――井上さんも、そんな感じだったのですか。

松野井:いえ、井上くんは淡々とクールに練習メニューをこなしていました。私は運動神経のあまりの悪さに、途方に暮れっぱなしだったのですが、そんな中で井上くんが私に初めて声をかけてくれたんです。そこからだんだんと打ち解けていったところがありますね。

井上:練習の場では、みんなアクションがそこそこできるってことが当たり前で、なんか"漢気"の見せあい、みたいな空気がありましたね。

松野井:そうそう。「これできません」なんて、気軽に言える空気じゃなかった。

井上:まず前転をやるでしょう。次は後転、次は飛び込み前転、前方倒立回転飛び。それで、はいバク転、バク宙!って、どんどん要求されるレベルが上がっていくんです。

松野井:みなさんはそんなこと言われても「ええっ!」なんてリアクションを絶対にしないんです。「ふん、バク宙ですか」みたいな(笑)。たとえできなくても、とりあえずチャレンジしてみる感じ。すごかったよね、あの空気感は。

井上:最初のときから、戦いのような空気だったね。僕もバク転とかバク宙とかやったことないのに。

松野井:でも、やったらみんなできちゃうんですよ。

井上:最初は指導の方が補助についてくれるからね。アクション練習では、まず役者がどこまで動くことができるか、身体能力の限界を試されていたように思います。

松野井:そこへ来ると、私なんて「下の下の下」でしたよ(笑)。

井上:限界がわかるのが、わりと早かったよね(笑)。

松野井:そんな出会いが、およそ4年前にありました。

井上:そんな雅ですが、今やすごいんですよ。

松野井:そうですね。今年(2018年)公開した映画『神ノ牙』では、莉杏を相手に激しいアクションをやらせていただきました。

井上:メイキング映像を観たけれど、本当にすごいよね。最初のころから比べると、かなりの成長ぶり。

松野井:ありがとう!

――やはり作品世界に入りこむことによって、松野井さんがアミリに近づいていったと考えるべきでしょうか。

井上:まあ彼女自身のメンタルが、最初は「できるだけ動きたくない」というところにあったんだけど、周りのキャストがどんどんアクションをやっているから「自分もやる!」みたいに変化していったんじゃないかと思います。

松野井:そうかもね~。

井上:映画『神ノ牙』でも、雅の気持ちが一番ノッているときに、雨宮監督がアミリと莉杏とのバトルシーンを作ってくれた。だからあのシーンはかなり気合いの入った立ち回りになっていると思います。

松野井:普通なら、アクションができない人にはさせなくていいし、私がスタッフだったらそうすると思うんです。でも「アミリは松野井ちゃんが頑張りなさい」と、アクションに取り組む時間を作ってくれたんですね。それは、以前のシリーズからずっと続いて出ているキャラクターだから、という理由もあったんだと思いますけど。

井上:僕が総指揮をさせてもらった舞台『神ノ牙 覚醒』のときにも(松野井が)アクションする予定じゃなかったのに、直接言われましたからね。「私もアクションやりたい!」と。今となっては、立派なアクション女優さんです。