LINEの決済サービスである「LINE Pay」の利用拡大を目指して、加盟店の決済手数料が期間限定で無料になるキャンペーンなどが実施される。同キャンペーンは、6月28日にLINEが開催した事業説明会で発表されたもので、8月1日から提供が開始される。

  • 千葉県・舞浜で開催されたLINEの事業説明会

LINE Payは、メッセージサービスのLINEアプリ内から利用できる決済サービスで、個人間送金などの機能に加え、オンラインやQRコードなどのバーコードを使った店舗での支払いに対応するというもの。

2014年のサービス開始以来、順調にユーザーを獲得しており、日本、台湾、タイ、インドネシアでの月間流通総額は1,300億円に到達。サービス開始以来送金件数は2.8倍に、決済金額は2.5倍に、バーコード決済は11倍にまで拡大しているという。

  • LINEがよく使われる4カ国でサービスを提供

  • 順調に利用を拡大してきた

LINE Payの取締役COOである長福久弘氏は、「国内でもっとも勢いのある決済サービスではないか」とアピールしつつ、この成長率でも満足していない点を強調。「キャッシュレス・ウォレットレス実現のために革新的に日本の決済業界を変えていきたい」と長福氏は語り、「キーワードは決済革命。マーチャント(加盟店)とユーザーの双方に革命が必要」と意気込む。

  • 写真左が長福久弘氏。中央は代表取締役社長CEOの出澤剛氏、右は取締役CSMOの舛田淳氏

ユーザー側への対応として、全国100万カ所の店舗で利用できる目標を掲げる同社だが、それに向けてQRコード決済対応店舗を拡大。自動券売機では初のQRコード決済対応となる松屋、マクドナルドなど、チェーン店を中心に対応店舗を広げる考えだ。

さらなる拡大に向けてクレジットカードのJCBとパートナーシップを結び、非接触決済のQUICPayに対応する。これによって、LINE PayをAndroidスマートフォンのおサイフケータイに設定して、非接触でのタッチ支払いができるようになる。QUICPay対応店であれば、LINEのバーコードに対応しなくてもLINE Pay支払いができるため、対応店舗が大きく増加する。秋からQUICPay対応を開始する。

とはいえ、長福氏は「日本の90%が中小規模店舗」と指摘。個人商店を含めたこうした小規模店でのキャッシュレス対応が進まない限りは、「本当のキャッシュレス化は実現しない」と話す。

こうした小規模店がキャッシュレス化しないのは、「初期投資と決済手数料」が大きな要因だと長福氏は指摘。こうした課題を解消するためにLINE Payが取った作戦が「初期投資と決済手数料をゼロ円にする」というものだ。

  • 初期費用と決済手数料を無料化する

初期投資をゼロ円にするために、同社は「LINE Pay店舗用アプリ」を無償で提供し、LINE Payのバーコードを読み込んで決済が行えるようにする。手持ちのスマホを使えるため、初期費用はゼロでスタートできるわけだ。8月1日の決済から適用を開始する。

通常のクレジットカードなどでは1回の支払いにつき3%台の決済手数料が必要になるが、LINE Payではこの決済手数料を3年間ゼロ円にする。LINE Pay店舗用アプリを使った決済時のみが対象となるが、店舗側はLINE Pay導入による効果を気軽に確認することができるだろう。3年目以降の手数料は公表されておらず、サービスを提供する8月まで検討していく考えだ。

LINE Payは、「決済コミュニケーションアプリ」を標榜しており、LINEを使ったメッセージによる販促なども行える点は「最大の強み」(長福氏)だという。

ユーザーの利用を増やすために、インセンティブプログラムも開始。LINE Pay利用時に付与されるLINEポイントは、利用に応じてランクが変わって還元率が変動する仕組みを導入しているが、コード決済をした場合は基本の還元率にプラス3%の優遇策を実施する。最大では5%の還元になるが、8月から1年間の期間限定だ。また、現在はポイント対象となるのが10万円という上限があるが、これは撤廃する。

QUICPayによる非接触決済対応と初期費用・決済手数料無料化による小規模店へのキャッシュレス化の訴求、そしてインセンティブプログラムによって、「マーチャント、ユーザー、それぞれの課題は限りなくゼロに近づいたと思っている」と長福氏。「いつでもどこでも誰とでも、LINEだけで決済が可能という新しいお金の流れを作っていく」と意気込んでいる。

  • 「課題を限りなくゼロにした」という施策

LINEの代表取締役社長CEOである出澤剛氏は、「決済手数料で儲けるモデルはこれからだんだん少なくなっていくのではないか。そこで集まるデータ、ユーザーの結びつきといったものを、広告や金融などほかのサービスに生かしていく。ほかの事業の収益が上がるかけ算になるのでは」と話す。これは、中国の決済サービスAlipayやWeChat Payのビジネスモデルと似た考え方で、総合的なサービスを提供するLINEならではのビジネスモデルだ。

長福氏は「革命」という言葉を繰り返しているが、キャッシュレス化をさらに推進するような今後のサービス展開にも期待をしたい。