――たとえば、毎回冒頭の「あらすじ紹介」のナレーションを万丈役の赤楚衛二さんとのかけあいでやられているときみたいな、軽快なトーク合戦で進めるコミカルな一面などは、犬飼さんの中にある要素なのでしょうか。それともあそこでは戦兎になりきってトークをこなされているのでしょうか。

どっちなのかなあ(笑)。結果的に、僕が戦兎を演じている以上、戦兎(の要素)も僕にあると思うんです。ですから、どちらでもあるのかな……というのが答えですね。戦兎を演じながら、ときどき素の犬飼貴丈が出ているという意味で。むしろ、7月に出演させていただいた「テレ朝夏祭り」などのイベントのほうが、戦兎を「演じている」度合いが高いですね。大勢の子どもや親御さんに直接触れ合うというのはかなりの緊張を要しますから、戦兎という役としてステージに出ているんだと思うことで、緊張をほぐしています。

――第38話「マッドな世界」では、エボルトの憑依から逃れた戦兎に、元の葛城巧の記憶だけが残った状態となりました。今までの戦兎とは異なる性格である葛城の人格を演じたときは、やはり難しかったのではないですか。

難しいというより、どちらかといえば楽しかったですね。意識的に声のトーンを下げて、戦兎との違いを大きく表現したいと思って演じました。ずっと戦兎を演じ続けていましたから、その合間にちょっと別の人格を演じるというのは楽しいんですよ。例えるならば、いつもハンバーガーばっかり食べていたら、たまにはチーズバーガーもいいよねっていう(笑)。そういった演技についての「欲」が満たされた瞬間でしたね。

――「エボルトが憑依したときの戦兎」なんていうのも、いつもの戦兎では絶対観られないような悪らつそのものの表情で、あれも強いインパクトがありましたね。

あのときの映像を観たプロデューサーから、「エボルトに乗り移られているときがいちばん、生き生きしてるね」って言われました(笑)。

――違う人格といえばもうひとつ、戦兎の顔のモデルとなった「ツナ義ーズ」の「佐藤太郎」というキャラクターもファンの間で人気になりました。第5話「危ういアイデンティティー」第6話「怒りのムーンサルト」の2話分に、回想という形でわずかに出てきただけではありましたが、戦兎とはかなりかけ離れたファンキーなミュージシャンということで、戦兎とのギャップがウケている要因なのではないかと思います。特に第6話回想で、高額のバイト先に向かう寸前の佐藤太郎が体を反り返しながら「夜は焼肉っしょーっ!」と弟分の立弥に叫ぶシーンは、とてもインパクトがありました。

あれ、困ったんですよ。台本には「佐藤太郎がマンションの中に入っていく」としか書いてなくて、諸田(敏)監督に現場で「ここ、好きにやって!」って言われたんです。「好きに……ってなんだ……!?」とものすごく悩んだ末、とっさに出た言葉が「夜は焼肉っしょーっ!」なんです。ですからあそこのセリフと反り返るポーズはぜんぶアドリブです。でもそうしたら、佐藤太郎の人気が出てしまって、佐藤太郎グッズまで出てしまうという! 出番としては、第5話と第6話を合わせても30秒もないと思うのに、なんだかすごい愛されキャラになってしまったなあって、驚いています。

――これまでのイベントでも、犬飼さんはまず佐藤太郎の「夜は焼肉っしょーっ!」を決めてから、戦兎としてあいさつされることが多いですよね。

やはり、ニーズがすごくありますから……(笑)。逆に、あれをやらないとSNSで悲しむ声があるんですよ。「イベントで佐藤太郎が見たいのに、やらないなんて!」と。