アイウエアブランドとして知られる「JINS」が、2017年12月に会員制ワーキングスペース「Think Lab(シンク・ラボ)」をオープンした。“世界一集中できる環境”を目指してつくられたこの空間には、「音」や「光」、「香り」など、至る所に集中力を高めるための仕掛けが詰め込まれているという。そして現在、同スペースでは体験会も実施しているとのこと。早速その超集中環境を体感しに伺った。

  • 7月17日よりスタートした体験会は、平日のみ15時~開催している。料金は1,500円、会員登録不要で、オープンデスクエリアとカフェエリア限定で2時間の利用が可能

理にかなった超集中環境

東京都千代田区、飯田橋グラン・ブルームの29階にスペースを構えるThink Lab。オープンデスク、ミーティングルーム、カフェスペース、リラクゼーションルーム、電話用ブースなどで構成された空間は、予防医学や行動科学の研究者である石川善樹氏と建築家の藤本壮介氏監修のもと、“集中”に必要な条件をデザインに落とし込んでいる。

  • オープンデスクは162席を用意

集中には、リラックス状態とストレス状態が程よく共存していることが重要であるそうで、Think Labはその共存の成功例である「神社仏閣」から大きなヒントを得ている。「鳥居」から入り、「参道」を進み、開けた場所で「手水」を行い、「拝礼」を経て「本殿」へ。より深い集中へ入り込むためのプロセスとして、この構造が適しているのだ。

  • 「鳥居」にあたるThink Labの入口は、15時でもこの暗さ。中央にあえて壁を立て、その両サイドに隙間があるまさに鳥居のような構造には、集中のスイッチ切り替えを促すという狙いも

早速入り口をくぐると、24mの真っ暗な通路が。石畳の床はまさに「参道」の趣だ。歩を進めると、うっすらとウッド調の香りが漂っていることに気が付く。聞くところによると、弘法大師・空海が開いた真言密教の聖地である高野山(和歌山県)のコウヤマキの香りを採用しているのだという。

  • 自分の足音がコツコツと響く中で五感が研ぎ澄まされる。気分はさながら試合直前のボクサーだ

「参道」を抜けた先のドアを開くと、視界が一気に開ける。暗い通路から一転、明るさと広さ、そして緑が目の前に現れることで、脳と身体がリラックス状態に突入。これも深い集中に入るためのポイントなのだとか。

  • このスペースは、神社仏閣でいうところの「手水」にあたる部分。光沢感のある床材や、視界に入る緑の割合(緑視率)など、ここでも深い集中のために計算されつくした工夫が散りばめられている

  • 太陽の動きに合わせて、照明の光量や色味も調節。光によって体内時計を整える効果を狙っているとのこと。陽が落ちた後は、写真のような雰囲気に

  • ワークスペースへ突入する前に、畳のお座敷を発見。このスペースは、昼寝やヨガ、マインドフルネスなど、さまざまな用途に活用できる

パートナー企業との連携による工夫が多数

そしてお待ちかね、メインとなるワークスペースの登場。整然と並んだデスクは、全て同じ方向を向いている。これは、他人と目が合うことで集中が阻害されるというシチュエーションを生まないようにするためである。さらに、耳を澄ますと足元からは水の流れる音が、天井からは小鳥のさえずりがかすかに聞こえてくる。目を閉じれば、もはやここはパワースポット以外の何ものでもない。そのほかにも、パートナー企業との連携により至る所にクリエイティブワークをサポートする仕掛けが。

  • 自然音は、肌で感じられる高周波なサウンドをハイレゾ音響システムで再現。また、椅子の種類をさまざま用意していることにも意図があるという

  • オープンデスクには、目的に応じた3種類のデスクと椅子が並んでいる。ロジカルな思考(収束思考)をするときは前かがみになり、アイデアを出すとき(発散思考)には上を向く。思考の種類に応じてそれぞれ最適な姿勢をとれるように、デスクと椅子に選択肢を設けているというわけだ

  • 座面の小さな「アーユルチェアー」は、脚を開いてまたぐような形で座ることで骨盤が立ちやすくなる。また、視線が下に向くことで前頭葉が刺激され、論理的な思考にシフトできるとのこと。短時間で集中したい場合や、ロジックチェックの仕事に適している

  • 独創的な形状の背もたれが腰から背骨にフィットして上体を支える「CHAIR Jr」。上半身の可動性が高く保たれ、座ったままでの作業による疲労感を軽減してくれる。この椅子は、収束思考と発散思考のどちらにも対応できるように調節が可能となっている

  • 低座・後傾という独特の姿勢を提供する「Atlas Chair」。抜群のフィット感で、さまざまな体型に合ったベストなポジションをつくりだし、視線を上向きにすることでアイデアを創出しやすい状態に導く

  • 人間工学に基づいたワーキングポジションを提案する「Cruise Desk」は、天板の高さや角度をスムーズに調整できる。低座・後傾というワーキングポジションに対応し、腕や肩、首、目など、身体への負担をトータルに和らげてくれる

  • 実際に座ってみると、目の前にはなかなかネイチャーな視界が。これはたしかに、オフィスのデスクよりも圧倒的にリラックスできる。緑視率を考え抜いているだけでなく、植物の種類もストレス軽減に効果があるとされているものをチョイスするというこだわりっぷりに脱帽

  • 希望者には、JINSが開発したメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」の貸出しも行っている。同デバイスはセンシング技術を利用し、まばたきの回数、視線の移動、姿勢などを記録・分析することで集中力を計測してくれるという。集中する上で、どの椅子が自分に適しているかを確認してみるのも面白いかもしれない

オープンデスクの利用料は、7万円/月(初回登録費5,000円、日数無制限)。3人まで利用可能なチーム登録は、15万円/月となっている。そのほか、個室をオフィスとして活用できる「プライベートデスク(メンバー専用)」や、「ミーティングルーム(要予約)」も完備。プライベートデスクの利用料は、30万円/月に追加で利用人数×7万円が必要となる。ミーティングルームは、1,500円/30分~利用可能。

  • プライベートデスクは現在8部屋を展開

  • ミーティングルームは、4人収容可能なSサイズから12人収容可能なLサイズまで全4室を用意。各部屋にホワイトボードとモニター、RGB/HDMIケーブルを常備している

  • オープンスペースやミーティングルーム内など、Think Labにはさまざまな場所に円筒状の物体が設置されている。これは、「Netatmo(ネタトモ)」が手がける「ウェザーステーション」というIoTデバイス。温度や湿度、気圧、二酸化炭素濃度などを計測する機能があり、それらの数値は専用のアプリでスマホから確認できる。自分が集中しやすい環境をジャッジする際に活用してみよう

  • 会員限定となるが、ロッカーも2,000円/月で利用可能

カフェスペースにもイノベーションのヒントが

オープンデスクスペースから扉を1枚隔てた外には、無料で利用できるカフェスペースが出現。血糖値をマネジメントするための間食アイテムなど、最後まで集中するための要素が詰まっている。

  • Think Labのユーザー同士でコミュニケーションを取ることで、新たな発見やひらめきも生まれるかもしれない

  • 集中には欠かせないカフェインを含むコーヒーや、反対にリラックス効果がある紅茶などもラインナップ。急激に血糖値を上げない低GI食品で小腹も満たせる上に、シーブリーズのリフレッシュシートまで全て無料で利用できるそう。ちなみに、オープンデスクでの飲食は原則禁止(アメ・ガムなど音やニオイの出ないもの、ふた付きドリンク可)となっている

  • 広々としたソファ席は、打ち合わせにも◎

  • カフェスペースの一角には電話ブースが

  • 事前予約制、1,000円/20分のマッサージルームも2室備えており、国家資格を持った施術師が男女1名ずつ常駐している

  • 出口までのルートはエントランスとは別の道となる。再度暗い参道を歩き、脳に対して行きと帰りの体験を意識させる

次々に新しいコミュニケーションツールが登場し、それぞれのオフィスにおける働き方も日々アップデートされていることだろう。しかしその一方で、「オフィスにいるとなかなか仕事がはかどらない」と感じているビジネスパーソンも少なからず存在するはずだ。そんな人のために、JINSが提示してくれた新たな働き方「Think Lab」。その空間には、深い集中を生み出すヒントが無数に転がっていた。普段働いているオフィスに取り入れられそうな要素を学ぶだけでも、同体験会は参加してみる価値があるだろう。

※価格は全て税別
※通常、施設内での撮影は原則禁止