「明日は出社日でしたっけ?」
「いえ、明日は午後から子供の学校行事がありますので、家で仕事です」

これは、都内に本社を置く某大手企業内での会話だ。テレワークの導入を行う企業が少しずつ増え、会社員であっても出社せず自宅で仕事をする人が増えてきている。

総務省の統計データ(平成29年)によると、従業員300人クラス以上の企業で2割以上が在宅勤務の制度を導入し、今後の導入を検討している企業も含めると3割にもなる。

政府も、働き方改革の一環として、テレワークの推進に力を入れている。その背景として影響が大きいのが、昨今の人手不足だ。人口減により働き手が減っている中では、女性の就業を増やす必要がある。そのような中ででは、結婚や出産等をきっかけに退職する方を減らし、育児をしながらも仕事を継続できる環境整備が必要不可欠だ。

働く社員の方から見ても、在宅勤務が可能になれば、通勤にかかる時間が削減され、その分を家事・育児、趣味にあてることができるようになる等、ワーク・ライフ・バランスの向上につながる。

著者が経営する会社では、2007年に在宅勤務を導入した。現在は、60名以上のスタッフ全員が、役員、管理職等の役職と関係なく、在宅勤務を行っている。朝礼やミーティング、クライアントとの商談も、大半がTV会議だ。時には飲み会も、TV会議でつないで行われることもある。

在宅勤務で、最もはかどるのは、まとまった時間を集中して行う仕事だ。あなたも、文書や資料等を作成している最中に、近くの席の人から何度も話しかけられて集中できず、イライラした経験はないだろうか?

著者も会社員時代、そのようなことが耐えがたく、調査レポートや提案書の作成等の際には、上司と相談の上、自宅で行う許可を頂いたことが少なからずある。働き方の改革により、こうした生産性の向上にもつながっていくのは、とても好ましいことだと言えるだろう。

一方で、働く場所が変わることで、逆に不便を強いられる部分があるのも確かだ。それで、生産性が落ちるのであれば、元も子もない。

自宅仕事のおすすめガジェット5選

そこで、「これさえあれば自宅仕事がはかどる!」という、達人おすすめガジェットを5つ紹介することにしよう。

1) ファイル共有ツール「Dropbox」
会社と自宅で使用するパソコンが異なる場合、必要なファイルが会社のパソコンだけにあり、仕事を中断……ということが起こり得る。そんな中、「Dropbox」を使うと、会社のパソコン内のデータと自宅パソコンのデータをリアルタイムに同期可能だ。出社時に上司から、「あのファイルはどこにある?」と聞かれた際、「すみません、自宅のパソコンです……」といった地雷を踏むようなことが防げる。

2) 業務用チャットツール「ChatWork」「Slack」
会社であれば、隣の席の人に、ちょっと聞きたいことを尋ね、5秒10秒で解決できてしまえることも多い。在宅勤務ではそれが難しく、メールで「お疲れ様です、~の件ですが……」のように相談することになるが、メールは想像以上の時間を要してしまうもの。それを防ぐのがチャットツールだ。1行で質問し、回答も1行で頂くというように、隣の席の人との会話のようなことがオンラインで実現できる。なお、SNSのサービスでもそういったツールはあるが、ビジネスで使用しやすい形にしたサービスに「ChatWork」や「Slack」がある。

3) 予定共有ツール「Googleカレンダー」
あなたが自宅で働いている姿は、会社にいる人達には見えない。もしかしたら、上司等からは、「今日は一体、何の仕事をしているのだ?」「あいつは自宅で本当に仕事をしているのか?」と疑われる可能性がゼロではない。そこで、あなたの業務予定を共有することが重要で、そのツールとして代表的なものが「Googleカレンダー」だ。「DMを作成中ですので15時までは電話しないでください」等と予定に入れておけば、邪魔される心配をせずに仕事に集中できるようにもなる。

4) TV会議システム「Zoom」
仕事に煮詰まり相談したいことも、時にはあるだろう。そんなとき、作成途中の資料のパソコンの画面を共有しながら、TV会議を行いやすいツールに「Zoom」がある。スカイプ等の類似ツールはあるが、Zoomの優れているのは、(1)事前のインストールが不要であること、(2)操作が直感的で迷わないこと、(3)安定していて落ちにくいこと、(4)複数人数が参加してもパソコンに負荷がかからないこと等である。

5) マルチモニター
1つのパソコンには、画面が1つのみ付いているとお思いの人は多いかもしれない。が、実は、ケーブルを使って複数の外付けのモニターに接続することが可能だ。これを行った結果、「世界が変わった!」という人も多い。外付けモニターにはWeb検索結果の画面を表示させたまま、パソコンのモニターではWordで書類作成を行うといったことが可能だ。画面の切り替え頻度が減るため、生産性が大きく向上する。会社では机のスペースの制約上、実現が難しい場合でも、自宅で行うことは可能だろう。

以上の5つを導入するだけでも、効率よく仕事が進む自宅オフィスが実現することは間違いないと言える。導入いただけたら嬉しい限りである。

※画像と本文は関係ありません

著者プロフィール: 中山匡(なかやまただし)

ビジネスモデル・ロードマップ・デザイナー。一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール代表理事。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学院修了後、フランチャイズ本部立ち上げ支援最大手の経営コンサルティング会社に入社。31歳で起業し、「月刊アントレプレナー・コーチング」を創刊。2009年には「在宅秘書サービス」を創業。現在、150社以上に導入。1,500名以上の秘書が登録。ビジネスモデルのロードマップを描けるコンサルタント養成にも力を入れ、「ビジネスモデル・デザイナー認定講座」を開講。著書に『失敗をゼロにする 起業のバイブル』(かんき出版)がある。