1985年、520人の犠牲者を出した世界最悪の単独航空事故「日本航空123便墜落事故」。きょう16日(19:57~21:54)に放送されるフジテレビ系番組『直撃!シンソウ坂上 2時間SP ~日航123便からのメッセージ・33年目の真相~』では、4組の遺族への取材に基づいたドキュメンタリードラマに加え、MCの坂上忍が、事故現場である御巣鷹の尾根を訪れた様子を伝える。

坂上がそこで出会ったのは、あの事故で当時9歳の幼い息子を失った美谷島(みやじま)邦子さん。美谷島さんに案内されながら、犠牲者の墓標、神聖な慰霊碑「昇魂之碑」や「鎮魂の鐘」など、事故の爪痕が残る現場を実際に目にして、凄惨な出来事や遺族の思いをどのように受け止め、何を考えたのか。今夜の放送を前に、坂上を“直撃”した――。

  • 001のalt要素

    『直撃!シンソウ坂上』MCの坂上忍 (C)フジテレビ

犠牲者が飛ばされた広範囲に驚き

――1985年の当時、事故発生はどのように知ったのですか?

最初はニュース速報で情報だけ入ってきて、もう本当にビックリしましたよ。9.11のアメリカ同時多発テロの時みたいに、現実のものとは到底思えませんでした。そして、翌日に事故現場を空撮した映像を見て「ウソでしょ…」という気持ちになって、受け止めるのに時間がかかりましたね。

――そして今回、その御巣鷹の尾根の現場に行かれて、印象に残ったものはなんでしょうか?

002のalt要素

当時の事故現場映像より (C)フジテレビ

一番驚いたのは、とても広範囲に犠牲者の方たちが飛ばされてしまったんだということです。現場に行くと、ここに誰のご遺体がありましたというところに墓標が点在しているので、当時の見るに堪えない映像や、これまで見てきた御巣鷹関連の映画や書籍での悲惨な光景が、フラッシュバックしてくるんですよね。あと、墜落した時に1回飛行機がバウンドしたんですけど、そのV字の跡が残ってるんです。忘れないように毎年木をカットしてるそうなんですが、それが遠くからでもよく分かる大きさなので、あらためて想像を絶する衝撃だったんだなと思いました。そういった、テレビや紙媒体では得られないものがたくさんありました。

――事前に番組を拝見させていただいたのですが、坂上さんがお話を聞かれていた「8・12連絡会」事務局長の美谷島邦子さんが、亡くされた息子さんの遺体について、「発見されただけでもうれしかったです。連れて帰れますから」と振り返っていたのが、すごく印象的でした。

美谷島さんの息子さんは「部分遺体」だったんですよ。まだ、普通の遺体のように体のままあるんだったらありがたいと思うだろうし、その遺体に対してお別れの言葉をかける気持ちにもなると思うんですが、僕が美谷島さんの立場だったら、その部分遺体を見れるのか、そして発見されてありがたいと思えるのかというのは、ちょっと分からないですね…。ただ、今回の再現ドラマでも描いていますが、お話を聞いていくと、やはり亡くなったことを受け止めるには、相当な時間を要してらしゃるんですよ。遺体の存在というのも、受け止める材料の1つになるはずですから、本当にいろんな思いがあるんだと思います。

――「鎮魂の鐘」を鳴らして手を合わせていた時は、どんなお祈りをされていたんですか?

「おじゃまします」とごあいさつして、そちらのほうで平和に暮らしてくださいと伝えました。ただ、520人という犠牲者は普通のお墓参りとはわけが違うので、その後も自分がご遺族だったらどうしてたんだろうというのを、ずっと考えていましたね。美谷島さんは非常にポジティブな方なんですけど、実は33年をかけていろんな気持ちの動きがあったそうなので、その悲しみを一生背負っていくというのは、当事者じゃないと分からないことだと思います。

  • 003のalt要素
  • 004のalt要素
  • 御巣鷹を訪れた坂上忍 (C)フジテレビ

息子さんはずっと居続けている

――ほかに、美谷島さんの言葉で印象に残っていることはありますか?

もう全部といえば全部ですし、明確な言葉で印象的なものもありましたが、息子さんの墓標の前に来たら、普通に話しかけているんですよ。よく、お世話になった人や身内が亡くなった時に、「あの人は私の中で生きてるんです」って言うことがあるじゃないですか。僕、ひねくれてるから、そういうのはちょっときれいごと過ぎるなと思っちゃうんですけど、美谷島さんが「坂上さんがプレゼント持ってきてくれたよー」とか「ここちょっと濡れちゃってるね」とか話しかけているのを見ると、やっぱり美谷島さんの中に息子さんはずっと居続けているんだなというのを、つくづく感じてしまいましたね。

――今回、現場に足を運ばれて、ご遺族の方のお話も聞いて、この事故への印象の変化はありましたか?

テレビや紙媒体でニュースや記事を見ても「飛行機事故は本当にかわいそうだな」とか「怖いな」とか思うけど、どこか距離感があるじゃないですか。でも、やっぱり現場に行くと、運不運では片付けらず、他人事にならなくなるんです。いつ自分や身内に降りかかるかもしれないと考えた時に、その受け止め方、気持ちの処理の仕方、怒りの向け方、収め方というのを、しばらく考えてしまいましたね。

  • 005のalt要素

    美谷島邦子さんの息子・健くんの墓標に手を合わせる (C)フジテレビ

――最近でも、奇しくも同じ群馬で防災ヘリコプターの墜落事故や、シアトルでジャックされた飛行機が搭乗員を乗せて墜落したといった出来事がありましたが、そういうニュースの受け止め方も変わりましたか?

そうですね、やはりご遺族のことを考えるようになりましたね。ただ、旅客機の事故というのは規模が違いますよね。しかも、美谷島さんの場合は、お子さんを空港まで送って、家に帰ったらもうニュース速報で知らされたんですよ…。あの事故では、そういった10歳以下のお子さんが50人くらいいたというんですから、ああいう形で命を奪われるというのは、ちょっといたたまれないです。

――現場までは車を降りて、整備された道を40分くらい歩いて行けるそうですが、事故の関係者でない人も訪れるべき場所でしょうか。

人それぞれだと思いますけど、行くに越したことはないと思います。ロケが終わって山を降りる時に、お父さんと息子さんの親子連れに会ったんですが、お父さんに話を聞いたら、関係者ではないけど「子供を連れて一度来てみたかった」とおっしゃっていたんですよ。それってすごく大事な経験になるので、すてきな親子だなと思いましたね。