米労働省が7月6日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数21.3万人増、(2)失業率4.0%、(3)平均時給26.98ドル(前月比0.2%増、前年比2.7%増)という内容であった。

  • 米6月雇用統計レビュー - 雇用は堅調、株式・債券市場が歓迎すべき内容に

(1) 6月の米非農業部門雇用者数は前月比21.3万人増と、市場予想の19.5万人増を上回った。5月の24.4万人増からやや減速したが、3カ月(4-6月)平均では21.1万人増と、前月(3-5月)の19.1万人増から加速した。なお、6月も幅広い業種で雇用が拡大しており、中でも製造業の伸びが大きかった。

(2) 6月の米失業率は4.0%と、市場予想の3.8%を上回るとともに2000年4月以来の低水準であった5月から0.2ポイント悪化した。なお、失業率が悪化したのは10カ月ぶり。ただ、労働参加率が前月の62.7%から62.9%に上昇しており、求職者として労働市場に復帰する人が増えた事が失業率を押し上げたと見られる。なお、フルタイム職を望みながらもパート職で勤務する人なども含めた広義の失業率(不完全雇用率)は7.8%となり、2001年5月以来の低水準だった5月の7.6%から上昇した。

(3) 6月の米平均時給は26.98ドルとなり、前月から0.05ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+2.7%と、ほぼ前月並みであったが、市場予想(前月比+0.3%、前年比+2.8%)には届かなかった。

米6月雇用統計では、雇用情勢が引き続き堅調である事が確認されたが、賃金上昇によるインフレ加速の兆候も見られなかった。そうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)が、利上げペースをアップさせる可能性は低いとの見方に繋がり、為替市場ではドルに対する失望的な売りが優勢となった。

一方、株式・債券市場にとっては歓迎すべき内容だったと見られ、米国株は主要3指数が揃って上昇したほか、米国債も幅広い年限で価格が上昇(金利低下)した。各市場によって受け止め方が異なる雇用統計だったと言えるだろう。なお、来月の米7月雇用統計については、トランプ米政権が仕掛ける貿易戦争の影響が出始めるとの見方もあるため、これまで以上に注目が集まりそうだ。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya