ロマンのない時代?

――山本耕史さん演じる松亀の「今はロマンのない時代」という台詞に共感したのですが、今の時代にも通じるのかな? と思いました。

ロマン、ないですか?

――ないかもしれないです(笑)。

そこがひっかかったってことは、相当ロマンがないのかもしれないですね(笑)。情報が氾濫してるだけ、じっくり味わうとか、贅沢に、無駄に時を生きるということがしにくい時代なのかな。そういう意味では僕も、ロマンが薄れている時代なのかなという気はします。だからこそ、こういう見境のない夢に向かって走る姿というのは、現代人にとって憧れるところがありますよね。知らず知らずのうちに失ってしまっているものが、あるかもしれないから、この作品に流れる、這いつくばってでも生きていく生命力を見るといいなぁって思います。

――「やってみなはれ」精神がキーになりますが、内野さんご自身がこれまでに思い切って行動したという経験はありますか?

なんでもやってみなければわからないことって多いですけど、僕自身は実は昔から慎重派なところがあるんです。小心者なんでしょうね。「石橋を叩いて渡る」という言葉がありますが、僕は「石橋を叩き割って、全部砕いちゃってから、『しょうがねえや』って泳いでいっちゃう」タイプ(笑)。だから「まずやってみる」ということは本当に大事だと思います。

人間って、ネガティブになれば「なんだこりゃ、ダメだよこんなの」と、どんな言い訳も用意できるんです。でも、やってみたら全然違うことって、多くないですか? 僕自身、そういうところがあるからこそ、「できない証明をするより、できる証明をする生き方をしたい」という言葉が好きなんです。

「できない証明」って、簡単なんですよね。大人になればなるほど口実が上手になっていくから、「君、これは難しいよ」といくらでも言えてしまう。多面的に分析できる、という良い部分もあるかもしれないけど、「ただ言い訳を用意してるだけなんじゃない?」ということもたくさんあるから、この作品の「やってみなはれ」というメッセージがすごく好きで、萬治郎の生き方に「そうだよね」と勇気をもらえるのだと思います。

逆境の時にどれだけ踏ん張れるか

――内野さんが作品をご覧になって、影響を受けたというシーンはありましたか?

関東大震災で、打ちひしがれて全て失ってしまったミドリさんを助けるシーンです。萬治郎が「この国はまだ踏ん張れる、いつかきっといいものをこさえるから待ってておくなはれ」と言うのですが、「こうありたいものだ」と思いました。これだけ厳しい時代、逆境の時にどれだけ踏ん張れるかというスピリットに感動しました。

――最後に、ぜひテレビ東京さんへの印象を教えてください。

子供の頃は、つい見逃しがちでした(笑)。でも、『ヤンヤン歌うスタジオ』を見てましたね! あのねのねさんがテーマソングを歌っていて、東京タワーのローアングルから始まるんですよ。最近は、テレ東さんの番組枠自体が受賞されてたりもして、すごく奇抜なものを作っているイメージがあります。深夜帯は特に、「こういうことやっちゃうんだ」「こんな監督が演出してるんだ」とか驚きます。金がないとか、自虐ネタを平気で出しているところも偉いと思います(笑)。

■内野聖陽
1968年9月16日生まれ、神奈川県出身。ドラマ・舞台などで活躍。映画『(ハル)』(96)で、第6回日本映画評論家大賞 新人賞、第20回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。主な出演作は舞台『ハムレット』(17)、映画『罪の余白』(15)、『海難1890』(15)、テレビはNHK大河ドラマ『真田丸』(16)、特集ドラマ『どこにもない国』(18)、TBS『ブラックペアン』(18)など。