マンションに住むには、借りて住む賃貸と、分譲された部屋を買って住む方法とがあります。その中で、分譲賃貸という言葉があるのをご存知でしょうか。「分譲賃貸マンション」って通常の賃貸マンションと何が違うの? 誰でも借りることができるの? と疑問に思う方もいらっしゃるかも知れません。

そこで今回は、分譲賃貸物件にはどのような特徴があるのか、一般的な賃貸物件との違いやメリット・デメリットのほか、借りる際の注意点などについて一つひとつ見ていくことにします。

分譲賃貸物件とは

そもそも分譲とは?

「分譲」とは分割譲渡の略称であり土地を分けて売ることです。分譲するために区画整理された土地のことを「分譲地」、土地と建物をセットで販売している物件を「分譲住宅」といいます。したがって分譲住宅を購入すると土地、建物双方の所有権を取得できます。また、一部屋ごとに分けて販売するマンションのことを「分譲マンション」といいます。

分譲賃貸とは

一般的に分譲賃貸というと分譲マンションを指すので、分譲賃貸とはマンションを購入したオーナーが貸し出している物件のことです。

分譲が賃貸に出される理由

なぜ販売用だった物件が賃貸に出されるのか、理由は大きく2つあります。

1.所有者の転居

分譲賃貸マンションを購入して住んでいた所有者が転勤などにより引っ越すことになり、空室にしておくのはもったいないからと貸し出すケースがあります。または転居が決まって売却を試みるも買い手がつかず、賃貸物件にした場合もあります。

2もともと投資目的での購入

最初から投資目的で購入された物件という可能性もあります。家賃収入を得るために購入し、賃貸に出しているケースです。

通常の賃貸物件との違い

賃貸マンションは、所有者が家賃収入で利益を得るために建てられる投資目的の物件です。投資に対する利回りが重視されるため、設備や仕様は標準的という物件が多い傾向にあります。

対して分譲マンションは、ほとんどの人が今後の人生を過ごす住まいとして購入します。永住目的の入居者を募るので、室内や建物全体の設備や外観、防犯対策などが賃貸マンションに比べ高水準に設定されています。

分譲賃貸のメリット

建物のクオリティーが高い

分譲賃貸の特徴は建物のクオリティーが高いことです。頑丈な躯体を使用して耐震性を高めたり、プライバシー保護のため壁を厚くしたり遮音性のよいフローリングを使用したりと、防音性にも配慮がほどこされています。

最新のシステムキッチンやさまざまな機能が備わったバスルームのほか、人気の床暖房など、室内設備が充実しているケースが多いのも魅力です。

充実しているのは専有部分だけではありません。外観はもちろん、マンションの顔ともいうべきエントランスやラウンジといった共用スペースで、こだわったデザインやインテリアによって高級感が味わえる物件もあります。

もともとが販売用物件ですので、住人専用の多目的ルームや、子どもが遊べるプレイルーム、不在時に荷物を受け取れる宅配ボックスなどの共用設備・施設が完備されているケースが多いのも魅力のひとつですね。

セキュリティ面の充実・安心の防犯対策

分譲賃貸マンションはセキュリティ面が充実していることが多く、以下のような設備が設置されている物件が多いのも魅力です。

TVモニタ付インターホン

来客の際、インターホン越しに相手の顔が見えるので安心です。録画機能がついたものだと、不在中に誰が訪ねてきたかわかって便利です。

オートロック機能

分譲賃貸の場合は、ほとんどの物件にオートロック機能が備わっています。正面エントランスのほか別の入り口もオートロックになっているので、部外者の侵入防止に役立ちます。

防犯カメラや管理人

建物の中や、駐輪場や駐車場などにもカメラが設置されているのが一般的です。また、マンションによっては管理人や警備員が常駐していることもあり、より安心感を得ることができます。

築年数にもよりますので、すべての物件にこのような対策がとられているとはいい切れませんが、多くの分譲賃貸では防犯対策に余念がありません。

住人同士の人間関係が比較的良好

分譲マンションは、老後も住み続けようと思って購入する人が大半です。そのためお互いが長く気持ちよく暮らせるよう、管理規約やマナーへの遵守意識が強いといわれています。こうした意識は共同生活を円滑化し、マンション内の人間関係を良好なものにする一因となっています。

分譲賃貸のデメリット

賃料が若干高い

おしゃれな外観にしっかりとした構造、充実の室内設備、安心の防犯システムなど、一般的な賃貸と比べると高いクオリティーを誇る分譲賃貸。賃貸でありながらグレードの高い物件に住めるのは魅力的ですがその反面、家賃が少々高めに設定されているケースもあります。

整った環境を思えば賃料の違いは当然といえますが、同じような立地・広さの一般賃貸と家賃を比較した場合「契約したい気持ちはあるが、どうしよう……」と二の足を踏んでしまうこともあるかもしれません。細かい立地条件や築年数、設備など若干の違いはありますが、「少々高くてもここに住めるなら許容範囲」と思えるなら、契約を検討してみてはいかがでしょうか。

建物全体と部屋ごと、双方の規約がある

通常の賃貸マンションだとオーナーは建物全体の所有者ということになりますが、分譲賃貸の場合は、当然ながら部屋ごとにオーナーが存在します。したがって、分譲賃貸に住むとなると「マンション全体の管理規約」のほか、「オーナーとの管理規約」というのも守らなければなりません。

たとえば、マンションの管理規約では不可となっている事項でも、部屋のオーナーとの管理規約では可となるケースや、その逆のケースなどがあるので注意が必要です。2つの規約が存在する分譲賃貸では、さまざまな点において確認事項が多くなります。

定められた入居期間

たとえば転勤のため一定期間貸し出している物件だとしたら、オーナーは自分が転勤から戻ってきたとき速やかに部屋を明け渡してほしいと思いますよね。

一般的な普通借家契約の場合、借主が住み続けたいと希望するかぎり、オーナーは正当な理由なくしてそれを拒むことができないとされています。そのため、分譲賃貸の場合は一般的な賃貸契約とは違い、「定期借家契約」を結ぶことが多いようです。

定期借家は契約期間が決められていて、契約期間が満了すればオーナーに部屋を明け渡さなければなりません。そのため契約期間が満了するまでに、新しい住まいについて考えておく必要があるのです。

しかし期限がきてもオーナーと借主双方が合意すれば、新たに契約を交わし継続して住める場合もあります。

分譲賃貸物件を選ぶときの注意点

管理会社が関与しているかどうか

オーナーと借主とのトラブルで多いのが、生活家電といった備え付け設備の取り扱いや修理に関することと、退去時にかかる原状回復費用についてです。

備え付けの設備が古くなったり故障したりしたとき、買い替えは可能なのか、修理の場合は誰がどこの業者に依頼するのか、そしてその費用はオーナーと借主のどちらが負担するのかなど、さまざまなトラブルになることがあります。また退去時に、時として高額の原状回復費用が借主に請求される場合もあります。

こうした事態を避けるためにも、分譲賃貸物件を契約する場合、オーナーと直接契約をするのか、もしくは間に管理会社が入っているのかどうかを確認しましょう。

オーナーと直接契約の場合、もしもオーナーが賃貸業に不慣れな人だと、入居中のさまざまなトラブルに対しスムーズな対応ができないことも考えられます。一方、管理会社はマンション管理のプロです。トラブルが起きた際、間に管理会社が入っていれば、オーナーとの直接交渉をせずに済みますし、対処も早く、スムーズな解決が期待できるでしょう。

管理会社が管理しているのはどこまでか

通常の賃貸であればマンション全体が大家の所有物になるので、トラブルが起きても所有者である大家の裁量でいろいろな対処ができます。しかし分譲賃貸の場合は部屋ごとにオーナーが異なるため、権利関係が複雑になりやすく、できることに限界があります。

たとえば、隣や階下の部屋に影響が出るような水漏れが起きた場合などは、水漏れの原因が何で、どこにあるのかを突き止めることが重要になってきます。

その原因となった場所が専有部分なのか共有部分なのかによって、対応が異なるためです。対応でもめたときには、管理会社が管理しているのはどこまでかをはじめ、権利関係の知識が必要になる場合があるかもしれません。

まとめ

購入しなくてもグレードの高いマンションに住むことのできる分譲賃貸。ご検討の際は、ご自身の環境にとってベストな選択ができるようメリット・デメリットをよく吟味することが大切です。

契約を結ぶ際は、あとから「しまった!」ということのないよう、管理規約についても十分に確認をし、後々トラブルに発展しないように注意しましょう。


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