スズキは7月5日、新型「ジムニー」ならびに新型「ジムニー シエラ」の詳細を発表した。

  • 新型「ジムニー XC(4WD/5MT、ジャングルグリーン)」(左)、新型「ジムニー シエラ JC(4WD/4AT シルキーシルバーメタリック)」(右)

“プロのユーザー”を想定した世界基準の4WD

「男の相棒」「自然に挑戦する男のくるま」「Tough&Neat」「リアル4×4スポーツ」。これらは全て、歴代の「ジムニー」につけられたキャッチコピーである。1970年に初代が誕生し、1981年には2代目、1998年には3代目と、姿を変えながらもぶれないスタンスで世界中のユーザーから愛されてきた「ジムニー」。実に20年ぶりとなる今回のフルモデルチェンジでは、これまで同様の魅力を保ちながらも様々なアップデートを図っている。

  • 今回発表された新型「ジムニー」は4代目となる。先代で丸みを帯びたビジュアルが、再度スクエアボディへと変貌を遂げた

  • 新型「ジムニー」は「XG」「XL」「XC」の3グレードを設定。「XL」からはフロントマルチリフレクターハロゲンフォグランプ、キーレスプッシュスタートシステムなどがプラスされ、「XC」にはデュアルセンサーブレーキサポートやクルーズコントロールシステムなどが追加される

  • 新型「ジムニー シエラ」は「JL」と「JC」の2グレード展開。「JL」は「ジムニー XL」と同程度の装備となる

新型「ジムニー」を開発するにあたり、ターゲットとしたのは“プロユーザー”だという。プロユーザーとは、いわゆる林業や建設業、狩猟などに従事し、道具としてジムニーの性能を最大限に活用する層のことだ。そこに照準を合わせることで、プロの道具に憧れを持つ“一般ユーザー”にも、本物感をまとった同車両の魅力をアピールできるのではないかとスズキは見ている。

  • 今回の開発に際し、同社はヨーロッパのハンターや森林組合をはじめとする世界中の“プロユーザー”のニーズも調査したという。この層のニーズを満たすことができれば、山岳地帯や寒冷地などで4WDを使用する“日常ユーザー”や、街乗り主体の“一般ユーザー”にとっても同車両が魅力的に映るだろうという想定だ

そんな新型「ジムニー」の開発コンセプトは、「本格的な4WD性能と無駄のない機能美を併せ持つ、世界に認められるコンパクト4×4」。商品特長としては、大きく以下の4つが挙げられている。
1.伝統の基本構造を継承し、さらに進化した本格4WD性能
2.合理的で無駄のない機能美を追求したデザイン
3.プロユースにも応える使い勝手を追求
4.スズキ セーフティ サポートの搭載と優れた衝突安全性能
ここからは、これらの特長を掘り下げていく。

伝統のメカニズムをさらにアップデート

新型「ジムニー」は、あくまでもオフローダーとして従来の基本構造を踏襲しつつも、走破性と運転のしやすさはさらに進化している。

  • 悪路走破性を高めるラダーフレーム構造に、エンジンは縦置きFRレイアウト。これにより、アプローチアングルやデパーチャーアングルをしっかりと確保した

  • 左右のタイヤをダイレクトにつなぐ3リンクリジッドアクスル式サスペンション

  • 「ジムニー」伝統の副変速機付きパートタイム4WDシステムを採用。路面状況に合わせて駆動を変更できる

  • 「ジムニー」には、最高出力47kW/6,000rpm、最大トルク96Nm/3,500rpmを発揮する「R06A型ターボエンジン」を搭載

  • 「ジムニー シエラ」には、最高出力75kW/6,000rpm、最大トルク130Nm/4,000rpmを発揮する新開発「K15B型エンジン」を採用している

  • エンジンはそれぞれ先代モデルから軽量・コンパクト化しつつも、力強い走りは健在だ

機能に徹した飾らない潔さ

再びスクエアに戻ったエクステリアは、プロユーザーへのヒアリングや実車の試乗、ディスカッションを繰り返し、“プロの道具”としてのデザインを表現しているという。車両の姿勢や状況を把握しやすく、タフさを高める工夫も随所に散りばめられている。

  • ウインドシールドからの視界確保のため、Aピラーを立たせ車両後方へ引いたことにより、フードが長くFRらしい普遍的なプロポーションに

  • 堆積した雪を降ろしやすいようにサイドガラスも立てている

  • 石が跳ねてもボディに傷がつきにくいオーバーフェンダーとサイドアンダーガーニッシュ

  • 台形のホイールアーチでタイヤ交換も楽に行える

  • ドリップレールを採用し、ルーフの積載性能も高めた

  • 5つの穴から構成されるグリルや特徴的なスリット処理など、歴代「ジムニー」のDNAを感じさせる意匠も多数残されている

「ジムニー」にとっては、ボディカラーも機能の一部となる。「目立つ性能」と「隠れる性能」の2つをそれぞれ追求し、「キネティックイエロー」や「ジャングルグリーン」といったカラーを新たに設定した。

  • 必要なところに必要な色・素材を配置するという考えのもとエクステリアカラーをセレクト。それぞれ2トーンもラインナップしている

インテリアデザインもエクステリアと同じく、機能に徹する姿勢を貫いた。基本骨格は力強く、あらゆる状況下でも感覚的に操作が可能で、傷や汚れの付きにくさ、目立ちにくさも考え込まれている。

  • 運転に集中できる環境とするべく、無駄な色や余計な装飾は排除。金属による加飾は、あくまでも機能部品を明確にするためのものだという

  • 傷や汚れだけでなく、光の反射やグリップ性にも考慮したシボ

使いやすさもプロ仕様に

取り回しのいいボディーサイズながら、積載性の面でもプロ仕様であることは譲らない。先代に比べ拡大した荷室は、チェーンソーを積むことまでをも想定しているのだ。

  • 後席のアームレストも取り除き、シンプルな使い勝手の良さを追求

  • 後席をフラットにした際の荷室容量は352L。荷室の幅は1,300mm

クルマの楽しさを支えるスズキの安全技術

ここまで紹介した視界の良さなどの性能を含む基本安全に加え、同車両は予防安全と衝突安全に関しても至れり尽くせりとなっている。デュアルセンサーブレーキサポートや車線逸脱警報機能などを取り揃える「スズキ セーフティ サポート」には、パワーアップした標識認識機能も備えている。

  • 走行中に単眼カメラが標識を認識し、メーター内に表示してドライバーへ通知してくれる標識認識機能。「車両進入禁止」に加え、「最高速度」「はみ出し通行禁止」の認識機能を新たに採用した

グレードと価格はそれぞれ以下の通り。
ジムニー
「XG」:5MT 145万8,000円 / 4AT 155万5,200円
「XL」:5MT 158万2,200円 / 4AT 167万9,400円
「XC」:5MT 174万4,200円 / 4AT 184万1,400円

ジムニー シエラ
「JL」:5MT 176万400円 / 4AT 185万7,600円
「JC」:5MT 192万2,400円 / 4AT 201万9,600円

機能性や使いやすさへのこだわりを徹底的に突き詰めた、どこまでも合理的な新型「ジムニー」。時代の流れに媚びることのない本格的なクロスカントリーのスタンスを持ち続けながら安全性能にも磨きがかかった4代目は、先代たちと同様に長い間愛されていくモデルになることが予想される。

※価格は全て税込