――お2人は「牙狼」シリーズではいわゆる「悪役」ポジションだと思いますが、悪を演じることについてのやりがいや、楽しみとはどんな部分なのでしょう。

井上:僕自身「正義のヒーロー」という存在には制約を感じていて、「悪」には自由だというイメージがあります。何かに縛られず自由にキャラクター作りができるというのが、悪を演じる上で楽しいところです。いろいろあるんですよ。正義側だったらこれができない、こういうことはしないんだけど、悪ならできるとかね。演じる上での選択肢が多いので、悪役というのは役作りの幅を持たせられる、というのもいいところですね。

――でも、井上さんがかつて演じられた仮面ライダーディケイド/門矢士に限って言いますと、彼はかなり自由なふるまいが特徴的なヒーローでしたね。

井上:そういう意味では、僕は最初から今に至るまで、何も変わってはいないですね(笑)。

松野井:悪役の女のひとって、やっぱりセクシーというか「欲求」を飛び越えてしまえる存在じゃないですか。私自身、そういう部分を勝手に担っているんです。ファンのみなさんの期待に応えたいという気持ちがありますから、トークイベントでもちょっと露出を多めにした衣装で出るとか(笑)。悪い女というのは演じていて楽しいですし、「お前はここを通ることができない」なんてセリフのように、日常生活では決して自分の口から出てこないような言葉を発することができるのが、悪を演じる上での魅力だと思います。うん、悪っていいよね(笑)!

井上:悪役をやって、いいこともあるんですよ。普段の自分が周囲からやたらと怖がられるんですけれど、普通にしているだけで外見とのギャップで「この人、いい人だ」なんて思われたりするんです。本当に、普通にしているだけなのに(笑)。

松野井:ただ、悪い女を演じている関係で、同年代の女性から「姐さん」って呼ばれることが多いんですよ。でもそれがすごくイヤなんです(笑)。だって同じ年齢なのに、そんな風に言われるなんて……。私も、普通に人と接しているだけで「しゃべりやすいなあ」って言われることがあります。

井上:街を歩いているだけで職務質問されちゃうような、とっつきにくい人間だと自覚しているんですけれどね。ジンガを演じるようになってから、初めて出会った人ともすぐ仲良くなれることが多くなりました(笑)。

――井上さんは舞台『神ノ牙 覚醒』の総指揮を務めた後、映画『神ノ牙』が公開。そしてこのたび、ジンガが主役を務めるテレビシリーズ『神ノ牙-JINGA-』に出演されるということで、今年はまさに「牙狼」ワールドにどっぷりという感じですね。

井上:舞台の総指揮をやらせてもらった理由を話しますと、かねてから自分がやりたかったエンターテインメントを作りたいという思いがあって、「牙狼」という作品だったら、そういうものが作れるんじゃないかと思ったわけです。それで雨宮監督に、今度舞台で「牙狼」をやりたいと相談したら、二つ返事で「いいよ」と言ってくださったんです。しかし、ひとつ条件があると。それは「お前が作品の責任をすべて持つポジションでやれ」ということでした。そんな経緯があって、僕が脚本・演出ほかスタッフへの指示出しや、裏へ回ってモノを運んだりとかもして、舞台の1から10まで携わることができた。あのときは本当に貴重な体験ができましたね。

――舞台の全てをご自身で指揮されたというのは、かなりの達成感があったのではないですか。

井上:達成感は確かにありましたが、それよりもお客さんから「この舞台、チケット代が安すぎる」と言っていただいたことがうれしかったです。楽しんでくれた方からの声を聞いたとき、やってよかったなと心から思えました。今後も、テレビ・映画と合わせて舞台での「GARO PROJECT」も、どんどんやっていくことができたらなと思っています。今度のテレビシリーズはジンガが主人公ですが、ジンガのファンの方も「牙狼」シリーズ全体のファンの方も楽しめる作品にしたいと、ただいま撮影を進めているところです。放送の日を、今から楽しみにしていてほしいですね。

井上正大 いのうえ・まさひろ
1989年、神奈川県出身。2008年『ミュージカルテニスの王子様』で俳優デビュー。2009年には『仮面ライダーディケイド』のディケイド/門矢士でテレビドラマ初主演を果たす。2012年『リアル鬼ごっこ』2013年『テコンドー魂~Rebirth~』をはじめとする映画、そしてテレビドラマ、舞台と幅広い分野で精力的に活動中。2018年秋には、『牙狼<GARO>』テレビシリーズ最新作『神ノ牙―JINGA―』で主演を務める。

松野井雅 まつのい・みやび
1988年、広島県出身。別名義で芸能活動を行っていたが、2011年に休業。やがて2014年に女優復帰し、その際に芸名を「松野井雅」に改めている。芸名の名づけ親はリリー・フランキー。2015年『牙狼<GARO>-GOLD STORM-翔』で初めてアミリを演じ、その後もテレビシリーズ『牙狼<GARO>―魔戒列伝―』第2話(2016年)、舞台『牙狼<GARO>―神ノ牙 覚醒―KAMINOKIBA MEZAME』(2017年)、映画『牙狼<GARO>神ノ牙―KAMINOKIBA―』にアミリ役で出演を果たしている。

(C)2018「JINGA」雨宮慶太/東北新社