも人数が少ないので、0から100まで自分が背負うので、任される仕事の幅が広いということはあったかもしれません。

――そうやって宮崎局でドラマを撮って、その後、東京のドラマ部にきて、この作品が初めてプロデュースする作品だそうですね。

もともとドラマ部に行きたいと思っていました。ドラマで世の中に問題提起をしたり、そのことによって人の心を掴むものが作れないかなと思っていたんです。『宮崎のふたり』も、社会性のあることをベースにしたある種のエンターテインメントだと思っていて、一貫して、今起こってることをドラマに取り入れたいという思いがあります。ただ、東京のドラマ部では助監督から始まるので、ドラマを作る枠を僕が持っていたわけではなくて、そんなところから野木さんにはご一緒してもらったのでよく引き受けてくださったなと……。

――野木さんとの出会いはどういうところからなんでしょうか。

特にどこで放送できるという枠も決まっていない中で、雑誌の編集者を介して企画をいくつか持って行ったのが最初です。そのときに野木さんは、誤報を扱ったドラマがやりたいんですと言われていて、僕も野木さんもフェイクニュースに興味を持っていたので、それで持ち帰って企画書を作りました。ただ、なかなか題材としては挑戦的な企画なので、野木さんが書きたいと言ってくれても、会社で通るのかという心配がありました。実際、企画が通るまでに半年くらいはかかりましたね。

――その半年というのは、どんなことがあったんですか?

プロットの中に展開を書くだけでなく、感情の部分をもっと詳しく書いてほしいと言われたり。そういうことを何度か書き足してみたりとか。まだ僕がドラマ部に来て番組を手掛けたことがなかったので、企画を入念に練り直さないと説得できないというところがあって、企画が通る保証もない中、よくこんな若造と野木さんが一緒にやってくれたなあと感謝しています。